Respiratory Function in Singing

chapter 4
vatiable
可変部分

INTRODUCTION
導入

呼吸は、変化を制御変数(control variables)に関係させる。そのような3つの制御変数は、歌唱にとって重要である。それらは、ボリューム、圧力と形である。【訳注:制御変数は、テスト中の他の変数間の関係をよりよく理解するために、テスト中に変更されない要素のこと】


VOLUME

容量

ボリュームとは、立体物またはスペースのサイズである。ここでの関心事である容量は、呼吸器によって移動させられる(動かされる)空気量である。この容量は、呼吸器の動きが肺気量に依存するので重要である。

呼吸器によって移動する空気の範囲を定める表記法がある。これらは図4-1で示され説明される。

4つの肺気量がある。各々は、互いに他とは相容れない。

一回換気量(tidal volume (TV) )は、一呼吸の間に吸われる或いは吐かれる空気量である。安静時の一回で測られるとき、それは安静時一回換気量(resting tidal volume)と呼ばれる。
予備吸気量(inspiratory reserve volume(IRV))は、換気吸気‐終末レベル(tidal end-inspiratory level)(一回換気量サイクルのピーク)から吸い込むことができる空気の最大量である。

図4-1. 肺気量(Lung volumes)肺気容量(lung capacities)
【訳注:日本では肺気量分画を表す際にvolumeとcapacityを区別しないで
「気量」としている、Hixon, Zemlinなどは、これら2つを区別している。】

 

 

予備呼気量(expiratory reserve volume(ERV))は、一回換気呼気-終末レベル(tidal end-expiratory level)(一回換気量サイクルの谷)から吐くことができる空気の最大量である。

残気量(residual volume(RV))は、最大呼気の終了後の肺器官の中の空気量である。

4つの肺気容量(lung capacitiesがある。各々は、4つの肺気量(Lung volumesの2つ以上を含む。
最大吸気量(Inspiratory capacity (IC))は、静止一回換気呼気‐終末レベルから吸い込むことができる最大量の空気である。この容量は、一回換気量と予備吸気量を含む。

肺活量(vital capacity (VC))は、最大吸気の後に続く、吐くことができる空気の最大量である。この容量は、残気量(residual volume)以外の肺気量(lung volumes)の全てを含む。(チェック済)
機能的残気量(functional residual capacity (FRC))は、静止一回換気呼気‐終末レベルで肺器官に残っている空気量である。それは、予備呼気量(ERV)と残気量(RV)を含む。

全肺気量(TLC)は、最大吸気終了後の肺器官の空気量である。それは、全4つの肺気量を含む。


<あなたの声区はどこですか?>
声区分離は、音階を歌うとき、上行と下降ではよく音階の違う場所で起こる。これはなぜでしょうか? フルブレスをしてから、音階を上行して歌うとき、声区の境に接近するにつれて肺には少しの空気しかなくなる。そして、フルブレスをしてから、下降音階を歌うとき、同じ声区の境に接近するにつれて肺には大量の空気がある。あなたの肺の空気量は、呼吸器における共鳴の場所とフォームに影響を与え、これらの共鳴は、声帯の振動モードに影響を与える可能性がある。それで、声区分離が、その時々に音階の異なる場所で起こる。あなたの肺気量は、あなたの声区の場所について発言権を持っている。


PRESSURE
圧力

圧力は、一区域に掛かる力である。ここでの圧力の関心は肺の圧力であり、肺胞内圧(alveolar pressure)と呼ばれている。肺胞圧は、この圧力が、呼吸器を操作するすべての受動的および能動的力の合計となるので重要である。

肺胞内圧は、肺の内部の空気分子が、互いにぶつかるとき、そして、取り囲んでいる組織とぶつかるときに発生する。呼吸器の動きは、これらの分子をより粗密(低い肺胞圧になる)にするか、より過密(より高い肺胞圧になる)にすることができる。これらの動きは、肺気量(肺器官に含まれる空気)を膨張させるか圧縮させるかの呼吸器の動きとなる。肺気量と肺胞内圧は反比例の関係にあるので、片方が上がると他方が下がる(空気が漏れることがない限り)。

 

図4-2 圧―容量曲線図

図4-2に示されているような容量-圧力図で圧力を表示することは有益である。このような図は、受動的および能動的力をお互いに、そして、肺気量のレベルに関連づけることで分析的価値がある。図4-2の図は、垂直軸で肺の中の空気量(肺活量のパーセンテージ(%VC))、そして、水平軸で肺胞内圧(水のセンチメートル(cmH2O)【訳注:小さな圧力に対する単位で、例えば、水を入れたコップにストローを3センチの深さまで入れ、ストローから息を吐いて最初に息がストローの先から出るときの圧力、この場合3cmH2Oとなり、声帯振動を維持するために必要な最小値とされ、大声での発話や歌唱では15~20cmH2Oの圧が必要とされる】)を表す。固定された水平線は、呼吸器の静止呼気‐終末レベルを表す。固定された垂直線は、大気圧(ゼロ)を意味する。この線の左または右への点は、それぞれ大気圧の下(マイナスの)の、または、大気圧の上(プラスの)の圧力を表す。3本のカーブが、図に示される。これらは、以下の状況の下で容量-圧関係を示す:(a)弛緩;(b)最大吸気;、そして、(c)最大呼気。

弛緩圧(relaxation pressure)は、呼吸器の受動的な力によって発生する圧力である。図4-2の弛緩圧カーブ【訳注:真ん中の曲線】は、呼吸筋が弛緩するときに圧力が肺器官の中に発生することを表す。この圧力は、肺器官が、静止一回換気呼気‐終末レベル(resting tidal end-expiratory level)からどれぐらい膨らむか、しぼむかによる大きさによって変化する。静止レベル(resting level,)より大きい肺気量で 、 弛緩圧は陽圧を発生させる。この圧力は、肺が全肺容量(total lung capacity)から静止レベル(resting level)まで空気を抜かれるにつれて減少する。静止一回換気呼気‐終末レベルより少ない肺気量(lung volumes)での弛緩圧は陰圧を発生する。この圧力は、肺が残気量(residual volume )から静止レベルまで膨らむにつれて増加する(よりマイナスにならない)。肺活量(vital capacity)の両極端(図の中で線がより水平になるところ)で、圧力はより急に変わる。これは、肺器官は、大きな肺気量で固くなり、胸壁は、少ない肺気量で固くなるからである。

筋肉の努力は、弛緩圧以外の圧力を発生させることを要求される。最終的な吸気筋の圧力(A net inspiratory muscular pressure)は、弛緩圧より低い圧力を発生させることを要求される 。対照的に、最終的な呼気筋の圧力は、弛緩圧より高い圧力を発生させることを要求される。最終的な(net)とは、適用される圧力は、 単に吸気や呼気の努力だけから、または、どちらか一方が優位を占める努力のいくつかの組合せの結果であることから具体化される。圧力が弛緩圧に等しいとき、筋肉の全てがリラックスしていることになる。しかし、弛緩圧と等しい圧力を、吸気筋と呼気筋の圧力を同等かつ反対側に用いることによって発生させることもできる。

図4-2の最大吸気カーブ【訳注:左側のカーブ】は、圧力が最大の吸気筋肉の努力によって高められることを表す。カーブは、各々の肺気量での筋肉の努力の働きを向上させる、最も大きな陰圧の肺胞内圧を示す。最大の吸気努力を通じて発達した陰圧は、肺が残気量から全肺気容量まで膨らむ時、減少(より負にならない)する。より大きな陰圧は、呼吸器が、少ない容量でより大きな力で外へ反動する(吸気方向)ので、そして、吸息筋が力を発生させるのにより好都合な長さなので、より少ない肺気量で生み出すことができる。

図4-2の最大呼気カーブは、圧力が最大呼気の筋肉の努力において高められることを表す。最大呼気カーブは、各々の肺気量における筋肉努力を使って訓練されることができる、最大のプラスの肺胞内圧を明らかにする。最大呼気圧は、肺が全肺気容量から残気量まで空気を抜かれるにつれて減少する。大きな陽圧は、より大きい肺気量で発生する。それは、呼吸器がより大きい肺気量による大きな力で中に反動(息を吐く方向)するため、そして、呼気筋が力を発生させるためにより最適の長さまで引き伸ばされるためである。


<Me Tarzan>
吸気と呼気の筋肉は、どれくらい強いか?その答えは図4-2に見出すことができる。しっかりとそこのカーブを見なさい。弛緩圧は、静止換気呼気‐終末レベル(垂直軸上の40%VC)がゼロであることに注意しなさい。そのレベルで、それぞれ吸気筋と呼気筋によって得られる最大吸気と最大呼気のカーブは、最大筋肉圧を表す。最大吸気圧力は、 およそ-110cmH2Oであることが分かる、ところが、最大呼気圧力はおよそ 170cmH2Oであることが分かる。明らかに、呼気筋は吸気筋よりかなり強い。これは、あなたが吸うことより、ずっとしっかりと吹くことができることを意味する。


SHAPE

形は、物またはスペースの輪郭形状である。当面の脈絡における重要な形は、胸壁のそれである。胸壁の形は、胸郭壁、横隔膜と腹壁の位置づけから得られる。形が重要なのは、胸壁の異なる部分の効果的な機械的な利点を決定するためである。

胸壁の形は、変えることができる、そして、胸郭壁と腹壁によってとられる配置によってのみ制限される。形を特徴づける従来の約束事は、胸郭壁と腹壁の相対的な前後経(前部から背部へ)についてのものである 。そのような直径は胸壁の形をとるのは、胸郭壁と腹壁各々が、通常単一の自由度でそれらの動きに対して作用するからである。

図4-3は、胸壁の形を描写する従来の方法を例示する。そこでは、胸郭壁と腹壁の相対的な直径の線図が示される。胸郭壁の直径は垂直軸に表示され、上に向かって増加している、そして、腹壁の直径は水平軸に表示され、右にに向かって増加する。
図4-3 相対的な直径図。

 

図の中の楕円区域は、胸壁によってとることができるあらゆる可能な形を表す。この区域は直径の端近辺でより小さい、そこでは、胸郭壁と腹壁のサイズは非常に大きいかまたは非常に小さいかである。あり得る形の区域は直径の範囲中央で最も大きい、そこでは胸郭壁と腹壁のサイズは中程度である。図の中の各々の点は、胸壁の形とサイズについての独特の組合せを表す。そして、どんな系列の点(経路)でも、胸壁の形そして/又はサイズの変化の経過を明らかにする。

相対的な直径図の中の点線は、胸壁の弛緩指標を示す。それは、呼吸筋が弛緩するとき、異なるサイズ(肺気量)に応じて胸壁によってとられる形を示す。弛緩指標の2つの端のサークルは、全肺気容量(total lung capacity)と残気量(residual volume)を表す。指標の中央の近くの黒い円は、静止一回換気呼気‐終末レベル(機能的残気量)で、弛緩した胸壁の形を表す。

弛緩指標からの離脱は、能動的な力が胸壁に加えられることを必要とする。
図の上に弛緩指標の左にある点と関連付けられる胸壁の形とサイズ達するために、4つの能動的な力の選択肢が可能である。これらは、以下を含む:(a)正味の吸気の胸郭壁力; (b)呼気の腹壁力; (c)正味の吸気の胸郭壁力と呼気の腹壁力;そして、(d)正味の呼気の胸郭壁力とより大きな呼気の腹壁力。弛緩指標の右にある点と関連付けられる胸壁の形とサイズに達するためには2つの力の選択が可能である。これらは以下の通りである:(a)正味の呼気の胸郭壁力;そして、(b)正味の呼気の胸郭壁力とより小さい呼気の腹壁力。最後に、弛緩特性にある点と関連付けられる胸壁の形とサイズに達するために2つの力の選択が可能である。これらは、以下を含む:(a)筋肉弛緩;そして、(b)正味の呼気の胸郭壁力と等しい呼気の腹壁力。

REVIEW
復習

呼吸は、ボリューム、圧力と形の制御変数を伴う。

ボリュームとは、立体物またはスペースのサイズである。そして、肝心なボリュームは呼吸器の空気量(肺気量(lung volume))である。

肺気量は、慣例によって4つのボリューム(一回換気量、予備吸気量、予備呼気量と残気量)と4つのキャパシティー(深吸気量、肺活量、機能的残気量と全肺気容量)に再分割される。

圧力は、一か所にかかる力で、肝心な力は、呼吸器(肺胞内圧)に働くすべての受動的および能動的力の合計である。

呼吸器の受動的な力によって発生する圧力は、弛緩圧と呼ばれる、そして、最大吸気と最大呼気の努力によって生み出されるそれらは、それぞれ最大吸気圧と最大呼気圧と呼ばれる。

形は、物またはスペースの輪郭形像で ― 胸壁の場合 ― 胸郭壁、横隔膜と腹壁の位置決めから導き出される。

筋力に関係すると思われる、胸壁のリラックスした形からの離脱は、呼吸活動の間、異なる胸壁形及び/又はサイズを占めるために使用できる選択肢の小さなセットだけで、胸壁に適用される。

2019/02/19 訳:山本隆則