音のカヴァリング(X線画像で明らかにされた)
[Vocal Art-Science and its Application by Frank E. Miller 1917  付録249ページ]

Dr.R. Schilling は言った。
M・ガルシアは、喉頭蓋の特定の位置によって、声の音質または鳴り(メタリックな音,clang)に特定の違いがあり、「カヴァリング」と呼ばれるものを生成することを発見した-喉頭蓋が起こされると、音は不鮮明になり抑制される; 喉頭蓋が降ろされるとき、音が輝かしくなる。

シリング博士の著書「The Mechanism of Covering The Tone」(1911)で、「カバリング」効果を生成する際に、喉頭蓋の降下理論が正しくないということを証明したと、彼は主張する。
彼は、5人の声楽家を使って実験した。
彼は、母音AhとAwを使って、喉頭蓋のリフティングが絶えず全ての声区、特に中声区、にあることを発見した。他の母音では、結果ははっきりしなかった。
彼は、「カヴァリング」は美学的かつ教育学的見地から考えられなければならないと確信した。
ほとんど訓練されていない人の、あるポイントから上のカバーされてない音声は、品のある音質が不足して、平べったく悪趣味な金属音を示すことになるだろう….
鳴り(clang)についての、Gutzmannによる詳しい説明がある、それは、カバーされた音によって、倍音の強さに関係する一定の違いが存在することを明らかにした; カバーされた音と基音との強さの関係;カバーされてない音と倍音との強さの関係。
また、更なる成果は母音とカヴァリングの関係を示す; ある音から始められたほとんどの母音は音がカバーされる時にそれらの母音性を保持する。
さらに、披裂軟骨は、開いた音色からカバーされた音色への転換で、後方に持ち上げられる、したがって、声帯は狭くされて縦方向に長く引き延ばされるように見える。仮声帯はカバーされた音色で少し外へ動くので、真声帯は、カバーされたものよりも開いた音で、やや幅が狭く見える。
喉頭鏡と内視鏡は不十分で不満足な結果を与えた…
(注意。「閉ざされたclosed」、そして、「開いたopen」は、2つの異なる母音の声質を指す;一方「カヴァーされた」「カバーされてない」は、全く同一の母音(開いた母音でも閉じた母音でも作ることができる)の鳴りまたは音色の違いを指す。)
シリングによって確保された透視図(X線画像)は、喉頭の空間(つまり、声門から上に咽頭口腔の空間までのフル・スペース)で明確な変化を示す;、そして、それは2つの部屋に分割される:前方は、喉頭蓋とその前の空間;後方は、喉頭蓋から咽頭後壁までの距離で計測される。この全体の空間(喉頭鏡検査が非常に困難な)は、バース、グルンマッハとシャイアーによって特別な調査がなされた;そして、この空間が、声区、ピッチと音の強さによって、そして、母音によって変化することが判明した。彼らが見つけたすべてのケースにおいて、空間は「あ」(Ah)で最も小さくて、英語の「い」(EE)で最も大きかった。母音A(ああ)で、喉頭の空間は、カバーされた音色で大きくされ、喉頭蓋は直立する。舌の底面の辺縁ラインは、カヴァリングで、より湾曲した曲線をつくる。その湾曲は、特に舌の付け根の場所で、舌-喉頭蓋空間まで続く。(太字強調:山本)

喉頭は一般に、カバーされた音色でより深くなる。この低下において、もちろん、舌骨は、下に、そして、少し前方へ動く。検査された3つのケースで、硬口蓋から舌骨本体の垂直の距離は、カバーされてない音のときよりおよそ1センチメートル長かった。口の底の線は、カヴァリングで、いつも少し降ろされる…軟口蓋は、カバーされてない音色でより、カヴァリングで高くて上げられる。そして、そのへりは上に鼻咽頭の中に伸びる…
他の母音たちに関して、実際のところ、喉頭の空間は、Ahと比べて広いことがわかる。従って、これらの他の母音たちでのこの空間幅の差異は実際に少なくなるだろう…喉頭の下降はAhとAwで最も強く現れ;他の母音ではより少ない;、そして、Uウムラウトでは全く現れない。
画像の中で確認される所では、軟口蓋はカヴァリングで明らかに上昇する…全体的に上顎の開きに、多くの差異は見つけられなかった。
閉ざされたEE、OとOO(U)では、カヴァリングで少し広くなった…唇の開き(垂直の径線で)は、カバーされた音色で常にややより小さい;唇は(水平の径線で)より突き出されている…差異(カバーされてない音色と比較される)は、特に閉ざされたEE(ドイツ語IE)で明白である。
従って、彼は断言する、より広い喉頭スペースと、直立した喉頭蓋を持つ母音は、カヴァリングでの喉頭空間の変化は比較的小さい。
それにもかかわらず、著者は、鳴りに関して、最も強力なカバリングの差異を保つそれらの母音によって最も強力に現れるとき、喉頭空間の拡張が、カバリング・ポジションの特徴であると、信ずる…
喉頭の空間領域のカバリング調整において、3つの主要な変化が関与する:(a)喉頭の下降、(b)喉頭蓋の直立、(c)舌-喉頭蓋空間の拡大。普通、喉頭空間は、垂直と水平の方向の両方に拡張される…舌骨と共に甲状軟骨は下に動くが、常に同じ程度に動くわけではない…
カヴァリングでの喉頭蓋の動作が、隣接する器官の移動によって生じる純粋に受動的なものか、あるいは、それらが能動的に動くかについて確かめることが重要である。
舌骨からの甲状軟骨の移動と他の張力作用がそれに影響していないとき、甲状-喉頭蓋靭帯と舌骨-甲状筋の、結果的に起こる緊張によって、喉頭蓋が受動的に直立すると、バースは言う…つまり、それらが広く離れるならば、喉頭蓋はまっすぐに直立する;それらが接近するならば、喉頭蓋は傾く…
透視図によって示されるように、カヴァリングでの現象は、生まれつきによって、一部は歌手の練習によって、部分的に生成される単一の連係動作の総計に基づいている、そしてその後で、彼によって総合的な連携作用の目的のために結合される。
カヴァーされた音は…単純な音では暗く、高い音では常により明るい…リーバーマンは述べる:仮説は次の通りである、鳴りの「明るさ」(Helligkeit)は、部分音の明るさによって決定され、各々の部分音が、全体の明るさに対して、その強度を調和させることによって貢献する。このことから、カヴァーされた音がカバーされてないものより暗く聞こえなければならないことになる。今や、ただ鳴りの各々の部分的な音がその明るさを持つと同時に、その母音性も持つ、そして、「全体の鳴りの母音性はさらにまた部分的な強度によって決定される;これは鳴りが、構成要素と、またその母音性に於ける変更によって変化する理由を説明する」。
Pielkeは、声の高いピッチでは、ほとんどの母音がカバーされた音色で正しく生成されることができると主張する。続いて、彼は言う、音階がカヴァーされずに上方向へ歌われるならば、あらゆる母音は変化を受ける(ある限界から)。
シリングの実験(X線で)は異なる結果を提供したので、彼は、Pielkeの主張の変更を主張する:声の性質は、カバーされてないものより、カバーされた音色で保持するのがより楽である。