[WE SANG BETTER  Vol. I  HOW WE SANG by JAMES ANDERSON]

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ATTACK
アタック(起声)

Aim to start a note exactly, and on time.
音符を正確に、オンタイムで始めることを目指しなさい。

昔の歌唱は、オンタイムであったことが非常に顕著な特徴です。

昔の歌い手がやろうと思えば、楽器のような正確さで音符の始まりを描き出すことができました。そして、短い音でも長い音でも同じように―同じ種類のトーンで、同じように安定した声で―聞こえました。昔の歌手は、音を正確にスタートさせ、それ以上何もしなくても、勝手に『スピン』するように任せていたような気がします。

声によっては、最初からこの性質を持っているものもあります。その他の声は、音域全体に行き渡るまで練習すれば大丈夫です。

それを実行する際、体を硬くしないようにすることが大切です。呼吸は楽な状態を保ち(前章参照)、喉も楽な状態を保ちます(7章参照!)。

音をうまく始める能力は、常に良い歌手の証でした。『アタック』という言葉は強すぎると思われるかもしれませんが、よく使われる言葉です。重要なのはその背景にある考え方で、思い通りのタイミングで、はっきりときれいに音を出すことができることです。

『アタック』するための精神的な要素は、身体的な要素と同じくらい重要かもしれません;歌い手の中には、それがより重要だと考える人もいます。

この段階では『レガート』を気にしすぎる必要はないでしょう。レガートは、音出しで身につけたこの技術によって、いつの間にか自然にできるようになります。

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47. メルバ-アタックの仕方
48. スマート&チャペル・ロイヤルの少年たち―アタックの仕方
49. ドリア-心的なアタックの仕方
50. ガリ-クルチ- 短い音も長い音も、同じようにアタックします; これには多くの努力が必要かもしれません
51. ラブラッシュ - 初期練習に最も適した母音、そして音の堅さ。
52.ラブラッシュ - すべての音を揺るぎなく
53. デュプレッツ- 練習の音の固さ(バイオリンのような感じ)
54. リーブス - ハミングなし
55. ナヴァ- たとえそれが弱い声の出だしでも『いい加減にして』はならない;そして、最終音も又、クリーンに切らなければならない
56. ビヨルリング - 完璧なアタックについて
57. ドリア - 最終的に、最も真実味のある音と感情は、準備なしの自然発生的なアタックから生まれるものです
58.ターナー - 歌手のアタックは『潜在意識的な力』から来る

 

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Tip 47

ネリー・メルバの声質のひとつに、クリーンでありながら引き締まったアタックがあることで有名でした。彼女は自ら次のように語っています、

(アタックは、)唐突な動きや息の漏れがあってはなりません。アタックは手際のよく、正確に音声上になければなりません。低くすぎる音で始めて、正しい音にズリ上げることは、許しがたい誤りです。良いアタックなくして、本当の歌はあり得ません。

これを実践するためにメルバの個人的なアドバイスがありす:

胸を張り、肩を落として直立し、肋骨を広げて[少し]息を吸い、同時に体の前面が広がるようにします。テンションは肋骨の筋肉にかけなければならないことを忘れないでください.(そして)音をアタックするときに意識して肋骨を安定させます…

アタックに気息音が混じることがあってはなりませんが、アタックの後まで肋骨が静止していればそのようなことはありません。

コメント
ここでは、少し身体的な観点から、役立つアドバイスを紹介します。この胸や肋骨の堅固さの開発は、歌の歴史に頻繁に登場します。これを身につけるには、肉体的に鍛える必要はなく、ここでメルバが言っているような歌の練習をすることで身につくものなのです。

彼女のアドバイスがすぐに役立つなら感謝し、時間がかかるなら根気よく続けましょう。時間がかかる場合は、無理に肉体的な面を強調しないこと、それは決してうまくいくとは思えないからです。音楽的で心地よい音を出す努力を続け、言われたことを『意識』することで、進歩がもたらされます。

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Tip 48

メルバと同じようなやり方が、1世紀以上前の本にも書かれていました。そして、これはロンドンのチャペル・ロイヤルで聖歌隊員たちが読んだものでした。私が見たことのあるコピーは、サー・ジョージ・スマートが同校の合唱団員だったときに所有していたもので、彼の手によって、ページの角のほとんどが、2インチほど紙が欠けているほどよく読み込まれています!

私は学生に、まるで遠く離れた人を呼ぶように息をとることを提案したい、
そして、口、喉、肺、胸を、声に強さと堅さを与えるような位置にする。しかし、歌うときには、この動作を保持しなければならず、若い初心者がよくやってしまいがちな、人がため息をつくときのように、すぐに力を抜いてはならない。
健康な体質では、この胸の位置はほとんど自然であり、容易に獲得することができるが、緊張感のない体質では獲得することが難しく、注意深く練習する必要がある。

ジョージ・スマートは、ロンドンでジェニー・リンドやヘンリエッタ・ソンタグなどの上級生に歌を教えましたが、彼の主な活動は、著名なキーボード奏者や指揮者としてのものでした。
彼はハイドンやロッシーニと共演し、ベートーヴェンを知っていて、ロンドンで合唱交響曲の初演を指揮しました。ウェーバーは彼のロンドンの家で亡くなりました。スマートは、ヘンデルがオラトリオを演奏する速度を、それを伝えられるだけの年齢の人から学ぶことに重きをおいていました。

コメント
この歌唱の本の著者は、上記のアドバイスが『経験からのアドバイスで、歌手に強いアイデアを与えることができなかったことはほとんどない』と述べています。

著者は、歌唱における肺や息の小さな役割について、賢明なコメントを加えています:

...肺は…空気を供給するが、歌唱にはそれ以外の役割はほとんどない。

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TIP 49

オールラウンドな音楽家であるクララ・ドリア Clara Doria は、『My Voice and I (私の声と私)』(1910年)の中でこう書いています。

…最も美しい音と最も完璧な息のコントロールは、全身の絶対的な静止の中で音を開始するときです。

硬直した静止ではなく、完璧な休息です。それは、ほんのわずかな時間ですが、爆発することも、声にならない息が漏れることもなく、音を出すのに十分な条件を整えてくれるのです。

コメント
昔の歌手には、この『静止(stillness)』という概念によく出くわします。例えば、ジェルメイン・ルビンのTip 31を覚えているでしょうか?ドリアにとって、その静止はまるで次に様でした

耳を澄まして遠くの音を聞いたり、息を殺して鳥や虫を観察したりするときに起こるもの。
まるで、身体の自然な脈動さえも一時的に停止したかのような集中力を発揮します。【後注 p.466】

そして、ドリアは、あなたの注意(あなたの意志)は、音そのものの美しさに完全に向けられ、あなたの身体には何の注意も払われないはずであると言います。


【後注 p.466】何かをする前に完全に静止すること、つまり無呼吸になることは、一部の科学者の興味を引くところである。イツァーク・ベントフの『野生の振り子を追え』によると、心臓と大動脈のシステムは、このような条件下では同調共鳴システムとなり、規則正しく振幅し(実際には1秒間に約7回)、維持するために必要なエネルギーは最小限である。


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TIP 50

アメリータ・ガリクルチは、一時期、当時最も有名なコロラトゥーラ・ソプラノとなり、おそらく1920年代には、当時最も有名な歌手になった。彼女の最初のレコード(『ラクメ』より「鐘の歌」、『魔笛』より「Ach, ich fuhl’s」)は、大ベストセラーとなった。1922年のインタビューで彼女は、短い音符は長い音符と同じ質でなければならず、どちらをアタックするにしても違いはない、という指摘をしています:

私の考えるコロラトゥーラの音は、決して身体的な不足がなく、持続的なパッセージで使われる音と同じ美しい質を持っているものです。

…純粋なアタックが絶対に必要なのです…単に高音にタッチできるだけでは不十分で、それを美しく、鮮やかに持続させなければなりません

例えばタマーニョのように芸に秀でた過去の偉大な歌手は、誰一人として音を滑らせたり『ずり上げる』ような歌い方はしませんでした。彼らのアタックは、常に純粋でした。そして、純粋なアタックは、集中的に練習することが必要です。音の置き方(tone-placing)、イントネーションをしっかり確認し、何も考えなくていいようにするのです。

コメント
ガリクルチは、練習中のあなたにもアドバイスをしていました:

…コロラトゥーラは、大きなホールで聴かれるような音を出すには、メッツァボーチェではなくフルボイスで練習する必要があります。

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TIP 51

ラブラッシュは、初期の練習に最適な母音について、このようにアドバイスしています:

声を形成し、均等にするためには、母音A(”far “の発音)を多く歌い、母音E(”fate “の英語のAのように発音する)を少し、ただし少し後に歌うことが必要である。

どうして英語で自信のあるアドバイスができるのかと疑問に思うかもしれませんが、彼はアイルランド人とのハーフであることを思い出してください!
彼は、『1つ1つの音を正しく形成し、その音を発すること 』を学ばなければならないと言いました。
そして、『確実に音を取ること』『それぞれの音が明確に聞こえるように、ブレることなくつなげること』と付け加えています。

コメント
このようなアドバイスは常にありました。
昔の歌手は、一音一音確実にアタックすることを強く求めていました。
音がパッセージになっている場合は、音から音への引きずりがなく、それぞれの音符がはっきりと聴こえるようにしなければなりません。

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TIP 52

ラブラッシュは声のゆれを嫌い、『ゆれる』ことがないようにと常に指示を与えていました。彼は繰り返して:

すべての音は、揺らぐことなく発せられるべきである。

また、ラブラッシュは断固として音をずり上げることを認めず:

多くの人は、ドを歌おうとするとき、まず下のラやシを歌い、必要な音まで声をずり上げる傾向がある。これは高音を取るときによく起こるが、注意深く避けなければならない欠陥である。

コメント
だから、すべての音は、しっかりと、揺らぎのないものでなければならない。
それらはクリーンに開始されなければなりません、 そして(前回のtipで学んだように)パッセージワークでは、はっきりと聞き取れなければなりません。
また、ラブラッシュはメルバと同様、音を『ずり上げる』ことを強く否定していることがわかります。
最近のオペラの現場では、このスラーリングが許容されるようになり、ラブラッシュの挙げた音程よりもはるかに大きな音程で演奏されることもあります(最近ではオクターブのすくい上げさえよくあります)。

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Tip 53

デュプレッツは、意外にも、初期研究のためにしっかりとした練習を積むことを信条としていました。
彼は1847年の『Treatise(論説) 』にこう書いています:

サウンド、つまりトーンは、ピュアで、フルで、スイートでなければなりません、 まずは、できるだけ均等に、そして常に最大限の声を出すことから始めるとよいでしょう。最大限の声とは、無理なく出せる範囲でのことです。

デュプレッツは、このことを、バイオリンの初歩的なレッスンで、生徒が弓の毛をすべて使うように指示されることになぞらえて説明しました:

私たちのプロトタイプであるヴァイオリンのことをもう一度思い出してみてください。この楽器の最初のレッスンが、私が主張することのすべてを裏付けているのではないでしょうか、 師は、私が声に求める声質を弦から引き出すために、弓の毛をすべて弦に強く当てるよう、初心者に教えています。

コメント
デュプレッツは、自分の声について有害な実験をしていた割には、それなりに注意深い教師であったことがわかります。彼は自分の弟子に、自分の娘とミオラン=カルヴァリョ夫人(Tip 2でカルヴェが言及)のような優れたソプラノ歌手を何人か持っていました。カヴァリョは、グノーのオペラでマルグリット、ジュリエット、ミレイユの役を創唱し、その『気品と完成度』は高く評価されました。

ところで、上記の音の説明の中に、『ピュア』『スイート』、そして『フル』という形容詞があることにお気づきでしょうか?そして、デュプレッツが声音を『無理なく(without forcing)』と言ったことにも注目してください。

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TIP 54

1847年、作曲家ベルリオーズは、ロンドンのドゥルリー・レーン劇場で行われた『ランメルムーアのルチア』の管弦楽指揮を担当することになりました。彼はある手紙の中でこう書いています:

マダム・グラとリーブスが出演する『ランメルムーアの花嫁』は、うまくいかないはずがないと私は思っています。リーブスは美しい自然な声の持ち主で、この恐ろしい英語で可能な限りの歌唱力を発揮しています。

オペラはうまくいったが、ベルリオーズが後にこう書いています

リーヴスは値千金の発見だ…本質的に際立った、共感できるキャラクターの魅力的な声を持っている…そして、アイルランドの人間として、国のすべての炎をもって演奏しているのだ。

(リーブスはイギリス人だった!)とにかく、リーブスは雄弁な力と共感的な繊細さの間で声を変化させ、観客を感動させることができました。リーブスは、更に、実際的な勉強に於いて、確固たる音声のためのより多くのアドバイスを与えました。彼は言こう言っています、

新しい曲を読むときや、定まった歌い方をしていないときは、いつでも声に緊張を与えなさい。ハミングしたり、ぼそぼそと声を出したりするのは間違いです。

このような不活発な習慣は、誤った音の伝達を誘発しがちです。声はいつも堅固に、調子を合わせましょう。

コメント
だからこそ、私たちは、意図的にしっかりとした練習をするようにと、さらに励まされるのです。また、ハミングで歌うことを学ぶことを避け、正しいイントネーションを目指すことにこだわっていることにも出会います。

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TIP 55

チャールス・サントレー卿は、ミラノの歌唱教授ガエタノ・ナヴァの弟子であり、ナヴァのテキストの一つを英語版として編集しました。本にはこの『attacare(アタックする)』という記述があり、ナヴァはイタリア語ですべての主要な音を開始するときによく使われる呼称だと言っています:

アタックする、あるいは音を出すには、状況に応じて次の2つの方法があります:

・Grazieで ― 流れるような、或は、優雅な方法で
・またはアクセントをつけて、多かれ少なかれ強く。

しかし、それは常に率直かつ正確に、そして初心者にありがちな唸り声を伴わずに行わなければならない。
休符が直後に続く音符を切り取る場合も、同様の注意が必要である。

コメント
つまり、ソフトなアタックであっても、『ごまかし』や『不鮮明』といったことがあってはならないのです。つまり、小さな音には、大きな音と同じように正確なアタックが求められるのです。

また、音を止める際に、余分な『耳障りなもの』がないことも確認します。音符の終わりで『うなり声』が出るのはよくあることなので、これも注意する必要があります。

反対側のページにあるナヴァのエクササイズを参照してください。

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【2つの合ったックのための譜表がありますが、下記の説明で理解できるのでカットしています。山本】

昔のアタックの教え方のひとつに、オフビートで歌わせるというものがありました(上記のような)。
これなら、準備がなくても、自然に時間通りに音符を始めることができるでしょう。
ここでは、ナヴァの主な教本から、まずバリトンとバス、次にソプラノとテナーの例を紹介します。
上のコピーにある鉛筆で書かれた昔の先生のコメント『それぞれの場合、胸に少しも打撃を与えることなく』(あるいはピクッと動くことなく)は、この本の前のレッスンでナヴァがアドバイスしたことをそのまま繰り返しています(イタリア語で『ed ogni caso senza dare al petto ia menoma scossa.』)。

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Tip 56

ユッシ・ビョルリングは、丸みを帯びた、しかし鳴り響くようなテノールの声を持っていました。
その共感性の高さは、世界中のリスナーに愛されました。ビョルリングは、トレーニングで学んだことの中で、最も重要なことの1つは

完璧なアタック

そして、そのためには4年間の勉強が必要だったということです。

ビョーリングはスコットランドのテナー、ジョセフ・ヒスロップ Joseph Hislop から学びました。アタックとは、音を確実に、きれいに始める能力を意味します。Hislopは、『支え』を教えませんでした。しかし、彼は『正確なスタートで、強い音色が必要だ』と強調しました。

コメント
また、ヒスロップとビヨリングは、音の出だしをやりすぎてはいけないと付け加えています。Tip51のラブラーシェの母音があれば、問題なく作業できます。あなたがより高くなるにつれて、おそらく、声帯の厚い使用よりもむしろ声帯の薄い(繊細な)使用について考えなさい。私たちの時代には、高音を探しやすくするために『thin(薄い)』という言葉が多用されました。

確かにビョーリングは、音の出だしを『スイートアタック』という言葉で表現していました。この「甘さ」の概念は、正しいアプローチを見つける手助けにもなります。

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Tip 57

クララ・ドリアは、『Philosophy of Singing (歌の哲学)』(1893年)の中で、歌い手が正しいアタックを身につけることを重要視しています。まず第一に、ドリアはこう言いました、

正しいトーン-アタックの効果は、ベルのような澄んだ音、自発性、絶対的で瞬間的なピッチの正確さ、そして大いなる弾力性としなやかさです。

ドリアは、単に音をきれいに出すことを評価したのではなく、アタックにはそれ以上のメリットがあるとしたのです。彼女は、声の筋肉を緩めておけば、音の出だしで、それ以上『すべきこと』がなくても音を維持できると確信していました。

下手に音をアタックしても、その後何も改善さ れません。

また、声を出すときに『意志』だけで始められる段階になれば、究極の歌唱力を手に入れることができると考えていました。なぜ? なぜなら、『音を発そうとする意志の衝動』をうまく利用できれば、そこには『自発的な発声』があり、『魂の感情の最高かつ真実の表現』があるからです。しかし、もしあなたの声が筋肉や機械的なプロセスの働きによって作動していたとしたら、それは『聴く人を感動させ、興奮させる力がない』ことになるのでしょう。ドリアはさらに、『筋肉を動かしたり、体のことを考えたりしてエネルギーを浪費するのではなく、音を出そうとする意志の衝動に全エネルギーを集中させるように』というヒントを与えてくれました。意志の衝動で、音は『正しく生命を吹き込まれる』のです。

コメント
これが昔の歌のあり方でした。それは、非常に参考になるアドバイスです。その周りには、他のアプローチも現れます。最近は、歌い始めてから音を『供給(feed)』したり、音に合わせてハミングしたり、音の後ろでハミングしたり、音を握ったり、音を『拘束(constrain)』してそのままにしたりする歌手もいます。ドリアの音は、一旦始めるとバリエーションがないと思われているのかもしれませんが、そのようななことはありません。他のセクションで説明するように、それを拡大したり縮小したり、感情的な色彩を帯びさせたりすることができます。しかし、そこには何の細工もなく、本当のあなたが見えてくるはずです。

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Tip 58

現代の歌の業界では、体が大きくなければ成功しないという神話があります。歌唱の歴史は、その逆をたびたび証明してきました!最も小さなサイズの体格から、最も偉大な声が生まれることもあるのです。エヴァ・ターナー Eva Turner 女史がその好例です。私は彼女を知っていましたが―彼女は小さかった。しかし、彼女は最も偉大なドラマティック・ヴォイスの持ち主の一人であり、ターナーに匹敵する威厳と毅然とした力を持つトゥーランドットは、これまでほとんど存在しなかったのです。1969年9月、彼女はBBCラジオで自分の芸術についてインタビューを受けました、そして、歌い手は楽器奏者に比べて難しい課題を抱えていると語りました。彼女は語りました、楽器奏者は、すでにバイオリンやピアノを手にしていますが、歌手は、

楽器を手にすることを学ばなければならない。

そしてターナーは、人間の声の音の出だしについて、興味深いことを言いました。彼女は次のように言っています。歌い手は、

自分の潜在意識から、声帯を動かさなければなりません。

コメント
つまり、『意志の衝動』(前回のTip)は、音を出すのに十分な曖昧な指示だと考えていたら、20世紀で最も劇的な歌手の一人から、『潜在意識』を使えと言われているのです!

歌をうまく歌えるようになると、自己の哲学的な習得ができるようになるような気がします。

 

2023/04/15 訳:山本隆則