THE PHILOSOPHY OF SINGING
歌唱の哲学
Part 3
第4章
RHYTHMICAL BREATHING, AND ITS RELATION TO SINGING
リズミカルな呼吸と歌唱との関係
完全なリズムとは、完全な作用と反作用である。それは、サウンドにとってのハーモニーであり、フォルムにとってのシンメトリーやプロポーションなのです。
ハーバート・スペンサーもティンダルも、リズムがあらゆる運動形態に現れていることに同意しています。動きのないリズムはあり得ないし、自然法則によれば、リズムのない動きもあり得ません。したがって、完璧なリズムが運動に現れない場合、それは自然法則が対抗する力によって打ち破られているからにちがいありません。
リズムの維持こそが、私たちが運動において最も魅力的な特徴であると感じる安静を生み出すのです。私たちは運動の中に安らぎを感じますが、それは私たちが形の中に均整の安らぎを感じ、音の中にハーモニーの安らぎを感じるのと同じです。
リズムは完全な運動の自由を制限するものではありません;逆に、自由な運動の中にこそ、自然なリズムが現れるのです。また、リズムは常に運動の均一性を意味すると考えてはいけません。すべての動きは、互いに適切かつ釣り合った関係にあり、リズミカルです。
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完全なリズムは完全な作用と反作用であることはすでに述べました。しかし、完全であるためには、作用と反作用が同じである必要は決してありません、 自然には無限の資源があり、時間の不足をより大きな力や推進力で補うことができるからです。従って、作用は遅く、反作用は速いかもしれません;しかし、反作用の原動力が十分であれば、リズムは完全なものとなり、反作用の力は常に能動的な力から供給されます。
音楽における三拍子は、この事実を非常にシンプルに示しています。三拍子では、アクションを表す小節のアクセント記号は、リアクションを表す小節のアクセント記号の2倍の長さになり、したがってー
しかし、この不均等なリズムは、リズムの中に均等なリズムの要素を含んでいて、次のようになりますー
また、不等間隔のリズムの中に不等間隔のリズムを見出すこともできるます。このように-
以下は、不等間隔のリズムが等間隔のリズムの中に含まれる、さらに複合的な例ー
単純リズムと複合リズムの例をこれ以上挙げる必要はないでしょう、どんな音楽の入門書にも、あらゆる種類のリズムが載っているはずですから。
よく観察すれば、自然界にはこうした単純なリズムも複合的なリズムもすべて見られるし、考えうる限りの修正も可能です。
また、大きな機械の中にも、自然から切り離され、知的な人間によって恣意的に関連づけられた、表現された無限の多様なリズムを見出すことができます。
巨大な機械が動いているのを見て、単純なもの、複合的なもの、遅いもの、速いもの、規則的なもの、不規則なものなど、実にさまざまなリズムが、互いに完璧な関係を保ちながら調和していることに気づくのは、非常に興味深く、示唆に富んでいます。しかし、運動している機械を観察する際、私たちはそのどの部分も決して休まず、すべての部分が作用と反作用を構成する向きの交替や 反転を絶えず持続していることに注意しなければなりません。
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では、呼吸における完全な作用と反作用の法則、つまりリズミカルな呼吸を、どうやって歌に応用すればいいのか、という疑問が生じます。リズミカルな呼吸を歌に応用できるのは、意図的にリズミカルな呼吸に適応させた特定の練習だけだという反論があるかもしれませんが、長さの不揃いな任意の休みが発生し、必要なブレスや リアクションのための旋律的な休みがないまま複数の小節が連続することの多い歌曲では、リズミカルな呼吸は不可能です。しかし、これは呼吸の規則的な生理的リズムに関してのみ言えることで、広く言えばリズムには当てはまりません。生理的な呼吸の規則的なリズムは、もちろん楽曲を歌う上では問題外ですが、音楽のフレーズで表現されるアクションと息で表現されるリアクションの間には、必ず完全なリズム関係が保たれなければなりません。
メロディーの中に長い休みがあるときだけ、歌と呼吸の間の作用と反作用の相対的なリズムを止めることができます、そうなると、息を吸って吐くという生理的なリズムが一時的に復活し、そこで歌い手は自由になり、自然の法則と調和することになります。
まとめると、リズムなくして運動なしであるように、歌唱におけるリズムは、歌い手が自然法則に対するリアクションをやめることによって、あるいは受動性をポジションの固定に置き換えることによってしか妨げられることはなく、自然法則は休みではなくリアクションを必要とするのです。【訳注:歌唱に於けるリズムと自然法則によるリズムのちがいをのべていますが、実際に声を発している最中は、息は止められていると云うこと。】
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そしてここに、私たちの議論の核心、そしてその実践的な適用につながるポイントがあります。
歌い手が、楽曲の中で割り当てられた休みや、ハーフブレスと呼ばれる息を素早く盗み取る休譜みに対して、身体的に受け身でいる場合、時間の短さや 不規則な拍子にもかかわらず、十分なリアクションを得るためには、リズムという運動の自然法則が優先されます。しかし歌い手は、リアクションの代わりに呼吸スペースを休みとして利用することで、リズムを乱したり崩したりする可能性があります。したがって、この誤りから身を守り、過去におけるあらゆる固定的な姿勢を保とうとする習慣を克服し、自然な形で反発や反動を引き起こすために、可能な限りのことをする必要があります。というのも、休止みは運動の正当な反作用であるが、反作用の代わりに休止が運動の一部となることはありえないからです。それは必然的に運動を妨げるか、または不活発にせざるを得ません、 なぜなら、休止はリズム、つまり作用と反作用である運動固有の法則を打ち砕くからです、そしてそれは次に、力への固執という結果になるのです。
息を素早く吸わなければならないすべてのフレーズやパッセージにおいて、呼吸スペース、つまりリアクションのための休止は、音楽のリズムの一部になるはずです。歌手側のいかなる緩慢さや遅れも、音楽のリズムを乱すだけでなく、身体における作用と反作用の適切な順序をも乱すことになるでしょう。
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音楽のリズムを厳格に守ろうとする歌手の本能や 感覚は、反応筋への強い刺激となり、 緊張のしすぎの結果生じるこわばりや不本意さを克服するのに大きく役立つかもしれません。
音楽のリズムが呼吸のための休止譜がない旋律では、息が必要な小節または半小節の最後の音は、楽音と息の間で自然な要求に従って均等または不均等に分けられるように、気づかないほど短くしなければなりません。このようにー
何はともあれ、息継ぎに続く小節の最初の音は、正確に拍子に合わせ、完全にアクセントをつけなければならない、 なぜなら、息継ぎのためにリズムが崩れるところでは、その影響は最も面倒で不快なものであり、曲全体の動きやリズムが乱れてしまうからです。
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もちろん、楽曲の中には、リズムが意図的にブレイクされ、それによって美しいコントラストが生み出されるパッセージが数多く存在します。このような場面は、歌い手にとって、絶え間ないリズムの動きから解放される喜ばしい休みでもあります。しかし、そのようなパッセージの後、音楽のリズミカルなスイングが再開され、歌い手がそのスイングに乗り遅れたり失敗したりすると、ブレイクしたリズムのもたらす有益な効果は完全に損なわれてしまいます。
リズムのスイングを妨げることなく、息を取らなければならないパッセージで、筋肉が十分に素早く反応せず、息を取ることができないとよく反論されます。反応する筋肉が迅速かつ効果的にその役割を果たせるようにする目的で、ある種の練習をすることを私は推奨します。
私はまた、すべての発声練習を、息継ぎのための明確なスペースや反応のための休符を入れながら、厳格に時間内に歌うことを強く推奨します。それは、歌手のリズム感を養うのに大いに役立ち、その結果、精神的にも肉体的にも、彼を運動の自然法則と完全に調和させることができるからです。
以下の練習は、声を出さずに行うことで、呼吸の相対的なリズムを保つことを非常に容易にし、また、歌い手が速い息をキャッチするのを助けてくれます。
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歯を閉じたまま、常に鼻の穴から息を吸います。エクササイズを始める前に、深く、十分に息を吸い込みます。さい。
(声を出さずに、shutの時のようにshの音を出す)
2023/08/17 訳:山本隆則