Respiratory Function in Singing
chapter 3
adjustments
調整
INTRODUCTION
導入
呼吸器は、多くの調整ができる。これらの調整は、肺組織と胸壁の動作から生じる。
図3-1は、呼吸器の調整に関与する受動的および能動的力をまとめている。これらは、肺組織、胸壁、胸郭壁、横隔膜、腹壁、そして、肺-胸壁ユニットの力を含む。図3-1の負と正のしるしは、力が、呼吸器官を吸う(-)、あるいは、吐く(+)方向に進むかどうかを示す。
図3-1。呼吸の受動的および能動的力。
Pulmonary Apparatus: 肺器官
Chest Wall:胸壁
Rib Cage Wall:胸郭壁
Diphragm:横隔膜
Abdominal Wall:腹壁
Pulmonary-Chest Wall Unit:肺-胸壁ユニット
肺組織
(PULMONARY APPARATUS)
肺組織は、受動的な力だけを発生させる。それは、常により小さいサイズへ縮もうとする。したがって、それは常に呼吸器を吐き出そうとする。
胸壁
(CHEST WALL)
胸壁は、受動的および能動的な力の両方を生み出すことができる。それは受動的に大きな胸壁サイズのとき内側に向かって反動しようとする(呼吸器を吐き出そうとする)そして、小さな胸壁サイズのときは外向きに反動しようとする(呼吸器を吸い込もうとする)。
呼吸器を吸い込む、又は、吐き出すための能動的な力は、胸壁の筋肉によって生み出される。胸郭壁と横隔膜の筋肉は器官を吸い込むことができる、そして、胸郭壁と腹壁の筋肉は器官を吐き出すことができる。能動的な力を生み出す能力は、胸壁のサイズに依存する。器官を吸うのに役立つ力は、小さな胸壁サイズのときに強く、器官を吐くのに役立つ力は大きな胸壁サイズのときに強い。
胸郭壁
Rib cage Wall
胸郭壁は、受動的および能動的力の両方を生み出すことができる。それは、大きな胸郭壁サイズで呼気方向へ、そして、小さい胸郭壁サイズで吸気方向へ反動する。
胸郭壁の筋肉は、吸気と呼気の方向に能動的な力を生みだすことができる。吸気力をもたらす筋肉は胸郭壁の表層(表面に近い)にある、ところが、呼気力をもたらす筋肉は壁の深層(表面のだいぶ下)にある。能動的力を生み出す胸郭壁の能力は、そのサイズに依存する。大きな吸気力は小さな胸郭壁サイズで生み出すことができる、そして、より大きな呼気力は大きな胸郭壁サイズで生み出すことができる。
胸郭壁は拡大または圧縮ができる。その静止点は、それがとることができるサイズの値域の中間に近い、そのため、拡大のためのその潜在性は、圧縮のためのその潜在性とほぼ同じである。胸壁における最小の筋肉は、胸郭壁にある。これは、胸郭壁が速い動きと正確なコントロールにより恵まれていることを意味する。
横隔膜
横隔膜は、受動的および能動的な力の両方を生み出すことができる。例えば、少ない肺気量のときに起こるように、横隔膜がよりドーム状になる時、それは吸気方向に反動しようとする。これは、横隔膜が受動的な伸縮性のもとにあるからである。例えば、大きな肺気量のときに起こるように、横隔膜が比較的平らなとき、それは受動的な力を及ぼすことはない。
横隔膜は、吸気方向だけに能動的な力を生み出すことができる。ドーム状の構造がより高いほど、その筋線維はより長く、発揮することのできる力はより強い。横隔膜は、呼吸筋の中で最も強い。
腹壁
腹壁は、受動的および能動的な力の両方を発揮することができる。大きな腹壁サイズで、構造は呼気方向に反動する、そして、小さい腹壁サイズで、それは吸気方向に反動する。
腹壁は、能動的な力を生み出すことができるのは呼気の方向のみである。より大きな呼気の力は、小さな腹壁サイズでよりも、大きな腹壁サイズで生み出すことができる。
腹壁は、それ自体を内側へ動かすことができる(それ自体を外側に動かすことはできない)。腹壁の諸筋肉は非常に強くて、特に姿勢の支えを呼吸器に与えることによく適している。
肺-胸壁ユニット
PULMONARY-CHEST WALL UNIT
肺胸壁ユニットの部分間の配置は、呼吸器をいかに調節することができるかについて重要な役割を演ずる。これらの配置のいくつかは、器官のある部分が他の部分に修正をもたらすことを可能にする。
胸郭壁は、横隔膜と腹壁の調整を導き出すだろう。例えば、胸郭壁が広がるとき、胸郭壁への横隔膜の挿入位置は上・外へ動く。同時に、胸郭壁拡張は、胸膜と腹部の圧力を減少させる。腹腔内圧の減少は、腹壁が内部へ引かれる要因になる。対照的に 、 胸郭壁が圧縮するとき、胸郭壁への横隔膜の挿入位置は下・中へ動く。胸膜及び腹部の圧力は増加する。そして、横隔膜を平らにして、腹壁が外へ押しつけられる。
<生命は浜辺である>
胸郭壁の拡大は、液体がストローで吸い上げられるように、腹壁を中に引く。これは、「それを吸い込みなさい」と言うフレーズは、腹壁がその普通の位置から文字通り中へ吸われることから由来する。胸郭壁を拡大することによって腹壁を中へ引くことは、海水浴での万国共通の気晴しである。これは、人々が彼ら自身がより内胚葉型(肥満)ではなくて、より中胚葉型(筋骨たくましい)に見えるようにするために行うことである。それが彼らが実際より肉体的に良い姿に見せるので、太りすぎの人々は特にこの補正が好きである。私も十分にこの補正を知っています。
横隔膜は、胸郭壁と腹壁に調整を加えることができる。横隔膜が収縮するとき、それは腱中心と下部の6本の肋骨に引っぱる力を配置する。それらの相対的な固定に応じて、腱中心は下に引かれ、および/または、肋骨は上へ引かれるだろう 。たとえば ― 胸郭壁が適切な位置につくならば、横隔膜は下に動いて、腹壁を外へ動かす。対照的な例として ― 腹壁が適切な位置に定まるならば、横隔膜は上へ動いて、胸郭壁を上に動かす。通常、胸郭壁も腹壁も、堅く固定されない。このように、通常、横隔膜のある程度の硬さによる動きの幅によって横隔膜が収縮するとき、胸郭壁と腹壁は動く 。
腹壁は、胸郭壁と横隔膜の調整をすることができる。腹壁の筋肉が収縮し、腹壁を中へ動かすとき、腹腔内容物は横隔膜を上へ押しつけて、その曲率半径を増やす。この動きも、腹腔内圧を上げる。横隔膜の上への動きは、下の肋骨に挿入する 横隔膜の筋線維を通して胸郭壁に加えられる持ち上げる力を生じさせる。同時に、腹腔内圧の増加は、下の胸郭壁を外へ押す。横隔膜による上への引きと、腹腔内圧によって外への押し出しの組合せは、胸郭壁を持ち上げる。この調整、腹壁の引き、を観察して、胸郭が受動的に拡大する点に注意すること。
<死人は、嘘をつかない>
胸郭壁は、腹壁の働きにより受動的に上昇させることができます。つまり、胸郭壁がまったく何もしなくても、胸郭壁を上昇させることは可能なのです。本文で述べたように、腹壁を内側に動かすと胸郭壁が持ち上がる。腹壁の筋肉を意識的に収縮させて腹壁を内側に引いたり、手で腹壁を内側に押し込んだりすると、このように動きます。実は、生きていなくても使えるんです。死体の腹壁を押すと、腹圧が上がるので胸郭の壁が隆起せざるを得なくなる。すべてにおいて不思議なことはありません。純粋に機械的なものです。死んだ男は嘘をつかない。死んだ女もそうです。
呼吸器の調整は、しばしば一見単純に見える。このため、呼吸器をそれらが観察される器官の部分でしかないとする傾向がある。しかし ― ここの議論に示唆されるように、あらゆる調整に対する原因となる動きを決定しようとするとき、考慮されなければならない呼吸器と別の部分の間に、有意な相互影響がある。
復習 (REVIEW)
呼吸器は多くの調整ができる。そして、それは肺組織と胸壁の受動的および能動的力に起因する。
肺組織は受動的な力だけを生み出して、常に呼吸器を吐き出す傾向がある。
胸壁(chest wall )は、受動的及び能動的に調整に関与することができて、呼吸器を吸い込み、そして、吐き出そうとする力によってそれを行う。
胸郭壁(rib cage wall )は、受動的及び能動的に調整に関与することができて、呼吸器を吸い込み、そして、吐き出そうとする力によってそれを行う。
横隔膜は、受動的及び能動的に調整に関与することができて、呼吸器を吸い込もうとする力によってそれを行う。
腹壁は受動的及び能動的に調整に関与することができて、受動的に呼吸器を吸ったり、吐いたりする力、或いは、能動的に呼吸器を吐こうとする力でそれを行う。
肺-胸壁ユニットは、胸郭壁、横隔膜と腹壁が、受動的に動くそれらの相手の構成部分が与える別々の動きを取ることができるように配置される。
肺-胸壁ユニットの部分間の配置は、呼吸器のあらゆる調整の原因となる動きを決定しようとするとき、いかに呼吸器の動きを明示し、考慮しなければならないかについて、重要な役割を演ずる。
2019/02/06 訳:山本隆則