CHAPTER XIII p.92
Phonetics
フォネティックス(表音、音声学)
フォネティック音声、或いは、完璧な連携(coordination)を誘導する目的で特定の局所的な動きを確信するために使われる音は以下の通りです:
AHは、完璧なコーディネーションによる完全な声色で、声域の範囲内で3つの音を持っています。
AH ― 「on」[ɑ or ɔ]や「hot」[ɔ]のような低音域。
AH ―「Father」のような標準的な中音域。
AH―「UN」のような高音域。
長いĀ[ø or e]は、中音域と高音域でのみ使用され、法則にしたがってEE[i]という閉じた形に向かって変化していきますが、決して到達することはありません。
EE[i]は、一般的に中高音域で使用され、”IT “[ɪ]の母音に向かって修正されています。
OO[u]は、修正なし(ただし歌唱ではもちろん閉母音の法則に従う)、そして、「ピアノ」だけで歌われる。
AW[ɔ]とOH[o]は非常に稀なケースです。
このように綴られた代名詞のIは、EEの自然な「消音」で使用されます。
M、HM、N、NG、L、T、R、K (Nは舌の動きを確実にするために、顎を静かにして歌います)
さらに、以下のような母音と子音の2系列の組み合わせには、明確な理由があります。
MUMM、 MAH、 HUG、 NAH、 MAH-NAM。
MING、 MONG、 LAH、 AH-Ā-EE。
TE-ROO、 KAH、 RAH。
それらの作用における発声器官への影響は以下の通りです。
完全な有声音であるAHは、あらゆる面でその作用が完全であり、局所的な作用はそれゆえに差異が生じない。音階などの練習や、完璧な音色を追求するためには習い始めから最後までこの音が理想的です。しかし、完璧な連携を実現するためには、多くの場合手伝いが必要です。また、喉頭への反応も正常で完璧です。
長いĀ(エ)はAH(ア)とEE(イ)の中間的な形態で、すぐに舌や唇のより局所的な動作が要求され、喉頭への反応はより鋭くなります。舌を前に上げたり、横に広げたりして、完全に形成されていないと喉頭が上がる傾向があります。
EE(イ)では、さらに舌を前に上向きにし、下顎をわずかに閉じて、舌先を下の歯に接触させ圧力を高めていく必要があります。喉頭への反応は母音の中で最も強く、他のどの音よりも喉頭を引き上げる傾向があります。声門を非常に緊密に閉じます。
AH-Ā-EE(アーエーイ)の進行は、音程の上昇に伴う舌の自然な前進・上昇動作を誘発し、正しいサスペンション(呼吸の一時停止)と呼吸の動作は、喉頭の上昇を遅らせる効果があります。
非共鳴母音であるOO(ウ)は、喉頭への反応が最も少なく、喉頭を下げる傾向がありますが、全ての母音の中で最も軽い喉頭の働きが要求されます。それは、修正することで初めて「大きな音」を出すことができますが、フォネティック音声としては純粋な形で使用する必要があります。
AWやOHも喉頭の位置が低くなりますが、舌下の筋肉に反応するため、喉頭の位置が低くなったり、音色が暗くなったりすることがあるので、あまり使わないようにしましょう。特に高音域では、軟口蓋の領域で深刻な障害が発生します。
IはAHとほぼ同じ作用をもっていますが、その消音と舌がひろく広がる傾向によって、本当のAH、つまりイタリアのAHと呼ばれるもののより良い概念を引き起こします。1つの音で繰り返すことで、または複数の音に使用することで、消音Eでのあごの動きを起こさせます。
Mは、「口を閉じた」と云われることもあります。しかし、これは同じではなく、「フィフティ・フィフティ」と呼ばれる子音で、半分はボカル(口)、半分はナサル(鼻)です。いわば「喉頭をスキップ」し、ごくわずかに喉頭に反応します。声帯はほぼ「安静時」の位置にある状態で作られるので、アタック(起声)時の喉頭の力みや緊張を避けることができます。
HMは単純に、喉頭の働きをさらに弱めるために帯気音を加えたものであり、その結果、反応も弱くなります。
Nは率直に言って鼻子音であり、わずかな喉頭の作用と反応があり、軟口蓋を解放して、降ろしています。そして、口腔共鳴の多くをカットします。
NGはNの誇張で、より多くの口腔共鳴をカットします。
Lは、ボッカルまたは口の子音で、舌を前に出したり、上に上げたりする動作と密接に関連しています。しかし、形成は、「頭っぽく」 なく非常に「口っぽい」ので、高音以外は常に練習するための動作です。
Tは音節のTE-ROOでのみ使われます。Rは舌に作用して硬直した舌を解放し、OOは喉頭を緩めて下降させるので発声行動を助けます。それは、Sbrigliaのお気に入りでした。
Kは口蓋の子音で、口蓋での破裂音を引き起こし、口蓋と舌が結合して形成された後、非常に激しく分離します。それは、口蓋、舌と口峡の動作を引き起こします。しかし、喉頭への反応が強く、ある種のショックがあるので、使用は控えめにしなければなりません。
RAH(巻き舌のR)は、舌に作用して、口の中で母音を十分に前に出すことができます。
この組み合わせは、後ほど説明するように、明確な目的のために作られています。
欠点の主な局所的原因を知り、どの音声が反対の局所的作用(緊張または弛緩)を引き起こすかを知っていれば、音を変えることができるという意味で欠点を治療することができ、歌手はその変化を聞き、感じることができます。それによって正しい動きを促すことができ、また、歌手の音に欠けていた望ましい響きや質、音程を聴かせることができるのです。そうすることで、音の新しい概念が生まれ、やがて「秩序」が生まれ、音も発声も徐々に正しいものになっていくのです。これを「相反するものの法則」と呼ぶことにします。例えば、生徒が喉を締め付けたり、喉頭を高くしたり、「固めた」舌で歌っている場合には、締め付けている筋肉を解放するようなフォネティック音声を歌うように指示し、呼吸にも十分に注意します。上記のケースでは、次のように行動する必要があります:
まず、図5,6,7のように腕を使って、自然にサスペンション(息の一時停止)ができるようになるまで、何度も正しく息を吸って声道全体を解放します。
その後、口を開けてNGを維持したままHUNGという言葉を使ってみましょう。なぜなら、喉頭と密接な関係にある口蓋を解放することで、喉頭を緩めて正常な位置に下げるように共感を得られるからです。歌う人はすぐに、鼻や顔の過剰な共鳴を耳にすることになります。 誇張されているのは事実です。HUNGのHは、アタック時に喉頭を締め付きすぎないようにします。また、改良されたUNの音は、舌の上向き前進の動作を刺激します。これに続いて、音階の連続した2音または3音で、関連する音声のNAHを、喉頭の緊張が正常になりやすい中低音から始めて、顎を動かさないようにします。続いて、TE-ROOで、OOだけで、ピアノで、喉頭の硬い緊張をさらにやめるために、中声の数音を使うこともあります。呼吸アクションが十分に正しければ、しばらくして生徒にいくつかの音でLAHを歌わせることができます。 3連または5連で、おそらく5連目を繰り返すでしょう。それでも硬直してしまう場合は、上下5音のMUMMをかなりの速さで、はっきりと発音し、母音の音を持続させようとせず、Mに音を「運ばせる」という方法をとることもあります。この後、MAHやMYを使って、舌を喉頭から離してより多くのアクションを起こし、発声原理(vocal law)を誘発することができます。また、MINGを使うこともできます。MとNGがEEの母音を保護し、EEが引き起こす反応を防ぐ音で囲むことで、MとNGが喉頭の作用と反応を弱めるのです。
しかし、このような場合には、AHの完全なトーンを使うことはありません。なぜなら、AHの要求は、歌手の喉の締め付けや習慣によって拒否されるからです。また、KAHは喉頭の反応が強すぎるため、使用しません。EEも同じ理由で、喉頭を上げて締め付ける傾向があるからです。AWやOHに向かわなければならないかもしれませんが、それは理由があって危険です。
もう一度、上記の場合の逆を考えてみましょう。トランペット・リップ、口蓋を後方に上げ、喉頭を無理に下げ、舌をへの字にして後ろに引くなど、暗くて太くて陰気な咽頭音を使う歌手がいます。ここでは、まず母音のIから始めて、舌を前方と側方に分散させ、Iの消音(vanish)のEE母音によって喉頭をより正常な位置に持っていき、EEの消音のために顎をはっきりと動かして各音符の「I」を発音することで、顎と舌下を解放し、EEの消音と明るいAHによって口蓋の使い方を反対方向に変えることができます。結果は素晴らしいものとなるでしょう。また、一般的な誤りの反対語であるMYやMAY、MEを使用することもできますし、口蓋の開放が必要な場合はMINGを使用することもできます。
私はここで、最も明確な警告を発します。フォネティック音声だけでいくら歌っても、誰もが素晴らしい歌手にはなれません。これらの練習は、完全な母音(できればAH)を使った音階や練習につながらなければなりません。これにより、歌手の声を楽器の音色として完全に発展させることができます。これらは、あくまでも完璧なコーディネーションのための補助的なものであり、本当に必要な場合を除き、教育の場では決して使用してはなりません。したがって、これまで一度も勉強したことのない初心者の場合は、正しい呼吸と、母音に対する自然で容易な音のアタックによって結果を出すようにし、最も簡単な練習から始め、呼吸を過度に要求せず、疲労を避け、古典派の最も簡単でメロディアスな曲やアリア以外は試みないようにしなさい。力強さや多様な色のドラマチックな表現を必要とする現代音楽やデクラメーション音楽は、少なくとも最初の2、3年は避けた方がいいでしょう。音色と表現の概念を徐々に増やし、完成させていくことで、生徒の発達した力に応じて少しずつ想像力を刺激しながら歌を学ばせましょう。アタック、ソステヌート、メッサ・ディ・ヴォ―チェ、スタッカート、そして現代の練習では軽視されている声の様々な色を練習させましょう。喜びの声、悲しみの声、勝利の声、悲痛な声、恨みの声、優しさの声など、言葉を使わずに “気分値(mood value) “で音階や練習をしてみましょう。これらのすべては、テクニックの助けになります。音声学は最も価値のあるものですが、呼吸とトーンの正しい指針から始めることで訓練を受けていない若い歌手の声の発達にはより価値があると思われます。しかし、このような訓練を受けていない人でも、時間をかけて音声学的な改善を保証できることが多いのです。発音、つまり母音で音を形成することは、初心者への指導の重要な部分を占めています。音と母音は一つであることを忘れてはいけません。
以下の表では、特定の欠点を改善するための具体的な音やフォネティック音声を示しています。しかし、歌の教師は、あるケースではある程度の実験が必要であり、最良の結果を得るためには、いくつかのフォネティック音声を反対方向に作用させて試さなければならないことが多いことを認識しているでしょう。これは、それぞれの先生方が、原則に沿って、個別に勉強したり、調査したりする問題です。
どのような欠点のある音色も、とりわけ1つ以上の共鳴が欠けていることがわかります。そして、フォネティックによる共鳴の区分を理解した上で、失われた共鳴を補強するフォネティック音韻を使用することから始めます。その後、見ても聞いても最も問題があると思われる器官のさらなる自由な活動に影響を与えるフォネティック音韻を使用します。そして、LAHやAHのような完全な音で常にフォローし、その結果を見て、まだ存在する不完全さを再び明らかにして、より自由で完全な連携活動を引き起こすと思われるどんな音でも継続することができるようになりなさい。それは、実にシンプルなことです。発声器官は非常に繊細なので、影響を受けやすく、次第に自然で自由に活動できる連携状態になっていきます。このようにして、生徒は音色の新しい概念を得て、ますます正しい音色を注文したり、意志したりするようになります。正しい音色は正しい動作から生まれるものであるため、概念が正しく、妨害がなければ、音色の意思を持つだけで、正しい音色が得られます。このようにして、人体のすべての技術を身につけなければなりません。それは、想像力、概念、意志の結果であっても、干渉がない場合にのみ作用することができます。フォネティックスは、単に干渉を排除することで、正しい連携作用を促します。
表 I
(欠陥)Tono frontale(前の音)(くぼみ、「hooty」)
(フォネティック)HUNG, MING, MY, MUMM, AH-Ā-EE, LAH (AW と OHを避ける)
鼻声(Nasal tone)
LAH, OO, I.I.I., RAH, KAH (slight smile), MY, AH-Ā-EE
喉声(Throaty)
OO, HM, MUMM, HUNG, LAH, MING.
音程がフラットする(Flat in Pitch)
口蓋が自由になるまで鼻のフォネティクス で明るく、MY, MING, MAH, NAH, AH-*A-EE (「大きいトーン」とAW-OHを避ける)。
シャープ(Shap)
口の発音(Mouth phonetics)、AH、AW、OH、LAH、RAH、KAH、MAH。
アタック(起声)でのショック(Shock on attack)
HM, MUMM, HUNG, LAH, RAH.
歌い終わりの喘ぎまたはうなり声(Gasp or grunt on finish)
音終わりの後の呼吸停止(Breath suspension)。
アタック(起声)でのずり上げ(Slur on attack)
スタッカート練習、ブレス操作、度重なるアタック(起声)、AH、MING、それからEE,MY、MAH、KAH、LAH。
正しい母音へのスライド(Sliding into the correct vowel)
(音のずり上げと同じ。)
息のアタック、息が漏れる(Aspirate attack, escaping air)
『H』を避けなさい; KAH,AH-Ā-EEを使う、1音でAHを繰り返してアタックする;EE、MY、MAHも使いなさい。
「レジスター」による音質の変化(Varied qualities due to “registers”)
鼻と口で交互に発音することで声を「均一」にし、ブレスにも注意。
悪い発音(Poor pronunciation)
リップ・アクション、トランペットの唇や笑顔を避ける、母音を誇張する、干渉に応じてフォネティックで補助する。
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子音を引き伸ばす(Prolonged consonants)
自明のことですが、単に習慣を避けなさい。簡単にやめられます。
開きすぎの閉母音(Closed vowels too open)
たえず干渉を受けています。MING, OO, AH-Ā-EE
閉じすぎの開母音(Open vowels too closed)
緊張のため、一般的には舌の緊張で、口蓋の干渉を伴う。OO、HUNG、TEE、ROOでこれらの器官を解放した後、MY、MAY、LAHを使います。
トレモロ(3種類)(Tremolo)
急速「ヤギ-鳴き声」は、喉頭緊張によるものです;TE-ROO, OO, HUNG, NAH, MAH,などを使います。ゆっくりとした波で、老齢でなりがち。中間の速さの揺れ、または「トリル」トレモロ ―は、 しばしば口蓋と喉頭ふるえが原因であることが多い。OO、HUNG、KAH、LAH、MY、を位置が決まるまで使います。
鳴りの不足(Lack of ring)
もちろん口蓋の干渉による。I, My, KAH, RAHを使って口腔音を整える。
音のブレイク、割れ(Break of tone, or crack)
喉頭が硬くなるので滑ってしまう。 喉頭を解放するために音声学で頭を共鳴させ、OO, MAH, NAHなどの大きすぎない音で徐々に安定させなさい。適切な場所で呼吸のリフトに気をつけ、正しい音声学によって頭部共鳴を増やしなさい。割れは一般的にリフトのすぐ上の高音で発生します。
表 II
開きすぎた口(Mouth too open)
明白なこと。少し微笑の形に変えなさい。MING, OO, MAH, NAH, RAHなどを使います。Mを除いてあごの動きを避けなさい。
すぼめた唇(Trumpet lips)
OOを避けなさい。MY, MAY, MING, MEE, TEを使い、AW と OHを避けなさい。
ノドの基部の膨張(Throat swelling at base )
AW, OHを避ける。OO, HUNG, NAH, MY, MING, LAH, AH-Ā-EEを使いなさい。慎重に呼吸を使い、過度に大きな音を避けなさい。
歯が見えるようなニタニタ笑い(Grinning smile)
自明のことですが、癖をなくすために、AW,OH,OO,LAH,HUNG,NAHなどの柔らかい母音を使い、”White Voice “の概念を変えてみましょう。
喉の肥大と浮き出た血管(Throat enlarging and swollen veins)
常に、喉頭と外の筋肉の緊張を示す。OOの後に、鼻の音声学と明るい母音のMYなどを使用し、AW、OH、AHなどは避けます。
震える喉(Trembling throat)
時には、非常に頑固です。完全な自由とボーカルアクションのために交互に音声を使用して、呼吸に注意して、OOは有効です。NAH, HUNG, MING, MAN-NAM。
あごの下の筋肉を押し下げる(Pushing down muscles under chin)
OOで喉頭を解放し、HUNG、TE-ROO、MING、AH-Ā-EE、LAHの順に。あごの下に指を置いて、全般的に緊張を避けようとしなさい。最初はAW、OH、AHを避けなさい。
高い喉頭(Raised larynx)
EEを避けなさい。HUNG, NAH, MAH, MING, LAH のように、鼻音や口音の子音を持つすべての母音を保護します。2つのエクササイズの間にもOOを使用します。
口蓋が後ろに引き上げられ、口峡が広がる(Palate pulled up and back, fauces widened)
HUNG、NAH、MAH、MING、MY、またOOなどの鼻声の音声を使います。AW、OH、開いたAHは避け、HM、MUMMは有益です。
額のシワ(Wrinked forehead)
精神的肉体的な緊張と過大な負担の結果。緊張を見つけ出し、音声によってそれらを解放しなさい。これは、頭部で「音を高く設定」しようとすることから生じることが多い。喉頭の位置に特に注意しながら、響きを “均一化 “する。
鼻のシワ(Wrinkled nose)
同じく緊張からですが、”フォーカスを保証する”ためと教えられることもあります。
舌のコブ(Humped tongue)
最もありふれた欠陥。また、一般には歯から離れていることが多い。HUNG、 LAH、 HM、 MY、 EE、 OO、 AH-Ā-EE、 TE-ROO など、舌を前方に出すような音声を使う。AHとEEでは、”サイレント・アタック “や “ウイスパー “も使います。
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舌が下の歯から離れて巻き上げられ、ときには口の開口部をほとんど閉じている(Tongue curled up away from lower teeth, sometimes almost closing the mouth aperture)
サイレント・アタックかウイスパー・アタック、OO,RAH、TE-ROO、MY、HMを使う。Lを避けなさい。
下げられた低い喉頭(Lowered larynx)
ビッグトーンや「音の深いセッティング」は避け、EE、MY、ME、AH-Ā-EE、MING、LAH、そしてHUNGやNAHも数回使います。腹式呼吸を避ける。これは、悪い教えによって身についた場合、頑固な習慣となります。
甲状腺腫(センシュ)の肥大(Goiterous swelling)
喉頭位置を変えて、直ちに解放しなさい。暗い声AWとOHを避けなさい。HUNG、NAH、TE-ROOの後にOO、MING、MYを使う。口を閉じて鼻から静かに2、3回吸い込みなさい。また、HMを使いなさい。大きく歌ってはいけません。
アタックでの肋骨と胸部の下降(Falling ribs and chest on attack)
正しい呼吸と、アタックのためのサスペンションの実行。
突き出した腹部(Protruding abdomen)
呼吸法、また立った姿勢も変えなさい。
悪い姿勢(Poor standing position)片足を少し前に出し、背中に寄りかかったり、猫背や反りすぎにならないようにする。息を吸うときにはアピールのジェスチャーを使い(7図)、鎖骨呼吸は一旦避けます。
肩を上げたり丸めたりすること(Rasing or hunching of shoulders)
呼吸法の項で説明したように、腕を頭の上に置いて息を吸います。鎖骨呼吸を避け、一時的に低い呼吸を誇張して行います。(7図)
高過ぎるまたは堅過ぎる胸部(Too high or rigid chest)
上記のようなエクササイズで、横隔膜の動作を増やし,過度に肋骨を緊張させないようにする。肋骨での局所的な呼吸動作を避けなさい。
腹部の引き過ぎ(Too much drawing in of abdomen)
楽に息を吸い、肋骨に局在しないようにする。局所的に腹部を引き入れてはいけない。
口の不必要な動き(Needless disturbance of the mouth)
発音はより口の中で行うようにし、鏡の前で歌うようにして、”顔を作る “ことを避ける。
動きの悪い唇(Non-active lips)
反対の音声(phonetics)を使って、よりはっきりとした発音をする。子音を誇張して素早く発音する。
突き出したあご(Protruding jaw)
喉頭の緊張や正しくない吸気が原因であることが多い。呼吸法を変え、サスペンションを使って顎を解放し、HM、HUNG、OO、MUMMなど、喉頭と顎の緊張を避ける音声を使い、レッスンの一部で音の持続を避けます。反対の発音で、すべての声道を活発に使い、顎を非常に活発にします。局所的な「意思」では決してリラックスできません。
高音で頭を下げる(Bowing the head for high notes)
単にそれを避けなさい。それは愚かなことで何も達成しません。
レッスンや練習の途中で頻繁にLAHとAH(完全な音)に戻って、自分が何を達成したかを確認します。
すでに説明したように、これらの表は、「有効」と思われる直接的な提案にすぎません。しかし、もちろん、関係する法則や原理を理解している教師は、様々な音声を好きなだけ試すことができ、経験がそれらを最も効果的に使用する方法をさらに完璧に教えてくれるでしょう。局所的な誤りで、他の誤りとつながっていないもの、あるいは他の誤りを伴っていないものはありません。主要な局所的誤りを治すことによって、他の部分も改善されることが多くあります。そのためには、すべての発声器官を適切に連携させることが重要であり、他の発声器官を犠牲にして1つの発声器官を試すことはできません。
できる限り局所的な筋肉努力を避けつつ、何事にもいつも共通感覚を用いなさい。生徒に「リラックスしなさい」と言ってはいけません。なぜなら、生徒はそうすることができないし、たとえ一見そうしたとしても、正しい行動を取ることができないからです。歌手に、どこかで音を「考えろ」と言ってはいけません。すべての混乱させる言語を避け、よほどの心理学者でもない限り、心理学で遊んではいけません。生徒に「喉を開けろ」と言ってはいけません。なぜならば、そうすることで様々な緊張感が生まれ、正しい連携動作ができなくなってしまうからです。そして、表現力は技術に重要な影響を与えることを忘れてはいけません。また、正しい概念と想像力を刺激する必要があり、そのためには最初から模倣をする必要があります。ただし、あなたやあなたの声、あるいは他の歌手の声を模倣するのではありません。偉大なカルーソやエドゥアール・デ・レスケ、リリー・レーマンやノルディカなどの真似をしようとして、何人の声が破滅していったことでしょう。偉大な歌手にも欠点はあり、カルーソーの「gulp(息をのむ)」の音や「snuffler(吸気音)」の音は、多くのテノールを悩ませてきました。これは、彼にとっては呼吸のこつに過ぎず、ドラマチックな表現手段でもあり、時には、良くないときも上手くはまるときもあります。そして、偉大なEdouardも、彼の大音響の「開いた」音でで「どなる」ことができましたが、多くのバスは彼をまねて声を壊しました。そのため、他の人たちは、偉大なPlanconの柔和な暗い丸い音色を真似しようとして、声の鳴りや運声力が無くなり、音域は狭くなり、声は陰気で暗くなってしまいました。”ああ、この才能が与えてくれる力は、他の人が我々の声を聞くように我々自身の声を「聞く」ことができる。”
(太字強調は山本による。)
2021/04/01 訳:山本隆則