[Lilli Lehmann, HOW TO SING 1902/1993 Dover edition] p. 49
The Sensation of the Nose – the Nose Form
鼻の感覚-鼻のフォーム
最初の呼吸-筋反射([How do I Breathe?] p.122 を参照)と密接に関係する最も重要なポジションの1つは、鼻孔の拡張、後方の鼻壁のリフティングと、口峡柱を拡張して協働させるような鼻の拡張によって生み出される。軟口蓋と口峡柱は、鼻でしっかりと保持(hold)されていますが、この支え(support)によって、与えられたポジションを変えることなく、絶えず上がったり下がったりすることができる抵抗ポイント(point of resistance)があります。
鼻が、呼吸-筋反射によって調整され、喉頭に[e]が設定される(placed)や否や、yiのポジションはeと一緒になられなければなりません; これは、yiによって、舌が喉頭をより高く後方にすることで、口腔を狭くするので、音を鼻に向かって前方にもたらし、下げられた口蓋の上でそれを鳴らすことができます。 yと[i]は、鼻の壁(nasal wall)でしっかりと感じられる。喉頭の前下がり(frontal lowering)を示す傾斜した-a-は、そのeの力(e-strength)で胸部前面の筋肉を押しているので、絶えず置き換えや再調音がなされ、そして、常に強い緊張を維持する鼻壁の下に置かれるようになります。
これらの全てが、鼻の壁との関係で口蓋の特定の位置を作ります。そしてそれは、あごが発音中に降ろされたときや、音と文字の間で短い休みがあるときでさえ、要するに、ゆるめたりリラックスすることが必要なときでさえ保持することができます。喉頭の再調整を決して忘れないことは当然として、口、喉、胸と横隔膜の全ての筋肉器官の結合を持続させます。この絶えず保持または更新される鼻と口蓋のポジションに対して、音とことばに関する全てのものを結合したり遮断したりする必要があります。またこのフォームは、音が終わるまで存在し続けなければなりません。聴き手はそのことをはっきりと感じることができます。なぜならば、音が終わった後でさえ、絶え間なく振動し続ける息の振動(強く発声された[i]によって作られる)が、歌い手にも聴き手にも生命力のある音が鳴り続けているようにかんじさせるからです。このフォームの接続筋肉は、1つのものから他のものへ、非常にしっかりと弾力的にフィットしなければなりませんが、音の活力と音の色調を与えるために一瞬たりともおろそかにしてはなりません。これは絶え間なく喉頭調音(larynx articulate)することによって行なわれます。音に新たな生命を与えるのは、主に決して休むことのない調音の筋肉を収縮させたり、穏やかに広げること、ならびに、呼吸を巧みに増強したり減少したりすることによりますが、当然のことながら、これらのことは調音のプロセスと非常に密接に関係しています。
この結合されたフォームには、非常に安定した、非常に鼻に関するなにかがあります、それは音色を開かずに広げることができ、音と言葉を消すことなく最小限に閉じることができます。
これの上には、鼻が主に作り出し、感知することを教えてくれる、すべての音のフォームの中で最も素晴らしいものがあり、すべての隣接する筋肉の協力の中に、私が理解し、また私が歌唱芸術の中で絶え間なく行っているように、音と言葉を結びつけるものがあります。
鼻孔を広げることによって、口峡柱は膨らみます。そのため、鼻はこの機能に影響を与えます。歌唱中に、鼻の腱を目と額に向かって、そして、こめかみのほうに向かって、そしてその先の耳の向こうに精力的に引き上げることは、非常に重要な助けとなります。母音[i]と[e]は、特にこの緊張した鼻の位置を必要としますが、歌手が、鳴りと運声力を維持するためにすべての他の母音と音で使えば非常にうまくいきます。したがって、私たち歌手は、これらの与えられた鼻の機能を継続的に更新しなければなりません。
子音の発音([e]ポジションで発音されなければならない)において、 [e]で始め、[e]で終わらなければならないとします、例えば、 n ― を歌う際に[ene]と発音されなければなりません―したがって、1つの文字で3回鼻の機能を更新するということで、n-音自体が作り出さなければならない非常に繊細な波状のニュアンスについて言っているのではありません。これはすべて、言葉を良く響かせるためのものです-このテーマについては、後で詳しく説明します。鼻と舌の機能は、最初に練習されなければなりません。鼻は口を閉じているときだけ息を鼻から逃がすことができるということを忘れてはいけません。歌う際に、口が開くとすぐに、鼻を通る息の出口を閉じ、舌の後ろの息を頭腔に導くようにします。指で鼻の穴を閉じながら、母音[i]を歌うことで、簡単にこれを確かめることができます。
2020/05/09 訳:山本隆則