[W. Vennard, Singing.  1967/1949]

ゆるんだあご (416-425)
416 下顎または下顎骨は2つの対称形の部分を持ち、前部で合わされる。我々はそれに付随する喉頭筋および舌筋を列挙した。そして、おそらく、我々は頭蓋骨にそれを保持する筋肉を考えなければならない。骨は耳の直前で上へ回って、2つの突起に分かれる。後ろの方はノブのようで、顎体部(capitulum)または関節丘(condyle)[Candylar process:Zemlin]と呼ばれ、前の方は、鉤状突起(coronoid process)と呼ばれる。関節丘はゆるい受け口にはめ込まれるが、あごはいくつかの靭帯(我々は翼突下顎靭帯(pterygomandibular ligamen)に言及した)によって保たれ、筋肉が過剰に硬く保たれない限り、いろいろな方向に自由に動くことができる。口を開けると、いろいろなところであごが「カクッという音」で「きしり」があると生徒が訴えるときはいつでも、単に彼がそれをゆるめることを学ばなかっただけだ。初めてそれらに我々が気がつくとき、正常な肉体感覚を感ずることは容易である。
417 側頭筋(temporalis)と呼ばれる大きな筋肉は、こめかみ(temple)(それのために名付けられた)に位置し、鉤状突起(coronoid process)まで腱を下に送る。頬骨弓(zygomatic arch)と呼ばれる骨のアーチがこの付着部についている。あなたは、頬骨の延長として、それを感じることができる。大きくて力強い咀嚼筋は、このアーチから起こって、外側であごの角をカバーする。外の翼状プレート(Par.406)から起こることは前方へ鉤状突起を引っ張る側面の翼状筋(lateral pterygoid )である、そして、近くで起こリ、内側にあごの曲がり角に斜めに下がっている内側の翼状突起がある。
418 あごの筋肉はもちろん噛む際に主要な仕事をするが、それらが実際に疲れることなく重力を克服して一日中働いていることを、我々は忘れてしまう。それらは姿勢筋である、そして、後ろの姿勢筋が呼吸と協同する(Pal. 97)と同時に、あごの筋肉は外因性喉頭筋組織と協同する。実際に、顎二腹筋は抵抗に対してあごを開くことを助ける。これは、何人かの教師が、誇張された開きを要求しない理由かもしれない;何人かの生徒がそうすることであごの下で筋肉を締め付けていることが彼らにはわかった。
419 あごの位置について多くのことが言われてきたが、その自由さは非常に重要なものである。堅いあごは、堅い喉のしるしである。外因性喉頭筋が引っ張るならば、それらの緊張は、下顎骨を持ち上げるそれらの筋肉によって抵抗されるにちがいない。生徒にあごを落とすことを求めることは助けになるかもしれないが、彼にそれを「リラックスさせる」ことを求めることは、ほとんど不可能なことだ。彼に、喉をリラックスしなければならないことを説明しなさい、そして、彼があごの緩みが分かったとき、それがリラックスしていることだと教えなさい。同じことが、スピーチでもいえる、(Perkins、ほか)。あごの堅さは、喉頭の上昇と同じような徴候で、同じ考慮すべき事柄があてはまる。歌手は、あごが自由になるような歌唱を学ばなければならない。歌唱の前に、彼はそれをゆるめるかもしれないが、彼が正しく声を発しない限り、それはたちまちもとのようにセットされるだろう。有益な心理的な策謀は、あごが鉛でできていて、それ自身の重さで下に垂れ下がると想像することである。それはまた、声を出している間、左右にあごをくねくねさせるのを助ける。
420 あごを下げることで喉頭を圧縮しないように、姿勢は頭が少し前向きでなければならない(FrommholdとHoppe(Sonninen); Par。79)。図47の中の「押し下げられた喉頭」と称される調整のX線写真に注意しなさい。別の生成のしかたより、首はほとんど垂直で、頭が後ろにひかれ下に傾く。あごを広く開けることは、このように押し下げられた舌骨によって極端に低い喉頭を生成するので、もはや声門の水平面と平行ではなくなる。(このグループの他のX線写真等と比較しなさい。)二腹筋とオトガイ舌骨筋は、緊張している。何人かの教師は壁に対して生徒を実際に立たせ、この状態になるように顎骨を押す!その音声は時には強い印象を与える、そして、私は「カバリング」と「喉音の生成」の議題でそれについてより詳しく説明するでしょう(Par. 541-554)。
421 首の筋肉のいくつかは姿勢筋でもあり、頭の向を維持する。喉頭外筋の緊張は、それゆえに、それらに反映される。用例のために、舌骨上筋の引っぱる力はあごを固めるが、顔が上へ保たれない限り役立たない。これは、頭の後ろが下に下げられなければならないことを意味するので、緊張した胸鎖乳突筋は、胸骨と耳の間で、首から浮き出ているのが見て取れるだろう。(これは、ちなみに、呼吸においてこれらの筋肉を使わないための良い理由である。楽器のあらゆる部分は、すべて他のものに影響を及ぼす。)
422 時には、教師が生徒に、より広く開けるか、「トーンにより部屋を与える」(そのためにかなり良いやり方)ことを求めるとき、生徒は頭を後方に傾ける。下あごを降ろす代わりに、彼は上の部分を上げる!下顎骨が同じ位置で動かず、さらに喉頭に同じ有害な引っぱる力を及ぼすので、これは教師の目的を無効にする。その位置は、一般的に「トーンに届く」と言われる (図ー64)
423 何人かの歌手は、ほとんど閉ざされた口で非常に上手く歌う。しかしながら、あごがむしろより下がるならば、結果はより良くなるだろうと私は考える。多くの優れた歌手は、より大きく開けるので、側頭部と咀嚼筋が目立つのがわかる。それらが必ずしも働いているというわけではないが、それらの位置は変わる。それのための決まった規則はない、例えば歯の間に決まった数の指を置くことができるとか、もっとも、何人かの生徒が、実際にいかに少ししか開いてないかを認識するのを助ける良い手段であるけれども。また、鏡も助けになる。あごが自己抑制的である人は、奇妙に見えることなく、それがどれほど開くことが出来るかにいつも驚く。我々が物(例えば虫歯)を見るとき、それらが見えるより、より大きく「感じる」。あごのちょうつがいは簡単な回転軸でない、そして、あごは咀嚼のためのいくつかの方向にすべることでできる。軸受の中で関節丘で側頭部をリラックスすることだけで開けている限り、それは大きく開がないだろう。最大限の開きは、下顎骨の「関節を外す」ことが必要となる。これは、最下部の近くの両耳の前に指を置くことによって感じることができる。ここでは、人は下顎枝または両側の顎骨の上へ向かう突起を感じることができる。下顎骨が実際に下がるとき、枝は側面の翼状突起によって前に引かれ、指が両耳の前のポケットの中に沈むことが可能になる。パリ・オペラのメンバーのHussonのX線において、スピーチから歌に変わる際にあごは下がって前方へ動いた。
424 できるだけあごを下げることに対する正当な理由は、これが舌を咽頭からさらに引き抜くということである。そして、そのサイズを増やして、同時に口腔のメガホン形を増進する。Ah以外の母音にとって、舌を別の形にすることが必要である、そして、これは同様に別のあごの位置を必要とする。それにしても、さらに、良好なEeやAyを作るとき、あごがどれくらい落とすことができるかを見出すことは興味深い。これらの母音は、この過程を経ることで音質がより改善される。実験は、口をどれくらい開けるかの問題を解決する唯一の法方である。私は生徒に、親指-関節が彼の前歯の間で垂直に保ってすべて母音を歌うように、しばしば求める。デモステネスは、口の中の小石で練習しなかったか?
425 生徒が声を出しているとき、私は時々、難しい音に接近するときあごをもう少し下げることを示唆する。これは、目的を達成するための手段でしかない。開きの行為は、喉の締め付けと喉頭の引き上げを妨いでくれる可能性がある。口の余分な空間は、価値がない。