質量とコンプライアンス(外力が加えられたときの物質の弾力性やたわみ強度)という属性を持つものは全て共鳴器となる。体積を持つ空気は、この両方の属性を持つ。空気はそれ程重たくなくても、少しでも重さがあれば、質量を持っている事になる。ということは、空気を圧縮することが出来るので、最初の体積を取り戻そうとする(そうでなければゴムのタイヤは意味を成さない)。これは、その少量の空気がコンプライアンスをもっていることを意味する。よって、声道内に閉じ込められた空気は、共鳴器(フィルター)として働く。
共鳴器の特徴は、音の周波数によって、ある条件のもと、音が共鳴器を通り抜けるのを許すと言うことである。ある周波数の音は非常にたやすく共鳴器を通過し、それにより共鳴器から非常に大きい振幅で伝播していく。これらの特別な共鳴器に最適な対応をしたとも言える伝送周波数は、共鳴周波数(resonance frequencies) と呼ぶ。或は、共鳴器が人間の声道である場合は、フォルマント周波数(formant frequencies)と呼ぶ。フォルマント周波数と異なる周波数をもつ音が共鳴器を通過する場合、音は伝送中に振幅を小さくし、共鳴器は音を滅衰(damp)させる。共鳴器は、ある周波数を共鳴させるとも言えるし、ある周波数に共鳴(声道の場合はフォルマント)をもっていると言うことも出来る。多くの共鳴器は、いくつかの周波数をもっている。声道は、低い方から4ないし5つのフォルマントが最も重要である。低い方から2つのフォルマントは、母音の音色の大部分を決定する。[Sundberg, 11-12]