唇<調音<共鳴   [Barbara M. Doscher, The Functional Unity of the Singing Voice  1994]
唇の位置は、歌われている母音によって決まる。一般に、歯は後舌母音より前舌母音でよりよく見える。Vennardは、上4本の歯の縁の露出は、「たとえどんなに良い高い部分音が音声で発生しても、それを持続するための助けになる」と主張する。あらためて、個々の身体的な特徴は異なる、そして、形は何が最適の共鳴を引き起こすかによって決まる。一部の歌手は効果的にすぼめられた歌口を使用するが、他の人にとっては開口の直径が狭すぎて、過度の滅衰と非常に暗くてこもった音声になる。反対の極端(横向きの位置)は、金属的な、さらに貫き通す音声を生じる場合がある、もし遠くに運ばれるならば。問題は主観的で、大部分は各々の口の形、音声の振動数と歌われている母音によって決まる。
唇と、唇を取り囲んでいる大きな筋肉は、リラックスして可動性がなければならない。それらの特定の形状は変わりやすく、口腔ー咽頭腔のカップリングに影響を与える。
また、頬の位置は、共鳴している空間に影響を及ぼすだろう。男性と女性の歌手によって高い音域で頬を上げることは、過度のストレスを口蓋アーチに置くことなく軟口蓋の最大伸縮性を得るようである。この働きはテレビで見ることができる。
要約すると、舌、軟口蓋、唇またはあごの完全な位置は存在しない。それぞれ人の体つきは異なる。唯一のくずせないルールは、これらの調音器官が声道を作らなければならないので、共鳴している空間が、声帯から来る音波に共振して振動することが出来るということである。理想的には、これらの調整は、非生産的な緊張を避けるために、最小の労力と最大の効率でなされなければならない。共鳴道の調音器官と発声および呼吸メカニズムの相互依存は、そのような最大有効性に達することへの鍵である。「声道器官の解剖学的形状の点検は、すべての組織が筋肉と靭帯によってネットワーク化されていることを明らかにする。そして、器官の動きが互いに相互依存を持っていることを示唆する。例えば、舌の調音は喉頭に力を加え、その発声機能を変えてしまうかもしれない。」