Respiratory Function in Singing

chapter 8
singing
歌うこと

INTRODUCTION
序説

この章は、呼吸現象としての歌唱の性質を考える。取り上げられる論題は、比較的広い分野の対象を提示し、歌唱中の仕組みから換気とガス交換にわたる議論を含む。演奏に関係するそれらの機能が強調される。

MECHANICS
力学

2種類の歌唱がここで検討される、一定に伸ばされた歌唱(最大限の長さに伸ばして歌われるフレーズ)と連続歌唱(異なる長さで歌われるフレーズの流れ、多くの場合楽曲による)である。これらの二つは、それらの教育的な重要性のため、そして、それらの演奏の根底にある原理が別の歌唱の形を想定することができるために選ばれた。議論は、直立した体の姿勢(呼吸機能のある面は体の姿勢に依存している)に限定される。

Extended Steady Singing
一定に伸ばされた歌唱

一定に伸ばされた歌唱は、呼吸器のゆっくりと変化する調整を必要とする。これらの調整の性質はここで記述される。そして、Hixon(1973)の概念化にならい、HixonとHoit(2005)の推敲から多くを引用する。

Volume, Pressure, and Shape Events 
ボリューム、圧力と形の現象

図8-1は、肺活量のほとんど全体を通じて生み出される一定に伸ばされた歌唱のための、量、圧力と形の現象を例示する。発声は、通常の音量、ピッチと声質で歌われた母音である。示されるデータは、平均値、そして、繰り返された音節または他の比較的一定の発声の歌唱により得られるであろう音価も表示する。

図8-1で分かるように、肺気量(lung volume)は一定の率で減少する、ところが、肺胞内圧(alveolar pressure)は発声を通して一定である。胸郭壁量(rib cage wall volume)と腹壁量(abdominal wall volume)は、フレーズが進行するにつれて一定の等しい率で減少する。胸郭壁と腹壁の量は一緒に胸壁の形を現す。

図8-1。歌われた母音の量、圧力と形の現象。

Relaxation Pressure and  Muscular Pressure
弛緩圧と筋圧

弛緩圧(呼吸器に内在する反動圧【訳注:Ingo R. Titzeの音声生成の科学、新美成二監訳では、弾性復元圧】)と筋圧(能動的な呼吸筋による圧力)の両方が、一定に伸ばされた歌唱の生成に必要とされる。

弛緩圧とは、呼吸器によって与えられる受動的な圧力を意味し、呼吸器の安静時レベル(resting level)より大きい肺気量でプラスに、安静時レベルより少ない肺気量でマイナスになることを思い出しなさい。


<伸びないイマジネーション>

多分、あなたは 、ほとんど満杯の肺で歌うとき、少ない空気の肺より息が漏れるように感じるでしょう。なぜでしょう? 脳が、呼吸器により多くの空気を送り出すように命じるからでしょうか? いいえ違います。では脳が喉頭に収縮を緩和するように命じているからでしょうか?それも違います。では何でしょうか? ストレッチ。何のストレッチ?さて、大きな肺気量では、通常横隔膜は平らにされて気管を下に引きさげます。この引き(「気管タグ(trachea tug)」として知られている)は、喉頭に達する気管に沿って伸縮力を生み出します。声帯の下の弾力のある裏張りは、下向に加えられたいかなる力も外転(切り離して)させ、喉頭の気道を開くように作られている 。空気の大量の流れ、そして、大きな肺気量での息の多い声は、単に横隔膜の気管タグの2つの結果なのです。


また、弛緩圧から離れることが、どんな肺気量であっても筋圧を用いることによって達成することができることを思い出しなさい。弛緩圧より低い圧力は、正味か全くマイナスの筋圧から生じる、そして、弛緩圧より高い圧力はプラスか全くプラスの筋圧から生じる。弛緩圧と等しい圧力は、筋圧がない(弛緩)か、または、相殺する等しいマイナスとプラスの筋圧の行使から生じる。弛緩圧からの離脱は、胸壁によって発生する筋圧の徴候(マイナスかプラスか)と大きさ(強さ)を示す。

図8-2. 弛緩圧、目標とされる肺胞内圧、その他に関する圧力
と歌われた母音のための胸壁構成部分の時間的活性度。

図8-2は、図8-1の中で表された歌われた母音のための筋圧を示す。図8-1からの肺胞内圧(肺の内側の圧力)は、肺気量(肺器官の空気の量)に対して、図8-2の上のパネルで、弛緩圧とともに表示される。歌われた母音に焦点をしぼられた肺胞内圧は、8cmH2Oである。この圧力は、大きな肺気量範囲全体に及ぶ弛緩圧より低くて、中間のボリューム範囲の1点の弛緩圧と等しくて、少ない肺気量範囲全体に及ぶ弛緩圧より高い。肺胞内圧と弛緩圧の差は、筋圧を意味する。

この違いは、図8-2の中央のパネルで表示される。水平軸は、筋圧を表す ― マイナス値が吸気筋圧(Inspiratory Effort)、そして、プラス値が呼気筋圧(Expiratory Effort)を示している。大きな肺気量で、マイナスの筋圧が、目標とされる肺胞内圧を生み出すために弛緩圧に加えられる。このマイナスの筋圧の大きさは、肺気量が減少するにつれて、減少する。およそ60%の肺活量(VC)で、筋圧はゼロである。肺気量が減少し続けて、目標とされる肺胞内圧を生み出すためにプラスの筋圧が要求される。このプラスの筋圧は、発声の残りの間ずっと増加する。

図8-2において示される発声に関しては、マイナスの筋圧は、呼気活動(一定に伸ばされた歌唱)の間、発生している。そのような圧力は大きな肺気量で高いプラスの弛緩圧を打ち消すために必要で、胸壁によるブレーキ・アクション(braking action)【訳注:Zemlin 日本語版p. 96では、Checking action, (制御活動)】を意味する。

中間の肺気量(およそ60と40%VCの間)で、弛緩圧は発声の必要条件を満たすには不十分である。したがって、プラスの筋圧が、弛緩圧を補うために用いられなければならない。このように、中間の肺気量の範囲内では、弛緩圧と筋圧の両方がプラスとなる。

呼吸器の静止レベルより少ない肺気量に対して 、マイナスの弛緩圧を乗り越え、発声の必要条件を満たすためにさらなる十分な圧力を提供するプラスの筋圧が要求される。少ない肺気量で、プラスの筋圧は非常に高い。

図8-2に図示したより弱い発声は、低い肺胞内圧を要求をする。このように、よりマイナスの筋圧は、大きな肺気量で弛緩圧に対抗するために必要である、そして、プラス値が少ない筋圧が、少ない肺気量での弛緩圧を補うために必要である。対照的に、図8-2に図示したより大きい発声では、より高い肺胞内圧が必要となる。したがって、大きな肺気量で弛緩圧を打ち消すために、マイナス値の少ない筋圧が必要である、そして、中間と少ない肺気量で弛緩圧を補うためによりプラスの筋圧が必要である。目標とされた肺胞内圧が非常に高くて、例えば非常に大きい歌唱のためのものであるとき、プラスの筋圧は、歌われたフレーズのほとんどまたは全てを通して必要とされるかもしれない。

Actions of the Rib Cage Wall, Diaphragm, and Abdominal Wall
胸郭壁、横隔膜と腹壁の動き

胸壁の別々の部分は、一定に伸ばされた歌唱の間、発生する筋圧の原因になる。Bouhuys、Proctor、Mead(1966)、HixonとGoldman (1976)による研究からのデータがこの件について報告している 。後の研究からのデータは、図8-2の下のパネルで示される図形表示に抽出される。この表示は、筋圧の生成に関与する 4つの胸壁構成部分の経時的活動を示している。これらの構成部分は、横隔膜(吸気筋としてだけ)、胸郭壁の吸気筋、胸郭壁の呼気筋と腹壁(一群の呼気筋としてだけ)を含む。立体のバーは、一定に伸ばされた歌唱の間、これらの構成部分の各々がいつ活動しているかを示す(バーの濃淡が暗いほど、筋圧は大きい)。下の図形パネルの破線の垂直線は、胸壁によって、マイナスからプラスまでの筋圧の生成の転換が起こる、肺活量の範囲内の点を示す。

示されたように、横隔膜、胸郭壁の吸気成分と腹壁はすべて、非常に大きな肺気量において能動的である。このような肺気量においては、上で示したように、胸壁の筋圧は陰圧で、高い陽圧の弛緩圧に対してブレーキ・アクションを構成する。これらの肺気量で働く筋圧は差し引き陰圧である。そこにおいて、横隔膜と胸郭壁の吸気負担部分は腹壁の呼気負担部分を上回る。【山本解説:歌うためにたくさん息を吸った時は、決して息を押し出そうとするのではなく、息を出さない努力をしなければならない。ランペルティの lutte vocale に通じる。】

弛緩圧は必要とされる肺胞内圧を上回り続けるという事実にもかかわらず、大きな肺気量で横隔膜の活動は終わる。肺気量に対応する範囲で働いている筋圧は差し引きマイナスの筋圧のままである。そこでは、胸郭壁の吸気貢献は腹壁の呼気貢献を上回る。胸郭壁の吸気成分と腹壁の呼気成分の活動は、差し引きマイナスの筋圧が適用される肺気量の範囲の残りの間中続く。

胸郭壁の吸気活動も、差し引きプラスの筋圧が適用される肺気量の範囲で続く(図8-2の破線の垂直線の右側に及ぶ小区画は、胸郭壁の吸気活動の部分に相当する)。

図8-2の0筋圧点は、胸郭壁の吸気成分と腹壁呼気成分が、等しく、正反対で、相殺する、差し引きゼロ筋圧であることに注意しなければならない。このように、0筋圧は、この場合胸壁の筋肉の弛緩を反映しない。

胸郭壁吸気成分がその活動をやめる瞬間に、胸郭壁呼気成分が活動し始める。その後、胸郭壁呼気成分と腹壁呼気成分の活動は、小さな肺気量範囲を通して続く。

図8-2は、呼吸器が一定に伸ばされた歌唱を通して、継続する能動的なコントロールのもとにあることを明らかにする。弛緩圧と筋圧は、連続的に共同で使われる。

一定に伸ばされた歌唱の間、生み出される各々の肺胞内圧は、各々の肺気量で異なる筋圧を要求する。このように、 胸壁の4つの構成要素の活動が、生み出される各々の肺胞内圧によっても異なると予想されるだろう。これは、確かに、本当である。低い肺胞内圧の需要をもつ一定の伸ばされた歌唱は、多くのブレーキと、後で胸壁の呼気成分による小さい活動を必要とする、そして、高い肺胞内圧の需要をもつ一定の伸ばされた歌唱は、少ないブレーキと、早くから胸壁の呼気成分による大きな活動を必要とする。

Hixonほか(1976)によってなされたある種の観察は、直観に反した物のように思えるかもしれない。その観察は、大きな肺気量で母音が歌われている間、横隔膜の活動が胸郭壁の吸気筋の活動から切り離されているということである。なぜ、吸気ブレーキが必要とされるとき横隔膜が使われないか?答えは、直立した体位における腹腔内容物の油圧特性 (hydraulic properties)にある。

胸郭壁が吸気筋圧を生み出すとき、胸郭は、普通の肺気量で弛緩しているときのサイズと比較して拡大する。この拡大は、胸膜腔内圧と腹腔内圧が減少する原因になる。腹腔内圧の減少は、液体を満たした腹腔内容物が下への油圧(水圧)引き(hydraulic pull)を横隔膜の裏側にセットする原因になる。この油圧引きは、吸気胸郭壁筋肉に、反対方向に引くベースを提供し、そして、横隔膜を起動させる必要に取って代わる。言い換えると、胸郭壁筋肉の上へ向かう吸気力は、横隔膜を収縮させるまでもなく、横隔膜の下面において下への吸気牽引力(inspiratory pull)に変わる。

この油圧機構(hydraulic mechanism)がなければ、胸郭壁の吸気筋(単独で作用している)は、脊柱に沿って胸部を引き上げる(それを拡大するよりはむしろ、呼吸器をある場所から別の場所へと動かす)際に、それらの労力の一部を使い果たしてしまうだろう 。Bouhuysほか(1966)が指摘したように、立った姿勢でこのブレーキ・メカニズムを用いることによりさまざまな有効性が得られる。腹腔内容物の油圧特性によって、胸郭壁(吸気筋)の筋肉のただ一つのセットが、胸郭壁と横隔膜の動作を同時にコントロールすることができる。


<下に、下に、そして消えた>
腹腔内圧は、リスクなしで直接測定されることはできない。したがって、呼吸生理学者は、間接的にそれに達する方法を考案した。人は、鼻または口を通して胃に風船をのみこむことが必要である。風船はゴムでできていて、カテーテルに取り付けられる。私は、残り2時間の予定の調査で、そのような風船をのみこんだ。結局のところ、風船は勤務時間の大半をつかって排泄された。それが上に戻されたとき、それの一部はなくなった。胃液はその壁を通して消化しそれの一部を吸収した。私は、何を予想しなければならなかったか?私の胃には、それがカテーテルの風船か紐でつながったサマーソーセージかどうかを知る方法がなかった。多分、私はあまりにたくさんのマスタードをそれにつけすぎたのだろう。


直観に反しているように思われるかもしれない、Hixonほか(1976)からのもう一つの観察は、胸壁による差し引きマイナスの筋圧を生み出している間の、同時におこる胸郭壁の吸気活動と腹壁の呼気活動である。ブレーキ・アクションを与えることが目的の場合、 大きな肺気量での歌唱中に、なぜ吸気筋と呼気筋を同時に使うのか? その答えは、吸気胸郭壁筋だけの活性化によるより、吸気筋と呼気筋の同時に起こる活性化は、胸壁のエコで正確なコントロールを可能にするようだ (HixonとWeismer、1995)。

横隔膜が静止しているとき、胸郭壁と腹壁は経壁圧(transmural pressure)(各々の壁にかかる圧力)の同一の変化を受ける。このように、胸壁(胸郭壁と腹壁)の各部の運動は、その部分の一般的なインピーダンスに依存する。非効率性は、2つの部分における活動を同時に使わないことから生じる。

これらの非効率性の一部は、その頸部(喉頭を表す)にスクイーカー(きーきーと音を出す玩具)をつけた長くふくらませた風船(呼吸器を表す)で単純な操作をすることによって示すことができる。スクイーカーに最も近い風船の半分(胸郭壁を表す)がしぼられる(減少している胸郭壁の容積をシミュレーションするために)ならば、風船の中の圧力(肺胞内圧を表す)は増加して、風船の残り半分(腹壁を表す)が外へふくらむことになる。しかし、バルーンの両半分が同時にしぼられる(胸郭壁容積と腹壁容積の減少を意味する)ならば 、胸郭壁が等しい圧力調整を成し遂げるために、半分の狭い範囲で遅い動きですむ。これはさらに、バルーンの半分の非生産的な外向きの(逆説的な)動きが同時に中へ動かされることを意味し、バルーン内部に圧力に対するコントロールのより大きな精度を持つことができる。(Figure 2-29 は、Hixon のPreclinical Speech Science p. 48 からの転載)

さらに別の、Hixonほか(1976)の直観に反すると思えるかもしれない観察は、非常に大きなプラスの筋圧にもかかわらず非常に小さな肺気量(報告されているるが、図8-2に示されていない)での横隔膜の補助的な再活性化である。そのような瞬間になぜ横隔膜が再活性化するのか? そのような戦略がより精巧に段階的なコントロールを得るための試みになるかもしれない。つまり 、非常に少ない肺気量で腹部のドライブが重要となり、腹壁の筋肉がかなり短くなるならば、横隔膜でこのドライブに対抗することによってより正確なコントロールが可能となるかもしれない 。非常に少ない肺気量でかなり半球形の横隔膜は、効果的な腹壁ドライブを「メーター・アウト」するための優れたポジションにある。類似したメカニズムは、トランペットの演奏中に非常に少ない肺気量で大きな音で演奏されていることが示唆されてきた(Draper、LadefogedとWhitterride、1960)。

一定に伸ばされた歌唱のための上述のメカニズムが胸郭壁、横隔膜と腹壁機能の通常のパターンを示す点に注意しなければならない。しかし、このパターンから意のままに離れることができる。つまり、胸郭壁、横隔膜と腹壁による動きの多くの異なる組合せは、肺胞内圧目標を達成するのに用いられることができる。それにもかかわらず、図8-2の中で表されるパターンについての歌手たちに共通する一貫性は、一定に伸ばされた歌唱のための機能の好ましいパターンがあることを明らかにする 。

ここで提案されるメカニズムは、胸郭壁、横隔膜と腹壁によって発生する筋圧の測定から導き出される。筋圧の観察は、個々の筋肉の寄与(横隔膜の症例を除いて)を特定しない。個々の筋肉活動に関するデータは、筋電図記録法(筋肉上に置かれるか、それらに挿入される電極によって、筋肉の電気的活性を検出する技術)を使って生まれる(Hixon、1973)。このタイプの利用可能なデータは、一定に伸ばされた歌唱に関しては不足していて、断片的である。したがって、個々の筋肉活動の総合的な報告は示されない。更に詳細にこの事について興味がある読者は、HixonとWeismer(1995)によるレポートを参照しなければならない。

上記の議論は、一定に伸ばされた歌唱における横隔膜の重要な役割を示唆しない。Bouhuysほか(1996)は、これを変えて、気道開き(口と鼻)で圧力を下げるために特別な技術を用いて横隔膜を関係させることができた。彼らは、彼らが-15cmH2Oまでこの圧力を下げたとき、横隔膜が大きな肺気量のブレーキ装置として起動した(そして、普通の弛緩圧はそれによって、機能的に15cmH2Oまでに増やされる)ことを発見した。彼らがさらに-25cmH2Oまで圧力を下げたとき、横隔膜はそのブレーキ活動を増やし大きな肺気量と釣り合った。このように横隔膜は、通常大きくブレーキ・アクションに関与しないが、特別な力学的状況下ではそうする可能性がある。

Continuous Singing
連続歌唱

連続歌唱(いろいろな長さで歌われたフレーズの連続)は、一定に伸ばされた歌唱のためにこれまで述べられたものより呼吸装置に対する要求について非常に異なる組み合わせを示す。ここで、これらの要求について考えてみよう。

Volume, Pressure, and Shape Events
量、圧力と形の事象

連続歌唱に関係する、量、圧力と形の事象は、一定に伸ばされた歌唱に関係するそれらより通常より多くの変化を必要とする。そのような変化の特徴は、歌唱タイプ、技術的な要求、フレーズに求められるもの、音声内容、韻律法にかなった特徴そして声質を含む多くの要因に依存する。作曲の性質、実行されている作品の熟知、演奏者の洗練度と演奏につきものの不安がさらに変化を増加させる。

Volume Events
量の事象

連続歌唱は、吸気と呼気の両方向で、肺気量の変化を必要とする。そのような変化は、バイオリンのボウイングと似ており、弓の全長の動き(弓の長さ)は、肺活量を表し、異なる弓の位置は異なる肺気量を表す。下げ弓と上げ弓の動きは、それぞれ、吸気と呼気方向での容量変化を表す。

連続歌唱中の吸気は、その静止レベルから、または、前の歌唱フレーズが終わった 肺気量レベルから呼吸器のサイズを増大させる。そのような吸気の継続時間(そして、大きさ)は、比較的長い(ほとんど完全な吸気の場合のように)か、比較的短い(穏やかな部分的な吸気の場合のように)か、極めて短い(息継ぎ(catch-breath)の吸気の場合のように)かのいずれかである。

呼気は、前の吸気調整によって課せられる開始レベルからの呼吸器の大きさを縮小していく。そのような呼気の継続時間(そして、大きさ)は、比較的長い(ほとんど完全な呼気の場合のように)か、比較的短い(穏やかな部分的な呼気の場合のように)か、極めて短い(非常に短い発声に関係する呼気の場合のように)かである。連続歌唱の呼気は、発声を伴わない場合もある。

連続歌唱は多くの場合、肺活量の中間から大きい肺気量の範囲内で生み出される、そして、すべてのタイプのほとんどの歌唱は、安静時換気終末吸気レベル(resting tidal end-inspiratory level)より大きい肺気量で起こる(WatsonとHixon(1985); Watson、Hixon、StathopolousとSullivan(1990); Hoit、Jenks、WatsonとCleveland(1996); Thorpe、Cala、ChapmanとDavis(2001))。
カントリー・ソングは、通常、大声の話声として観察された典型的な肺気量で歌い始められる(Hoitほか、1996)。対照的に、大声の歌とクラシック歌唱の多くの形は、典型的な静止換気呼吸をかなり上回る大きな開始肺気量を必要とする(WatsonとHixon(1985); Watson et.al.,1990; ThomassinとSundberg(1997))。大きな肺気量からの歌唱には、2つの演奏上の利点がある。1つの利点は、喉頭と上気道をドライブするのを助けるために、プラスの弛緩圧の使用を可能にするということである。もう一つの利点は、それがに新たな吸気のための中断の前の使用に、より大きな肺気量供給(より大きな弓の動作)を提供するということである。作品でのいくつかの接合点で呼吸をすることは、肺器官の中に残っている空気の供給量によって影響される(WatsonとHixon. 1996)。


<ただのランチはない>
歌唱で呼吸機能を考えるとき、歌うためにコストパフォーマンスが最も高い方法は、高いプラスの弛緩圧をもつ大きな肺気量にとどまることであるとあなたは考えるかもしれません。その考えは、要求される肺胞内圧を達するための同程度の筋圧を加える必要がないので、大きな肺気量で歌うことは、あなたにとって少しの負担で済むということです。うん、その通り。 しかし、ちょっと待ちなさい。あなたはそもそも、どのようにそれらの大きな肺気量を得たのですか? なんと! あなたは、そのために吸気筋圧を使わなければならなかったのです。ただのランチなんてありません。あなたは、反発力が低くて、激しく「絞り出」さなければならない少ない肺気量にとどまることも、あるいは、吸気側面に5セント硬貨【訳注:昔から激しくしぼるときに、ニッケル、5セント硬貨をひねりつぶすという言い方をしていた】を使って、あとで激しく「絞り出す」必要がないようにもできます。どちらの方法でも、あなたはそのシステムを克服することはできない。ことは私が提案してきたほどまだ明確ではありませんが、管理活動のためには十分です。


歌唱フレーズは、もちろん、少ない肺気量で始めることができる、または、少ない肺気量範囲まで続けることができる。そのような容量が、呼吸器の静止容量より少ないとき、優勢なマイナス弛緩圧に打ち勝つために、呼気筋圧は働かなければならない。非常に少ない肺気量しかないときは、かなりの仕事を必要とする。非常に少ない肺気量での歌唱は、押された、または、緊張で窒息しそうな声質を伴うかもしれない。このように、非常に少ない肺気量の歌唱は、呼吸の観点から不経済であり、聴衆の観点から好ましくない。

歌手には、もちろん、演奏中に使われる肺気量を決める自由がある。歌唱フレーズは、個々の演奏の求めに応じて、大きいか、中程度であるか、少ない肺気量で始めることができる。容積の可動域(弓のストローク)の選択は、歌手によってなされるもう一つの選択である。正確に容積の可動域がどれくらいかは、歌手が、歌唱フレーズをいつ始めたいか、または、止めたいかによって決められる。一つの歌唱フレーズは一つの呼気で生み出されるかもしれない、あるいは、複数の歌唱フレーズは、フレーズ間の息止め(1方向の弓のストロークの中断)によって一つの呼気に負わせるかもしれない。一旦そのパターンが、楽曲の歌唱フレーズの演奏に深く染み込んだならば、高度に訓練された歌手はそれらのフレーズの度重なる演奏で非常に堅実になる傾向がある(ThomassonとSundberg、1999)。

歌唱における容量変化で最も強い聴覚-知覚的な相関物は、フレーズの長さとして理解される。フレーズの長さは、1つの歌唱フレーズを作ろうとする時間の量、或いは、フレーズの間に生み出される発語(多くの音節)の量として定義することができる。通常、歌唱フレーズとして認められた長さがより長いほど、肺気量の可動域はより大きい。

容量調整は、WatsonとHixon(1996)による実験に基づいて実証された学習によって変わるかもしれない。彼らは、高度に訓練されたクラシック歌手によって演奏される新しいアリアの練習中の歌の呼吸動作について研究した。彼らの観察は、技能習得の4つのステージにわたった:(a) 歌手による、最初のアリアの客観的で冷静な演奏; (b) 短期間の独立した練習の後の演奏; (c) 歌手が音楽を使って、公開の聴衆のために準備した演奏; そして、(d) 歌手によって暗譜された、 公開の聴衆のための準備をした演奏。オリジナルの楽曲(歌手に知られていない)が、使われた。5分間で、以下の特徴があった: (a) 様々なアリアのスタイル;  (b) 多様なデュナーミクの標識;  (c) 様々なフレージング;  (d) 様々な速度;、そして、(e) 多様な技術的な要求。

アリアの初めての演奏の間、そして、学習過程を通して、歌手は適切な言葉と音楽のフレーズの境界で、呼吸をした。しかし、歌手は、技能習得の、最初の2つのステージ(冷静で短期間の練習の後)の間より、最後の2つのステージ(聴衆のための準備ができているとき)の間、およそ10%少ない息を使った。そして彼は、最初の2つのステージの間より最後の2つのステージの間で、息を取る回数に関して変化しなかった。さらに、歌手は技能習得の最後の2つのステージの間、最初の2つと比較してより大きい開始および終末の肺気量とより大きな肺気量可動域を使った。

なぜ、歌手は、演奏していた楽曲に精通するにつれて異なる肺気量戦略を採用するか? 1つの可能性は、これらの肺気量戦略が声のデュナーミクと声質でより大きな変化を可能にすることで、演奏において歌手により柔軟性をもたせる。同じことがピアノを演奏する際にも見られるかもしれない。熟練したピアニストが新しい音楽を演奏するとき、彼らは最初、演奏において全く柔軟性がない(Shaffer、1980)。しかし、音楽を学びよく知るようになるにつれて彼らの演奏はずっと柔軟になる。

Pressure Events
圧力現象

連続歌唱は、マイナスとプラスの肺胞内圧が必要である。そのような圧力は、それぞれ呼吸器の減圧と圧縮の結果である。肺胞内圧は呼吸器の瞬間的な励振とみなされることができる。それは、残気量(residual volume )での最大の吸気努力と全肺気量(total lung capacity)での最大の呼気努力の両極端の間で変動することができる。陰圧変化は、呼吸器をより大きくするためにそれを引っ張る呼吸筋調整の結果である、そして、陽圧変化は呼吸器をより小さくするためにそれをしぼる呼吸筋調整の結果である。引きと圧迫は、呼吸器のスプリングのような反発力(弛緩圧)を背景にして起きる。このスプリングのような力は、器官が、小さな肺気量のときに大きくなり、大きな肺気量のときに小さくなることを助ける。


<ぶらぶらしないで>
歌唱の間の短い休止または短い合間は、呼吸についての観点から面白い。歌手は次の歌唱フレーズを歌い出す直前に再び肺を満たそうとする傾向があります。彼らは息を吸わないで、音楽が追いつくのを当てもなく待つ 。次のフレーズが予想されるとき、彼らは息を取り、1つの滑らかな旋律で進みます。どうしてこの戦略をとるのでしょうか? 第1には、大きな肺気量で息を保持して待つにはエネルギーが必要だから。第2には、息を保持している間、あなたは換気していないし、肺の中の二酸化炭素レベルが上がってくるから。第3には、後に続いている歌唱フレーズのための胸壁セットアップの一部は、吸気と呼気の間の移行でなされる調整に依存するからです。おそらく、あなたは、ただぶらぶらしないための他の理由を知っているでしょう。


陰圧の調整は、歌唱演奏によって、そして、演奏全体を通じて大きく変化する可能性がある。それらは、吸気の深さ、その速度、そして、吸気のための喉頭と上気道によって与えられる気流に対する抵抗に依存する。そして、生成される圧力は、大きな吸気には大きく、小さな吸気には小さくなることができる、そして、息継ぎ(catch-breath)の吸気には極めて速い変化率が含まれる。

陽圧の調整もまた、演奏と、そして、演奏全体を通じて大きく変化する可能性がある。呼吸器が生成することができる正の肺胞内圧の潜在的範囲と比較して、中程度の肺胞内圧が連続歌唱のために使われる。肺胞内圧は、継続歌唱フレーズのあるタイプにとっては比較的一様であるが、他のタイプにとっては非常に変りやすい。連続歌唱のための陽圧現象の側面は、楽曲ごとに固有で、要求されるパフォーマンスの特色に依存する。

肺胞内圧で聴覚-知覚的に最も強く関連するものは音量である。平均肺胞内圧は平均音量と相関する、そして、圧力の変動は音量の可変性と相関する。歌唱(例えばいわゆる「マネー・ノーツ」【聞かせどころの音、お金が取れる音】)の中で強勢音がある部分は、通常高い肺胞内圧が伴う。クラシック歌唱は、他のタイプの歌唱より、肺胞内圧に負担をかける傾向がある。特定のパッセージの歌唱の間、生み出すことができる呼吸器の肺胞内圧が、最大の肺胞内圧の4分の1の高さの値に達することが算定された(LeandersonとSundberg、1988)。一般に、より高い肺胞内圧で生み出されるどんなタイプの歌唱でも、観衆によってより精力的で、力強くて、ダイナミックであると判断される。

肺気量と同様に、歌手には、演奏の間の各瞬間に、圧力の可変部分がどのように調節されるかを決定する自由がある。しかし、この自由は若干の制限を持つ、それは、演奏が拡大されるかどうか、そして、楽曲が強弱記号として示すものによって命じられる。たとえば、ピアニッシモからフォルテへの変化の要求は、歌手が呼吸調整で達成しなければならない肺胞内圧の著しい増加を必要とする。歌唱中の肺胞内圧の上限は、喉頭要因、そして、発声中の声帯を酷使しないための必要性によって課される。これは歌手によって、そして、文脈で変化するが、機能的な限界にあたる。喉頭と上気道は、この機能的な限界の下で、具体的な肺胞内圧の調整にしっかりと頼っている。たとえば、圧力の特定の大きさと圧力の変化率は、劇的効果(喉頭の調整を通して)の遂行または分かりやすさ(上気道の調整を通して)の維持にきわめて重大である。


<声門下のスロットル>
大部分の読者は「声門下圧(subglottal pressure)」という語をよく聞くことになるでしょう。語の「下(sub)」部分は、特定の場所を指すのではありません。たとえば、気管支圧や肺胞内圧も声門「下」です。語の「声門の(glottal)」部分にも問題があります。声門は穴を意味します。 優勢かの瞬間には声帯が接合されています。その場合、声門「下(sub)」とは何なのでしょうか?穴がなければ穴の下はあり得ません。呼吸生理学者は、関心事である圧力に対して、気管圧と言う語を使います。そのような語は、喉頭気道(それが開いているか閉じているかどうかにかかわらず)の部位を指定します。最後に、喉頭気道は場所をあらわす「サブ」の使用に付きまとう曖昧さを取り除いてくれます。我々が呼吸生理学者のより正確な語に賛成して声門下をスロットル(弁を絞める)ことを推奨します。


Shape Event
形の現象

胸壁の形は連続歌唱の間に大きく変わる可能性がある。直立した体位の歌唱の間、ほとんど常に胸壁によってとられるバックグラウンド(プラットホーム)の形は、腹壁のある程度の内側への位置取りと、胸郭壁が同じ肺気量でリラックスしているときに取る位置と比べて外向きの

位置決めを必要とする。胸壁のこのバックグラウンドの変形の大きさは、歌唱のタイプに依存する。たとえば、ポピュラー歌唱は、一般的に胸壁のわずかな変形だけを伴う、ところがクラシック歌唱はそのリラックスした形状から壁の大きな変形を伴なう(WatsonとHixon、1985; Thorpe、Cala、ChapmanとDavis、2001)。

歌唱中に胸壁によってとられるバックグラウンドの形は、歌手が演奏の間、呼吸器を「保持する」方法の反映である。換言すると、バックグラウンドの形は、歌手が力を生み出すために、胸壁の異なる部分の効果的な機械的な利点をセットする方法を決定する。胸壁のバックグラウンドの形は長い歌唱フレーズのあいだに徐々に変わるだろう。これは、胸郭壁と腹壁がバックグラウンの形をセットするだけでなく、歌唱中に肺気量が変わっていくことにも関与するからである(WatsonとHixon、1985; ThomassonとSundberg、1999)。

歌手によって選ばれるバックグラウンドの形を離れることで、他の形は変化する。歌唱フレーズの間の吸気に関係するそれらには、非常に速く、多くの場合横隔膜の活性化がその弛緩位置である外へ腹壁を押しつけ、呼吸器を吸い込むために胸郭壁を上げるという特徴的な形がある(WatsonとHixon(1985); Thorpeほか、2001)。 そのような吸気の間に胸壁の形が変化する大きさは、吸気のスピードと深さによる。形の変化にあたる胸郭壁と腹壁の実際の動きは受動的である。つまり、連続歌唱中の吸気は、横隔膜単独の筋肉動作によって生じる(以下の議論を見よ)。また、このような吸気と関連する容量変化の大部分は、胸郭壁の上昇を決定する。クラシック歌唱の調査では、同じ歌唱フレーズを繰り返えす演奏にわたって非常に首尾一貫している(ThomassonとSundberg、2001)。

呼気の間の形の変化もまた、一般的な胸壁のバックグラウンドの形から実行される。腹壁の内部への位置決めは、胸壁(上記参照)のバックグラウンドの形をセットして、適当と思われる高い位置に胸郭壁を持ち上げる。このバックグラウンドの形からの形の変化は、胸郭壁容量と腹壁容量の変化のさまざまな相対的な貢献度に関係する。大部分の歌唱は、腹壁容量より早く減少する胸郭壁容量によって演奏される(WatsonとHixon(1985); ThomassinとSundberg(1999))、けれども、これは演奏の要求によってかなり異なる場合がある。このパターンに対する例外が観察されるのは、内胚葉型(比較的脂肪分が、特に腹壁で高い)、または、かなり進行している妊娠中の歌手において、体型が特徴づけられる歌手の中によくみられる。実質的な(substantial)腹壁の動きは、高い胸郭位置を使うことを学んだクラッシック歌手の中にも、認められる。実際、クラシック歌唱のいくつかの歌唱フレーズは、実際次第に広がる胸郭壁と共に進行する(WatsonとHixon、1985)。

最後に、歌唱の間の胸壁のバックグラウンドの形は、胸壁セットアップ(posturing:姿勢をとる)操作をしばしば必然的に伴う。これは吸気の終了と呼気の始まりの移行中に起こり、さらに歌唱フレーズそのものの始まりにももたらされるかもしれない。最も一般的なセットアップは腹壁の内側への動きと、同時に胸郭壁の外側への動きであり、前者が後者を引き起こす(WatsonとHixon(1985); Thorpeほか、2001)。

安静時換気呼吸サイクルから連続歌唱に対処するサイクルに移行する際に、形は3つの呼吸変数の中で最も重要である。これは、呼吸器が連続歌唱中にどれくらい速く息を吸い込み、息を吐くことができるかを最も決め手になる変数であるからだ。ある形は、他のものより、横隔膜と呼気胸郭壁筋が、力を発揮する速度を最大にする(下記の議論を見る)のにより適している。


<同類>
あなたの体型は、歌唱中の呼吸機能のいくつかの細かい点に影響を与えます。通常、あなたがより内胚葉型(太っている)であるほど、より大きな腹壁の動きを使うことになるでしょう。そして、通常、あなたがより外胚葉型(やせている)であるほど、腹壁のより小さな動きを使うことになるでしょう。これは、基本的な問題を残しています。あなたの体型があなたの歌の先生のそれと異なるならば、先生はあなたのような体型の人の力であなたを大成功に導けるでしょうか? さて、それは、考えなければならない何かである。先生が、自分の感覚と行動に基づいてあなたに教えるならば、彼らがよりあなたのようでなければならないのでは? 私は、この問題に対すして答えることはできません。しかし、私には、重大な意味を持つ試みであるとは思えません、それは、同じ体型の鳥は互いによりよく教え学ぶことが明らかになることがわかるかもしれません 。


Coda
コーダ

前の3つのセクションは、連続歌唱中に起こる、ボリューム、圧力と形の調整の広範囲にわたる配置を指し示す。異なる歌唱タイプの中で、または、特定の歌唱タイプで歌われる別々の楽曲の中での組み合わせに於けるこれらの現象のための単一の物理的なサインはない。呼吸器官の容量、圧力と形の調整は、歌唱を可能にする原動力として重要である。喉頭と上気道の複雑で込み入った調整は、適切な呼吸調整なしでは歌手または観衆にとって価値がない。機能不全の送風装置を備えた風力で動くパイプオルガンを演奏しようとするようなものである。

連続歌唱のための、容量、圧力と形の現象がいかに特別であるかを認識する1つの方法は、安静時換気呼吸(resting tidal respiration)と同じ現象と比較することである。HixonとHofman(1979)はこれを実行した。彼らは安静時換気呼吸と比べて、連続歌唱の多くが以下を含む点に注目した: (a)肺気量のより大きな範囲;  (b)高い呼気の肺胞内圧と低い吸気の肺胞内圧;  (c)少ない呼気流量(肺気量の変化率)とより多い吸気流量;  (d)長い呼気相(ストローク)と短い吸気相; そして、(e)胸壁のリラックスした形から異なる胴の形。

Relaxation Pressure and Muscular Pressure
弛緩圧と筋圧

弛緩圧と筋圧は、連続歌唱のコントロールに関与する。一定に伸ばされた発声と同様に、筋圧は、歌唱フレーズに必要な目標とされる肺胞内圧に達するために弛緩圧に加えられる。目標とされる肺胞内圧が、優勢な弛緩圧より少ないとき、マイナスの筋圧(ブレーキ)が必要とされる。そして、目標とされた肺胞内圧が優勢な弛緩圧より大きいとき、プラスの筋圧【アクセル】が必要となる。多くの歌唱タイプのために、プラスの筋圧だけが必要とされるか、あるいは、特別な歌唱フレーズのみでマイナス筋圧の後にプラスの筋圧を必要とするかのどちらかである。しかし、弱い歌唱パッセージまたは大きな肺気量の歌唱のために、マイナス筋圧が、歌唱フレーズの最初の部分(呼気弛緩圧が高いとき)で必要とされるだろう。クラシック歌唱の多くが開始時に大きな肺気量から演奏されるのでフレーズの始めにマイナスの筋圧をしばしば要求する。したがって、ブレーキ操作はこの歌唱タイプにおいて重要なメカニズムとなる。

肺胞内圧の要求は、平均的な音量の要求によって変化する。したがって、音量の要求が増減するにつれて、それぞれ筋圧の要求は増減する。また、音量の要求には、歌手によって使われる肺気量にしばしば影響する。一般に連続歌唱が大きいほど演奏中に使われる肺気量は大きい。これはおそらく、大きい肺気量で高いプラスの弛緩圧を利用する歌手による試みを反映する。

肺胞内圧の要求と筋圧の要求は、歌唱の平均的な音量以外の因子によっても左右される。音量変動、強調された歌唱と急激なダイナミック変化は、肺胞内圧と筋肉圧の増加を必要とするいくつかの要因である。

Actions of Rib Cage Wall, Diaphragm, and Abdominal Wall
胸郭壁、横隔膜と腹壁の動き

連続歌唱の間に発生する筋圧は、胸壁の異なる部分の働きの結果である。一定に伸ばされた歌唱とは異なり、胸郭壁、横隔膜と腹壁の貢献度は、それらの個々の筋圧の貢献の同時定量化を可能にする方法を用いて研究されてこなかった(逸話論風以外には)。それでも、筋肉のメカニズムは、かなりの確実性で瞬間的な胸壁形状と、その履歴に関するデータ(Hixon、GoldmanとMead(1973); Hixon、MeadとGoldman(1976); HixonとWatson(1985); Watson, Hixon, Stathopolous, と Sullivan, 1990; Hoit, Jenks, Watson, と Cleveland, 1996; Thorpe, Cala, Chapman, と Davis, 2001)、そして、腹壁筋の筋電図検査活動(Watson、Hoit、LansingとHixon、1989)から推論されることができる。

ほとんどの連続歌唱フレーズの間、胸郭壁と腹壁は能動的である。歌唱フレーズが進行するにつれて、両方とも筋圧の貢献度を増やす、と同時に腹壁によって供給されるプラスの筋圧はすべての肺気量において胸郭壁によるものより大幅に上回る。つまり、連続歌唱フレーズの間、胸郭壁と腹壁の両方がしぼれるが、腹壁をしぼることが胸郭壁をしぼるより力強い(WatsonとHixon(1985); Thorpeほか、2001)。

連続歌唱フレーズが、大きな肺気量から始められるか、弱い発声を必要とするとき、吸気ブレーキが使われる。このようなブレーキは、上述のメカニズムによって、一定に伸ばされた発声のために達成される。吸気の胸郭壁筋は、胸郭を拡大し、同時に、媒介物の働きをする腹腔内容物の油圧特性(hydraulic properties )によって、横隔膜に下への引きを配置する。横隔膜による補足的な動きは、胸郭壁ブレーキを伴うかもしれないが、そのような状況での横隔膜の収縮は一般的に短期間である。このように、胸郭壁はほとんどの吸気ブレーキを提供する。

歌唱フレーズが、いつもより大きな発声を要求する場合、胸郭壁と腹壁の両方が呼気筋圧の量を上昇させる。大きい歌唱に対して、腹壁は音量増加のために胸郭壁より多くの筋圧を加える。これは、おそらく、胸壁(弛緩した腹壁より小さな腹壁と弛緩した胸郭壁より大きな胸郭壁)の効果的な形状を維持するためになされる、これは通常のスピーチから非常に大きいスピーチに変わる際に、胸壁形状を維持するためになされる(Hixonほか、1976)ことと全く同様である。

ここで記述された筋圧パターンは、ほとんどの連続歌唱で典型的なものであるが、そのような歌唱を生じるのに異なる筋肉の戦略が用いられることができるという事実は残る。そのように様々な選択肢があれば、なぜ、 胸郭壁による呼気筋圧とさらに大きな腹壁による呼気筋圧を使う選択肢を選ぶのか?腹壁を中へ移動させて、胸郭壁を上げる(たとえ胸郭壁が力強く呼気方向で動いているとしても)筋圧戦略を用いて、何が得られるのか?これらの2つの質問に対する答えは、この戦略を使用することで達せられる機械効率を扱わなければならない(Hixonほか、1976)。

安静時換気呼吸と比べると連続歌唱の多くは、非常に速い吸気と遅い呼気によって特徴づけられる。この速い吸気と遅い呼気のパターンで、歌手は、吸気で比較的短い時間を、呼気で比較的長い時間を使うことができる。したがって、連続歌唱に対する好ましい筋肉の戦略は、吸気速度を最大にして、後に続く歌唱フレーズのために呼気圧力コントロールを強化することである。

WatsonとHixon(1985)は、連続歌唱中の吸気が横隔膜だけの活動によって引き起こされることを示唆した。腹壁が内向きに移動するとき、横隔膜は頭の方向に位置を変える。これは横隔膜の筋線維を伸ばし、 次に、筋収縮の潜在的速度と力強さを増やす。このように、腹壁の内側の動きは、素早く力強い吸気を生じるために、横隔膜を自動的に調整する(Hixonほか、1976)。 歌唱時の呼気相における、腹壁(呼気)努力はコストがかかるように最初は思えるが、実は、連続歌唱の吸気相の間に横隔膜が動くスピードと力を最適化するための投資である【太線強調:山本】

胸郭壁の吸気筋が、一般的には連続歌唱中に吸気に参加しないということに留意する必要がある(WatsonとHixon(1985); Hoitほか、1996)。たとえ、空気の取り入れ中に、胸郭壁が吸気方向に動くといえども、それは横隔膜の動作によって受動的にその方向に移動させられるためである。実は、連続歌唱中の吸気の間に、胸郭壁は実際のところ小さなプラスの(呼気)筋圧を生み出す。これは以外の思われるかもしれない、しかし、この呼気筋圧を使うことに特別な経済効果がある。吸気の間、呼気筋(胸郭壁と腹壁の)の活性化を維持することによって、それらの筋肉は、横隔膜の力強い活動がおさまりしだい、呼気筋圧を生み出すための準備状態になる (Hixonほか、1976)。呼気筋がすでに起動されているので、吸気が終わりしだい次の歌唱フレーズを始めることに時間が浪費されない。【太線強調:山本】


<心臓の鼓動>
心臓は、肺器官の外側かつ、胸壁の内側にあります。あなたが歌う間、それは鼓動し続ける。この鼓動は、気管だけでなく肺器官の他の部分に伝達される圧力変動をつくる。そのような圧力変動は高感度機器で見つけられることができて、声の安定性における変動として明示される。時々、リスナーは、そのような変動を聞くことができるかもしれない。あなたの心臓が「胸から飛び出そう」ように感じるときのように、それらはあなたの神経過敏を明らかにするかもしれない 。動悸は、もちろん、自然である、しかし、それはイライラするほど目立つようになるでしょう。それを若干目立たなくする1つの方法は、大きな肺気量で歌うことです。これは心臓の脈動が非常に広範囲に拡散され、そして影響の大きさを減らします。あなたが歌っているとき神経質に聞こえますか?深呼吸をすれば助けになるかもしれません 。


腹壁も呼気のために胸郭壁を調整する。腹壁が内側へ変位するとき胸郭壁は受動的に上がる(第3章でこのメカニズムに関する議論を見て、そこでの「死人はうそをつかない」とタイトルをつけたノートを読みなさい)。この行動は胸郭壁で呼気筋線維をのばして、それらが素早く、力強く収縮することができるように、それらを長さ-力特性にとってより良い位置につかせる。 腹壁によって生成される筋圧が、胸郭壁によって生成される筋圧より上回るので、歌唱中の胸郭壁の呼気活性化は通常腹壁を外へ押しださないか、控え目にするだけである(WatsonとHixon(1985); Thorpeほか、2001)。このように、腹壁は胸郭壁を上げて、それが活動することができる堅い土台を提供することで歌唱のために胸郭壁の機能の最適化を助ける。ある意味では、歌唱中の胸郭壁筋の小さくて速い動きが、肺胞内圧の速い変化を可能にするのは腹壁である。胸郭壁は、肺のより大きな部分と接触しているので、横隔膜-腹壁がそうするより、特に速い圧力変化を起こすことによく適している (HixonとHoit、2005)。【太線強調:山本】

このように、連続歌唱に対する好ましい筋肉の戦略は、胸壁機能の効率を上昇させる。腹壁を力強く、そして、連続的に動かすことによって、胸壁のバックグラウンドの形は、横隔膜の吸気機能と胸郭壁の呼気機能を支持するために自動的に調整される。腹壁の内側の位置決めは、連続歌唱の間、呼吸サイクルの吸気相と呼気相の最適機能にとってきわめて重大である。

一定に伸ばされた歌唱と同様に、連続歌唱のための個々の筋肉活動について利用できる情報はほとんどない。1つの例外はWatson et. al.(1989)による研究からのもので、それは高度に訓練されたクラシック歌手によって腹壁の筋電図検査の活動を調べたものである。彼らは、腹壁(横腹で)の側面部位での高レベルの筋肉活動と、中央部位での低レベルの筋肉活動を見い出した。さらに、筋肉活動は側面の高い部位より、腹壁の低い側面部位で高かった。Watson et. al.は、歌唱のために、腹壁が胸壁のバックグラウンドの形(プラットホーム)を設定する際に特に重要な役割を演じ、さらにこの役割は、壁の下の側面の部位の筋肉(おそらく外腹斜筋、内腹斜筋と腹横筋の下部領域)によって主に実行されるという見解を裏付ける発見であると説明した。

歌唱の力学的(容積、圧力、形)現象は、複雑で、それらについて学ぶべきことが非常に多く残っている。それまでは、演奏での異なった力学的現象の重要性に関して、歌手と歌唱教師の間の意見の大きな隔たりが存在し続ける。これらの意見の一部は第9章で述べられるだろう。


VENTILATION AND GAS EXCHANGE

換気とガス交換

この章の大部分の焦点は、 どのように容量、圧力と形が歌唱のためにコントロールされるかであった。それでも、呼吸器の主要な役割が酸素を体に届け、二酸化炭素を除去する換気(肺器官に出入りする空気の運動)によって達成されるプロセスであることを思い出すことは重要である。連続歌唱の間、換気とガス交換のために何が起こるのか?それは、その安静状態と同じなのか、あるいは、異なるのか?

驚くまでもなく、換気は、安静時換気呼吸中と連続歌唱中は同じではない。Bouhuys、ProctorとMead(1966)は、換気が、安静時換気呼吸の間の平均値と比較して、連続歌唱の間ではより高いことを見出した。どれくらい高いかは、歌唱の性質によるとともに、換気は、弱い歌唱より大きい歌唱で一般により高い。

したがって、歌唱が大きいほど、歌手はより多く換気しているように思える。換気が歌唱演奏の他の測面(例えば歌われたフレーズの声質と音声内容)に左右されることもあり得る。また換気は、歌手の歌唱中の周囲の状況(空気質)と演奏の不安に左右されるかもしれない。話している間も同様に、安静中よりも高い換気が起こる点に注意することは興味深い (BunnとMead、1971; HoitとLohmeier、2000)。話すことの研究から推定されることは、 歌手はおおかた大きく呼吸する傾向があるので、連続歌唱の間、彼らの血中二酸化炭素レベルがそれに応じて減少することを示唆する。


<あなたの混合ガスを調節する>
海抜は、ガソリンエンジンの機能に影響を及ぼします。これは、空気の密度が海抜によって変わるからです。海抜は同様に「歌唱エンジン」にも影響を及ぼします。マサチューセッツ州のケンブリッジのハーバード・スクエア(海面近く)で、コロラド州のパゴサ・スプリングスハーバード通り(海抜7,500フィート)で、そして、ピーク大学の自然環境保護区のハーバード山の頂上(海抜14,420フィート)で、同じ歌を歌ってみなさい。あなたのパフォーマンスは全く違ったものになるでしょう。海抜が上がるにつれてあなたはより大きい肺気量で歌うようになり、各々の呼吸に対して長く歌うことができなくなり、歌うとすぐ息がなくなると感じて、フレーズの終わりにより多くの空気を吐きだす。これらの変化の細かい部分は歌手によって違います。私はこれらの場所の全てを訪問しました、そして、私の評価として、他の2つの場所からの景色よりハーバード山からの眺めがよりインスピレーション(霊感と吸気)を与えてくれます。


REVIEW
復習

歌唱は、特別な呼吸活動である。

一定に伸ばされた歌唱(最大長さの長い詠唱されたフレーズ)は、呼吸器の調整をゆっくり変えることによって生み出される。

弛緩圧と筋圧は、一定に伸ばされた歌唱の生成に寄与する。

マイナスおよびプラスの筋圧は一定に伸ばされた歌唱の生成の一因となる、と共に、それらの大きさは、主に歌唱フレーズの平均的音量に対する要求によって決まる。

胸郭壁、横隔膜と腹壁の動きは、一定に伸ばされた歌唱中に使われる筋圧を生み出す。

大きな肺気量でブレーキをかけている間、横隔膜の活動は胸郭壁の吸気筋の活動から分離される、分離は腹腔内容物の水圧特性によって可能となる。

連続歌唱(しばしば楽曲に関係する、いろいろな長さの歌われたフレーズの進行)は、呼吸器の調整を素早く変えることによって生み出される。

弛緩圧と筋圧は、連続歌唱の生成の一因となり、歌唱フレーズの平均的音量に対する要求と、フレーズが始まる肺気量に依存する。

胸郭壁と腹壁の動きは、継続歌唱フレーズ中に使われる筋圧を生み出す。

腹壁は、呼吸サイクルの間、それらの演奏を最大にするために、横隔膜と胸郭壁を「調整する」ことによって、連続歌唱で特別な役割を演ずる。

歌唱中の腹壁の筋肉活動パターンは、壁が主にその下と側面部位の活性化を通してその特別な役割を果たすことを明らかにする。

換気とガス交換は、連続歌唱の間、静止一回呼吸間の状態から、大抵過度呼吸の方へ変えられる。

 

訳:山本隆則 2012/03/23