[W. Shakespeare: The Art of Singing]

Placing the voice.
声のプレイシング* p.19


*シェイクスピアのplacingは、他の著者たちが使うplacementと若干違っています。一般的には、プレイスメントは音の置き所、例えばフースラーが言うアン・ザッツやマスクと言われる前頭部の振動感覚などですが、シェイクスピアは発声器官や筋肉の配置のことを言っています。その配置が上手くいったときに声の響きが適切な場所でよく響くという意味では一般的なプレイシングと一致します。
つまり、プレイシングは結果的にどこそこが良く響いた感じがするですが、それに対してシェイクスピアはどのようにすればその結果が得られるかという原因について様々な注意を喚起しています。


 

どんな音でも、充実した純度の高い音を出すためには、喉頭を息の上に置いてバランスをとり、適切な位置に保持することが必要です。

学生は、これから扱うポイントに細心の注意を払うことが求められます。 それは、声のプレイシングの技術がそれに依存しているからです。
我々が指でさわるのどぼとけ(図6のA)の外側のシールドは、喉ぼとけのすぐ上の舌根部にある三日月形の骨(B)に筋肉で取り付けられており、下では胸骨(C)とつながっています。この外側のシールドは、適切な筋肉の上下方向への複合的な作用によって安定させなければならないとされています。これにより、音階の高い音を出すときに、隣接するチューニング筋がより強力に収縮することができます。このことから、舌骨はわずかな重要性しか持たず、何らかのサポートが必要であると考えられます。この骨から顎の両側の下面に伸びる強力な筋肉(D)と、顎の両側に伸びる筋肉(F)があり、さらにEとCをつなぐ筋肉もあります(図7参照)。これらが一緒になって、口の中の床を形成します。また、いくつかの筋肉が舌骨から口の奥の頭蓋骨へとつながっています(図6)。
また、AとCを結ぶ筋肉(Fig.6)が声帯を胸骨に向かって下降させると同時に、これらの筋肉は、喉頭が取り付けられている舌骨を上方向だけでなく、前後方向にも引っ張って支えます。

図.6 舌骨に連結する筋肉

このようにして喉頭を安定させ、高音を出すためにチューニング筋が強く収縮してもズレを防ぐことができる。

しかし、それらの実際の機能が何であれ、第一に、胸の音域で音階を上に向かって歌いながら、顎の下の口の底を手で調べると、この場所では、上に向かって歌えば歌うほど、幅広い筋肉の収縮が感じられることを、第二に、中声部では、音が上がるにつれて、それほど広くはないが、依然として活発な緊張が伴うことを、第三に、いわゆる頭声を上に向かって歌うときには、わずかな収縮しか感じられないが、それは喉頭と顎の先端の間にある繊細な筋肉の収縮であることを誰もが認識しないわけにはいきません。。同様に、胸骨のすぐ上の筋肉を調べれば、それに対応する下方への引っ張りが見られます。

このように、レジスターはそれぞれ異なる筋肉配置によって影響を受けているように思える。後者の筋肉は相互に作用することで、高音、低音、フォルテ、ピアノのいずれの音にも必要な正確な位置に喉頭をバランスよく配置します。 同時に、内部の筋肉は、すでに言及したように、振動する声帯の長さと幅に無限かつ著しい変化をもたらします。プレイシング、チューニング、レジスター変更などのコントロールは無意識に行なわれなければならない。

もちろん、音を出すときにどこかの筋肉が硬く縮んでいると、プレイシングのバランスもチューニングの筋肉の自由度も損なわれてしまいます。しかし、正しい音作りの証拠は、意図した音程で音が完全に始まったときに得られます。

図7. 舌の筋肉

喉頭を胸骨に向かって引き下げる筋肉の働きは、舌から離れていて関係がないため、学生にとっては何の問題もありませんが、喉頭を上向きに支える筋肉が関係してくると困難が生じます。

 

2022/01/28 訳:山本隆則