第7章
Male Passaggio Objectives
男性パッサージオのトレーニング

端的に言うと、比較的安定したチューブ(声道)の長さは、西洋クラシック歌唱における音色の一貫した深さとバランスのために必要である。チューブの長さと断面積は、フォルマントの位置にとって重要な要因となる。効果的なチューブの長さは、Fach(特異な声種)に特有のシンガーズ・フォルマント・クラスターを含む、与えられた声の全てのフォルマントセットの通常の位置を決定する。しかし、訓練されていない男性は音の上昇に従って声道を本能的に短くし、イエール(Yell)の強いF1/H2音響カップリングを保つために第1フォルマントを上げて、万国共通の、首を絞めつけられて死にそうな形相になる。イエ―リングは、押された発声がますますより重い喉頭声区調整(甲状披裂筋[TA]優位)となり、音色と認められたFachとの不一致に陥る。声道の長さと形が一定のままであるならば、第1フォルマントの位置は一定のままである、そして、H2が、F1を通り過ぎて上に移動することによって、イエールは避けられる。この移行は、「カバーリング」又は「ターニング・オーヴァー」などとさまざまに呼ばれる音色のシフトになり、より容易な喉頭声区調整と押した発声を緩和する(強調:山本)。1オクターブ下を歌うとき、母音とそれらの予測可能なF1/H2交差によるF1の様々な位置、ならびにそれらの交差に伴う受動的な母音変更についての知識は、チューブの長さの不変性を決める的確な手段となり、そして、良好なパッサージオの克服のためにチューブの不変性を訓練する有効な戦略にとって確実な基礎となる。

Male Passaggio Objectives:男性パッサージオの目標
男性の高い声への移行訓練の主な技術的目標は、以下の通りである:

・A Stable Laryngeal Position and Tube Length, and a Convergent Resonator:安定した喉頭の位置とチューブの長さ、そして、収束性共鳴体(Convergent Resonator;訳注:喉の位置で広く、唇の近くで狭い共鳴体の形)
比較的収束した共鳴体の形(convergent resonator shape)をもつ安定した喉頭の位置とチューブの長は、音色の深さと一貫性を確実にする。喉頭を上げて、喉咽頭部を収縮させる嚥下筋の活性化を避けることによって、安定したチューブの長さが達成される。どちら側でも、喉頭の後ろに向かう甲状舌骨スペースを触ってみることによって調べることができる。(下記の図14と、65ページの、チューブの長さの安定性をモニターする、参照)それは、ゆるんで開いたままでなければならない。喉頭を強引に低い位置に固定することは、声の自由を妨げる。音色の深さと母音を閉じる度合いを維持することは、母音がターン・オヴァ―(訳注;カヴァー)するまで、ピッチ上昇と同時に起こる喉頭の挙上を防ぐのを助ける。収束性共鳴体の形 ― 喉頭の近くで開いていて、唇の近くで狭くなる ― は、シンガーズ・フォルマント・クラスターとキアロスクーロ(バランスの取れた共鳴)の発達を容易にする。それは、ある程度、舌を前に出すことと口蓋帆の上昇を、そして歌われている母音/ピッチのコンビネーションのために必要な最少限のあごの落としを必要とする。歌手には、内部の開きが「先導して」、そして、あごの開きが後に続く(その逆よりもむしろ)ように思われなければならない。

・Dynamic Laryngeal Registration:動的な喉頭レジストレーション

滑らかな、段階的な変化による動的な喉頭レジストレーションは、容易さと動的な柔軟性を確実にする。適切な共鳴戦略を使用することは、通常喉頭レジストレーションを改善するが、それは効果的な筋肉の調整を保証するわけではない。ピッチに特有の動的な(絶えず変わる)喉頭レジストレーションは、いくつかの別々の注意を必要とする。母音の共鳴とレジストレーションに関する効果についての知識は、建設的なエクササイズ戦略と治療法に情報を与えることができる。例えば、胸声の開いた母音から1オクターブ上の頭声の閉じた母音まで滑らかに移動することは、喉頭筋に動的な調整を発見するチャンスを与えることができる。上行ピッチと同時に行われる、計画的で、連続した閉じた母音の選択で音階パッセージを歌うことは、より軽い声区調整の方へ喉頭調整を上手く扱うこともできるし、降下のために、逆もまた同じである。TAとCT関係の割合の変化が極めて段階的に訓練されるかもしれないのに対して、音響的フィードバック要因は、音階でのいくつかのポイントで、振動のモード1(短い、厚い声帯、ゆるいカバー)からモード2(長い、ぴんと張った、細い声帯、張りのあるカバー)までのおそらく二者択一の変換を引き起こす、しかし、上手な歌手はこのシフトの音色の影響を最小にすることができる。男性(カウンターテナー以外の)は、まれにモード2に向かうが、モード1のより軽い調整を高い音域のために必要とする。

・Familiarity with Vowel Turning:母音変更の熟知

母音変更(vowel turning)の場所、響きと感覚について精通することが必要である。声を ― イエ―リングよりはむしろ ― ターン・オーヴァーするほうが本能的ではないので、母音がいつ、どこでターン・オーバーするかを予想することは、若い歌手に非常に助けになることがある。母音が予想される所でターン・オーヴァーしないならば、第1フォルマントを第2倍音の上にとどめるために、2つうちの1つのことが起こる:母音が開けられる(時には適切であるがピッチと発音の戦略には不十分)または、喉頭が上げられる(めったに良い戦略にはならない)、または、たぶん両方とも。伝統的なパッサージオの場所の下でよく閉じられた狭母音/i/と/u/での母音チューニングを経験するすることは有益である。閉じた/o/と/e/が回転するのは、第1パッサージオの場所として伝統的によく理解されているzona di passaggioの下端である。それらの深さと閉鎖は、聞き取り指導するのが比較的簡単である。訓練されていない男性は、ターンさせるよりもむしろ、/o/を/ʌ/の方へ、/e/を/ɛ/の方へ開く傾向がある。ターニングと戻りの予測されたピッチより上でループして(滑るように上行し下降することで)、共鳴し、語形変化する言語音は、母音変更(vowel turning)を調べる簡単な初期の方法である。イエールの衝動が強情な場合、深さを心に浮かべ、わずかに閉じた母音と内向的な感情または方向を考える(泣きそうな;内側に、意気消沈して)それが上昇中であればしばしば効果的な戦略である。最終的な実際のゴールは、上へループするとき、チューブの形を変えるよりはむしろそれを維持することであり、それによってターニングで起こる音響の、受動的な修正を可能にすることである。

・The Ability to Turn Over:ターン・オヴァ―の能力

一旦、生徒がターニングを理解し、いつどこで母音をターン・オーヴァすべきかがわかるようになれば、母音を適切なピッチでターン・オーヴァーさせる能力を、意図的に操作することなく日常的になるまで練習しなければならない。最高の共鳴「配置(posture)」が維持されているならば、いかなる母音上の上下のループであろうとも、一貫したキアロスクーロ音色によって楽にターン・オーヴァーとターン・バックするだろう、そして、ループの頂上へ向かう有意、且つ、必然的なクレッシェンドはない。また、上への曲がりと共に内側に定まる音と、そして、下降に応じて再び開くとき、硬口蓋が前の方へ戻る感覚があるかもしれない。

・Vowel Integrity with Appropriate Vowel Modification:適切な母音修正による母音の完全性
母音のターニングに付随する受動的な母音修正は、母音をゆがめることではない、むしろ本来の同じ母音系統群に、或いは、「前か後の」通り道の同じ側になければならない、そして、了解度を妨げてはならない。具体的に言うと、通りの「後舌母音」側-/ɑ ɔ ʊ  o/-の修正は、通りの同じ側の閉じた隣りの方向へ動く。同様に、通りの「前」側の母音-/ɛ ɪ/-は、いくぶん閉じるだろう、そして、おそらくわずかに中立化するだろう。それらがすでに非常に低く閉じたのであれば、Zone di Passaggioで、狭母音/i/と/u/は、フープ音色を避けて、強さと共鳴を保つために、/ɪ/と/ʊ/に向かって-少なくとも垂直スペースの程度において、でなければ母音品質において-開かれなければならないだろう。しかし、/ɑ/や/ɔ/の後舌母音を混ぜることで、/ɛ/や/ œ/のような混合母音に向かって「通りを渡る」ことは、ゆがめることである(下記の母音修正再考を参照)。

・Maintenance of Chiaroscuro Timbre:キアロスクーロ音色の維持
プロの男性の歌手の高い声には刺激的な、響きわたる音質がなければならない一方で、音色の豊かさと深さもなければならない。チューブの形が別のやり方で変更されているときでさえ、深さに依存するシンガーズ・フォルマント・クラスターのために必要なチューブの長さと開いたのどの収束性共鳴体の姿勢を維持することによって、これはなしとげられる。(すなわち、フォルマント1と2が何らかの音域で特有のフォルマント・チューニングに関与しているとき)

Vowel Modification Revisited:母音修正の再検討
母音の修正vs母音の完全性または「純度」の問題は、発声教育学の歴史を通じてたえず議論されてきた。人間の認識が複雑に絡み合うようになったので、両方の概念が必要とされにもかかわらず、明確な定義はなされていない。倍音がフォルマントを通して大きくなるとき、音色がいくぶん変わるという明白な事実があれば、ある程度の母音修正または変化は必然的なものである。しかし、母音修正は、歴史的に、修正された母音音色を生み出すための意識的な声道の形の変化から、はっきりした母音の置き換えにまで及ぶ。ここに紹介された受動的な母音修正の概念は次のように指摘する、倍音が第1フォルマントを通り過ぎて移動するにつれて、ピッチ(その倍音列を伴って)が上昇するとき、声道(チューブ)(すなわち、母音形)が一定に保たれれば、ある程度の母音変更は必然的に起こる。この種の母音変化は歌手に、同じ系統群内または前後の指定に関する同じ「通りの側」で、微妙な移動を与えるが、彼/彼女に母音 ― 少なくとも形において ― を維持しているように感じさせる。おそらくすべての教師が避けたいものは、母音歪曲の認識である。これは、たとえば、/ɔ/のような開いた後舌母音が、/œ/のような混合母音の音質をいくらか持つようになる時に起こる。これは、ターニング・オーヴァーの音響効果より舌の緊張を示す、そして、F1/H2交差の上での/ɔ/の通常のスピーチの形を維持することからは生じない、その代わりに/ʊ/のほうに移らなければならない。
受動的な母音修正の現象は、要するに母音修正とは何か、またどうあるべきかという問題をもたらす。それは、より好ましいフォルマント/倍音の結合を見つけようとするそれぞれの話し声の母音の形に対する考えぬかれた共鳴器の再構築なのか?または、それはむしろ、ピッチを変えることによってフォルマント/倍音の関係が変化するとき、母音の形を維持する結果として起こる知覚的な変化であるのか?または、状況次第で、おそらく両方なのか?これらの質問は更なる研究を必要とする、しかし、この著者の意見において、ターンの下からちょうどその上まで、後者(形を維持する)が優勢でなければならない。ターンとフープ音色の間で、どちらでも使うことができる。F1/H1フープ・カップリングより高くから、能動的な形体変化(母音を開くこと)の何らかの形は、歌手がどのようにその形の変化に動機づけするかに関係なく、音色の充満を維持するのに用いられなければならない。理想的には、歌手は、より多くのスペース ― 主に下顎骨の開きを加えることによる内部の垂直スペース ― を加えること以外に、歌っている語の母音を考え続けることができなければならない。より開いた隣接する母音(母音代用)を実際に考えることによって、何人かの歌手はより良い結果を得る。母音を形づくることの微妙さは、人が同じピッチで他の母音と多かれ少なかれ適切に比較して意図された母音の独自性を保つのを可能にするだろう。とは言うものの、もしも声道が、テノールのハイC(C5)で、1オクターブ下で使われる/i/母音を、良く分かるようにではなく共鳴の必要性のために形作るのならば、人が/i/や/I/、あるいは、他の何らかの動機付けの修正を考えていたかどうかにかかわらず、それは/i/とは聞こえないだろう。反対に、テノールがC5で、通常の話声域の/i/の形を試みるならば ― 発声さえ可能であるならば ― 音色は主に緊張し、および/または、締め付けたように聞こえる。良い音のために、そして、楽な発声のために、そのような状況(通常のF1周波数を上回って歌うとき)で声道の形を変えることは、重要である。
歌っているときの、すべての修正に対する1つの原則は、第1フォルマントの下にある倍音の数に関係がある。歌われているピッチがより低いほど、より多くの倍音が第1フォルマントの下にある。さらにまた、低いピッチを歌うとき、通常、より多くの倍音(H3またはそれ以上)が第1フォルマントによって大きくなっている、そして、それの下の倍音はより近くに引きよせられ(trailing)、しばしば、F1の帯域幅(裾を登る)の範囲内に集められる。したがって、引きよせられた倍音(trailing harmonic)は、F1によって共鳴させられ、このように、すぐ隣りの高い倍音によってちょうど譲られた突出を引き受けることができるように位置を定められる。第1フォルマントの下にある複数の倍音によって、第1フォルマントより上には、第2フォルマントとそれ以上のフォルマントによって共鳴させられる利用可能なより密接な間隔の倍音も存在する、それゆえに、より良好なフォルマント/倍音の一致のために形を修正する必要はほとんどない。したがって、二つ以上の倍音がF1の下にある音域で ― 声道の全般的に望ましい、収束性音響の平衡を越えて ― 能動的母音変形を求めるべきではない。
第1フォルマントを通して大きくなったより高い倍音(より密接に引きよせられた倍音たち)は、可聴であるが、より微妙な音色の閉鎖またはターニングを生み出す。しかし、第2倍音が第1フォルマントを通して大きくなるとき、トレールしている第1倍音はほとんど1オクターブ下である、そして、結果音色の変化(振動器に対する双方向のフィードバック影響は言うまでもなく)はより重要である。一旦、フープ音色は成し遂げられたら、つまり、一旦H1がF1の周波数ピークに到着するならば、トレイルしている倍音は残らない(H1の下には倍音は存在しない-それは定義上最も低い倍音である)、そして、共鳴が利用できる原色音域(キーボード音域)の中に、多くのより少しの高い倍音が存在する。したがって、高いピッチと共に、フォルマント・チューニングはますます必要になり、基音がより高くなれば、母音修正はより重要且つ大きくなる。第1倍音が第1フォルマントの上に上昇するならば、それが共鳴するために第1フォルマントの下には倍音がないので、音色はすぐにか細くなるので、フォルマント・チューニング(歌われているピッチと協調してF1を上げる)が欠かせなくなる。

Non-Linear Source-Filter Theory Revisited:非線形の音源-フィルター論の再検討
今、議論された能動的母音変形の目的は、利用できる音源倍音のより良い共鳴を見つけるためにフォルマントを調節することである。むしろ以前に言及されたように、特定の状況では、フィルタを通過している音響エネルギーは音源へ戻って生産的に反響されることができる。そして、効率と音声源/振動体の力を促進する。そのような相互作用は、振動体の閉鎖率(各振動のサイクルの閉鎖時間のパーセンテージ)を効果的に上昇させることができる。これは、共鳴体をスペクトルの上端をより効率的にする:閉じた位相がより長いほど、高い倍音の強化はより強くなる。それはまた、より大きな筋肉の声門閉鎖力(声門の絞り)がなくても気流を減少する。相互作用が強化されるその状況は:収束性共鳴体の形【訳注:喉が広く、唇に向かって狭くなる共鳴体の形】、安定した喉頭、開いたのど、そして上喉頭チューブの狭められた出口である。これらの状況の全ては、音響のinertive reactance*(声門の効率を改善することができる要因)を増やす。
これらの特徴(開いたのど、共鳴体の収束)は、特にそのキアロスクーロ(明るい/暗い)のバランスの良い共鳴、シンガーズ・フォルマント・クラスターの生成において、西洋の古典的歌唱に特有のものである。(Sundberg、1974; TitzeとStory、1997; TitzeとVerdolini、2012)振動体への共鳴体の影響は初期の発声教師/研究者(例えばBerton Coffin、Ralph ApplemanとJohn Large)によって先鞭をつけられ、何世紀にもわたって発声先生によって直観されてきた、しかし、より最近に限ると、関係する物理学は、Johan Sundberg、Ingo TitzeとDonald Millerなどの発声科学研究者によって説明される。現時点では、非ライナー対話性は、主に西洋の古典的歌唱に存在する声道戦略(収束性の共鳴体)に適応し、そして、別の歌唱スタイルでよく使われるようなより拡散的な声道を形作る戦略に使用するものではないと思われる。

*inertive reactance:共鳴体の収束性によって生成される空気分子運動の停滞、共鳴体の振動体との相互作用を改善することができる。(p.108)

Resonator Convergence:共鳴体収束
音声科学者Ingo Titzeは、西洋古典的歌手が、おそらく古典的な共鳴効率のためのinertive reactance(声帯自励振動を増強する力)を最大にするために、逆さまにしたメガホンのような比較的収束した声道を使うことを観察した。上で説明されたように、シンガーズ・フォルマント・クラスターとキアロスクーロ音質の創出には比較的収束性共鳴体の形が要求される。閉じた前舌母音は、舌を上の奥歯と接触させる、本来的に収束性であるが、若干の付加的な咽頭腔(あくびの暗示または、舌/歯接触のうしろの垂直の感じ)を依然として必要とするだろう。開いた母音は、許容できる母音了解度の範囲内で、最大の収束を達成するために、なんらかの調整を必要とするだろう。例えば、最少限あごを落としてスピーチ音域内で開いた母音を発音すること、そして、舌を平らにすること― 優れたディクションで統御されることができるくらい前面にされた舌を保つこと ― は、それらの収束を増やすだろう。収束はまた、比較的定まった、開いたのど(甲状舌骨スペースは圧縮されていない(図14、38ページ))に、そして、軟口蓋の若干の上昇に依存している。収束性声道姿勢は、低い喉頭、開いたのど、上げられた口蓋とより閉じた母音姿勢を促進する情動、例えば内なる喜び、こらえた笑い、茶目っ気、泣きなどのより刺激的な情動を用いることによってより自然に達成されることができる。すべてのそのような調整は、快適さと自由を勝ち取ったより良いキアロスクーロ共鳴となるはずである。

Vocal Cover/Turning Over:声のカバー/ターニング・オーヴァー
母音が予測された場所でターン・オーヴァーするならば-母音の第1フォルマントが共鳴するスピーチ位置の下の1オクターブよりわずかに少なく-それはチューブの長さの安定性(西洋の古典的歌唱の望ましい特徴)の証拠。したがって、母音チューニングの場所を観察することは、チューブの長さの安定性を判断し、訓練するのに役立つ。ピッチ上昇で喉頭を上げることは― 叫び(yell)の本能によってー著しく強硬で一般的な反応である 。ピッチが上がるときでも、喉頭を低く浮かす訓練をすることによって、この本能に対処することは、訓練中の歌手(特に男性)の重要な部分をなす。先生と歌手が、ピッチ上昇の間、安定したチューブ長から生じる必要な倍音/フォルマント交差と、各々の連続した音色の閉鎖を伴う微妙な受動的な母音変形を理解し、尊重し、可能にすることは、重要である。さらにまた、習慣と本能がチューブまでの長さの安定性を徐々に損ない、母音のターニングに抵抗するとき、母音の閉じと第1フォルマント場所の関係を理解することは、母音ターニングを促進する効果的ツールを提供する。チューブ短縮/母音の開いた「イエール」反応が頑固に根強いならば、ある程度の母音の閉鎖と共に音質を低くすることは、習慣的反応が再訓練されるまで、一時的にターニング・オーヴァーを促進するために使うことができる。閉鎖の程度は、母音選択または母音発音の閉鎖、例えば「Minnesotan(ミネソタ州の人)」(または閉じたドイツ語)/o/を強調するように、によって果たすことができる;より閉じた隣りの母音へと動くこと:/o/を/u/へ;/e/を/i/へ;或いは、充分な閉鎖(例えば舌円丘と奥歯との接触を保ち、軟口蓋が上っているのを確信する、または、唇または舌の形を保つ)を達成する身体的方向によって。

Secondary Acoustic Registration Events:第二の音響声区現象
上記のように、あらゆる倍音が第1のフォルマントを越えるときはいつでも、聞き取れる影響がある-倍音が第1のフォルマントを通り過ぎて上がるときは閉じ、そして、倍音が第1のフォルマントの下に下がる時は、開き。H2がF1を越えて上がるとき、声の第1のターニングのように、他のすべての倍音/フォルマント交差の場所は予測可能で、したがって教育上有益である。フォルマントの下で1オクターブと5度を歌うとき、第3倍音は第1フォルマントを越える;第4倍音は2オクターブ下を;、そのように前に。第1フォルマントの場所の下にこれらのより大きい音程の距離があれば、結果として生じる交差は必然的に、低いピッチで、開いた母音、それゆえに、しばしば低音部記号の範囲内、または、男性の声で起こる。

Handling the Zona di Passaggio Zona di Passaggioの扱い
これらの交差の全ては、チューブの長さまたは形(短くすることと開くこと)の不適当な調整の可能性を与える。F1は上る倍音を追う傾向があるので、ピッチが上がるとき、これはよりしばしば問題となる、音色を閉じることは音色を開くことよりも本能的ではない。たとえば、第3の倍音は、第1パッサージオの伝統的な位置のすぐ下の開いた母音/E/、/au/、そして、/a*/の第1フォルマントを越え、歌手に音響的に「より狭く」そして「より高い」ようにと、しばしば言われる可聴の「ミニ・ターニング」または「ミニ・クロージング閉鎖」を引き起こす。この交差が起こらないならば、喉頭は上がり、母音が開いてしまう。そして、パッサージ・ゾーンがあまりに露骨で大きく開いた音になり、歌手にとって、第2パッサージオを通過する移行がより難しいものとなる。これは、しばしば出くわす「砂時計」認識またはパッサージ・ゾーンの解説そして、「狭くする」か、「集める」か、パッサージを通って声を「集める」という指示を説明するかもしれない。さらにまた、通常のスピーチにおける狭母音/i/と/u/の第1フォルマントは、第2パッサージオの近くにある、そして、それらの母音のピッチは、第1パッサージオよりさらに低く、音響的に1オクターブ下で閉じた。歌手が第2パッサージオでフープ結合(F1/H1)へ移動しようとしない限り、彼はフープ音色を避けて、より力強い混合音色にとどまるためにzone di passaggioを通して/i/と/u/を開く必要がある。いずれにせよ、通常のスピーチの形で、その時までにフープ結合(F1/H1)が達せられた時から、第2パッサージォから上で、音色の薄さと発声の緊張を避けるために、彼は確かに/i/と/u/を開く必要がある、そして-調整がなされないならば-それより上で限界を超えてしまう。それが直観に反しているとはいえ、相対的なF1の場所によって、高い音域の/i/母音は、声区上の音色に適合させるために、同じピッチの/A/よりもさらに開く必要がある。これらの第二の音響声区現象は、不適当な調整の可能性を引き起こすだけではなく、また、トレーニングの目的のために利用されることもできる。第2パッサージの近くの開いた母音のF1/H2交差の第1の音響の移行は、H4がF1を越える1オクターブ下を確実にそうであることがありえるの近くで開いた母音の交差しているの主要なより低く1オクターブをモデル化することができる。受動的母音修正は、F1/H4の相互作用においてより微妙であるけれども、オクターブ上に向かう喉頭声区の挑戦なしでF1/H2に類似した音響移行をリハーサルする利点が示される。チューブの形を維持して、結果として生じる母音移動(受動的な修正)を可能にする方法を学ぶことは、西洋の古典的歌唱のトレーニングにとって決定的な重要性がある。

Summary of Events that Surround the Male Zona di Passaggio:男性のZone di Passaggioをめぐる現象の概要
男性のパッサージオをめぐる音響声区現象の全ては、明確な理解のために音譜上で作図することができる:
図15:パッサージオを囲む音響声区現象は、四角の中で低音部記号で図を作成される:黒い音程は、F1/H2交差で、母音の第一のターニングを示す;開いている母音/E/、/A/と/aw/は、第2パッサージオの近くで,そして、狭母音/e/と/o/は第1パッサージオの近くでターンするか閉まる;赤いピッチは開いた母音/E/、/A/、そして、/U/のF1/H3交差の「ミニ・ターニング」を示す-また、第2パッサージオの近くで-フープ音色が起こるポイントを、そして上はH1の第1フォルマント追跡が必要なポイントを示す。すべての男性の声種のために、パッサージオ現象のチャートについては、付録3を参照。126ページ)

48ページ
Primo Passaggio:第1パッサージオ
(第1パッサージオの近くで起こる現象)
・開いたvowels/E/、/aw/、/A/のミニ・ターニング(F1/H3交差)
・半‐閉じ母音/e/と/o/の第1ターニング(F1/H2)
Second Passaggio:第2パッサージオ
(第2パッサージオの近くで起こる現象)
・開いた母音/E/、/aw/と/A/の第1ターニング(F1/H2)
・狭母音/i/と/u/のフープ音色(F1/H1)への到達

Registration and Expression/Artistry:声区と表現/芸術性
第一のターンとともに、これらの第二の音色現象は手際のよい音域の克服にとって重要なだけではなく、それらの受動的音色修正がしばしば表現と関係していることから、芸術的な目的のためにもいかされる。交差している倍音/フォルマントによって下降するに応じてさらに「開いた」男性の声は、より華麗で感情豊かに聞こえる。逆に、上行する音色の閉鎖(カバー)に伴う音色の深みとラウンディングは、カラフルで、感情的な暖かさ、および、またはエキサイティングである。人は、母音の開きと閉じの微妙な加減によって、問題なくこれらの ― それらの予測可能な場所に十分に近いとき ― 影響を能動的に引き起こすことができる。ターニング・オーヴァーの上でのF2/高い倍音カップリングの共鳴の向上にアセスすることによって、高音をよりスリリングにする。第2パッサージオの近くの/i/か/u/で、弱くて甘いが、完全な頭声効果が求められるなら、歌手は、フル「フープ」音色にアクセスするために閉じた発音にとどまることができる、そして、H1がF1を追い続けるために、それより上を徐々に開くことができる。( Effect of Approach by Leap, p. 53, と本書のTimbral Openings and Closings Other than F1/H2, p.56参照)

2018/02/22 訳:山本隆則