[Kinesthetic Voice Pedagogy Chapter 7 Belting Revisited 2017 p. 63-67]

運動感覚の音声教育学
Kinesthetic Voice Pedagogy

 第7章
ベルティング再考
Belting Revisited

警告(Caveat)
Practical Vocal Acousticsで報告されたように、私は、西洋の古典的歌唱を教えることを訓練され主に経験してきた。私はベルティングを含むスタイルにときには冒険的試みをするが、ベルトを教える際に、特別な専門知識を要求しない。それにもかかわらず、私は、人がベルティングに関連して明らかになったことをどのように適用しなければならないかについてしばしば尋ねられる。この本の出版の時点で、それらの発声スタイルの専門家と協力している科学者によって、より高いベルトと「ミックス」戦略の音響特性は、更なる研究が必要とされる。私は、いつかは確かめられるかもしれない、または、将来の調査結果によって調整される必要があるかもしれない、とりあえずの見解をここに提供する。

いろいろな教育的アプローチ(The Variety of Pedagogic Approaches )
現在、ベルトを教えるいろいろなアプローチににはいくつかの教育的トレーニング・オプションがあり、アメリカ合衆国において優れた、成功した教師とアプローチの、ほんの少し例を挙げると次の人々が含まれる;Jo Estill;  Seth Riggs、そして、彼の後継者(スピーチ・レベル・シンギング ― SLS組織:IVTOM(IVA)); Mary Sounders-Barton(Bel canto can belto); そして、Robert Edwinなど。特定の種類のベルトの増大するリストもあり、ジャンルによって切り離され、それらのいくつかはただベルト・スペシャリストによって識別され、議論されるだけのように思える。

ベルティングの音響効果(The Acoustics of belting)
音響の観点から、ベルティングは全音域を通じてスピーチのような音質を広げようとする、そして、クライマックスの感情的な効果のためにイェールの強力で劇的な効果を模倣しようとする。Practical Vocal Acousticsで報告されたように、それらの母音の第2倍音の第1フォルマント追跡が可能な音域のその部分(およそD4-C5、少し低いか高いかは母音と声による)で、これは開いた母音の上で大部分は達成される。
身体的に、これは以下のことを含む:第2倍音が第1フォルマント周波数ピークに接近するにつれて、母音はますます開けられる、そして、最も多くの手段として、ある程度の喉頭挙上は許される、或いは、上昇する第2倍音(歌われたピッチの1オクターブ上)とともに第1フォルマントを上げるために実際に使用される、(直接または間接的に動機づけされるかどうかにかかわらず)。これらの操作の両方とも― ウイスパーの場合のように―、咽頭共鳴を減らして、大きな口優位による拡散的な形成の共鳴体と、全音域にわたってよりスピーチのような音色を生み出す 。生のイェーリングと対照的に、これらの操作が、西洋のクラシカル音色が一般的に使うよりも高い度合の声門の抵抗を引き起こすので、熟練したベルターは持続可能で健康であるために十分低い呼吸圧と声門の抵抗レベルでこれを達成しなければならない。

ミックス(Mix)
より高いピッチで、第2倍音の第1フォルマント追跡が非常に努力を要するもの、あるいは、単にもはやできなくなったとき、戦略はいくぶん変化する。その語がなんらかの議論なしですまないが、この音域はほとんどの場合、ミュージカル劇場と商業的音楽産業界で「ミックス」と呼ばれている。ほぼ正確に概説された、異なる喉頭(筋肉の)声区モード1またはモード2のはっきりした徴候がなく、ある程度音域に依存する。喉頭構成部分または構成が何であれ、高音部記号のトップあたりへよりスピーチのような声質を伸ばしているとき、それを純粋なベルトと区別する特徴的な聴覚特性と発声の容易さがある。ミックスは専門の教師または聞く耳がある人によって特定されることができる。そして、少なくとも音響声区と戦略として「ミックス」のカテゴリーを正当化する。

ミックスを得るための戦略(Strategies for Achieving Mix)
ある戦略は、過度の胸声優位と努力を避けるために、音響と調音のさらなる身体的な狭窄化(たとえば、スピーチ・レベル・シンギング)のほうを選んで、喉頭挙上を最小にする。他の戦略は、ある程度の鼻の割合(鼻の入口の開き)を加えることを利用する、それは、声門を横切る圧力差(声門の下と上の呼吸圧の差)を減らすことができ、声の負荷を和らげる。他の人々は、鼻の割合、または少なくとも知覚的な鼻音性を故意に避ける。ほとんど全てのアプローチは、下から口蓋に向かって上へ(生のイェールが導く方向)歌う感じを続けるよりはむしろ、硬口蓋の高さを上回って音響の(振動する)フィードバックの感じを生み出そうとする。高い、明るい、閉じた、半分閉じた母音は、この方向または「プレースメント」認識を求めるほとんどの人によって好まれる。それは多分、これらのアプローチの全てが第1フォルマント優位から、鳴り響く、明るい音質とより高い「プレースメント」感覚のために、高い倍音を共鳴させる高いフォルマントにより大きく依存する共鳴へ変えている。第1フォルマント優位の減少は、音色の深さ、暖かさまたは丸みの減少とも言える。これは、対照的に、一種のchiarochiaro(明明)音色と言われるかもしれない。

過度の母音の優位性(Over Vowel Dominance)
このテキストで使われるイメージの観点から、ベルトとミックス両方の音質を成し遂げるために、「過度の母音」を輝かせるさらなる優位性が要求される。あまりに多くの呼吸圧と声門の抵抗(すなわち、「胸声区を過剰に高くまで運ぶ」こと)を補強することを避けるための2つの方法は、母音の感じによって、大きく開くことを避けるために、前方の音響感覚を狭くすることによって、または、音が硬口蓋と、それより上で始まるように思えるようになるぐらい十分に、高い舌背を伴う非常に高く閉じた、前舌母音の形を用いることによってである。明るい前母音、特に/i/、/e/、そして、/æ /は、一般的にこの発声に近づくために用いられる。上の臼歯と接触している高い舌背によって2ルーム声道マッピングの若干の感覚を維持することは、より少ない力または重さで高い部分音(リング)を得るのを助けることができる。舌背を降ろすことは1ルームの知覚表象となり、低いプレイスメントの知覚表象となる、そして、イェール反応の過剰な生の、そして重い知覚表象となるだろう。エプシロン(48ページを見る)の上部の音響の移動経路の感覚のいくつかの感じは、口と口蓋より上に、そして、マスクに音の感覚を受けるのを助けることができる。また、主に前の部屋の硬口蓋の下の代わりに、奥の部屋(鼻部とTMJsに近い― 前に述べた長方形イメージの上の角)の最上位で高い鳴りの感覚の意識を増やすことは、さらに高い部分音容量を強調するときに、口の上に音の「プレースメント」の感覚を得ることと、喉頭の挙上と圧縮を最小にする助けになる。

横の広がりの知覚(Lateralness Percept)
いくつかのベルトとミックスのアプローチは、明るい「過度の母音」成分を強調するために、声道形体の知覚対象の頂点近くで、横の広がりを強調する。後部の知覚的な狭小化を伴う前方での横への開きは、かなりの喉頭挙上と、過剰な声門抵抗と持続不能な加圧を引き起こす危険を冒す。横の開きをより安全に試みることができるイメージは、ベルトまたはミックス方向性を、吸気音であるがごとく想像するる、あるいは、逆に、主に口の先頭よりはむしろ顎関節の間で、さらに後ろに知覚される横の開きによってである。すなわち、内側へ向けられ、鼻咽頭へ分岐して形づけられるのではなく、その音声をあたかも非常に高くて輝いているかのように想像すること。唇の実際の形は、今まで通り微笑むようで横に引かれているだろうけれども、前方での音響感覚はこのイメージを伴ってより狭く感じる。それは、外に向けられて前に向かって拡散されるよりは、高い舌背を促進する傾向がある。それはまた、強くて高い部分音の含有量を助成し、より高い音響振動フィードバック(「プレイスメント」知覚)を維持して、必然的な喉頭挙上の量を減らして、声門の圧迫をより少なくするのを容易にする傾向にある。もう一つの戦略は、ニュートラルの喉頭の姿勢または最小限の喉頭の高さを依然として許す高い「明るい」雑音生成の実験に対して、以前に述べたウイスパー・ノイズを使うことである。そのような音は、微笑の調音と高い舌背を必要とする、そして、口の前面の外側の舌の上と言うよりはむしろ、咽頭の最上部の近く(後ろの部屋の最上部の角;鼻咽頭部)に集中するように知覚される。

まとめ
持続可能な、健康的なベルトまたはミックスには、これらの特徴がある:
・最小限の声門レベルでの圧搾の感じ
・最小限の声門下圧の強化の感じ
・空気の「破裂音」のわずかな感覚(低い圧力と声門抵抗を容易にするために、高い空気流に対して低い空気流の知覚表象に勧める際に、アプローチは変化する)
・頸部の更なる楽な感じ(生のイェールと比較して)
・硬口蓋より上の音の「プレースメント」の副産物の感じ
・咽頭優位(過小母音)よりもむしろ口優位な(過剰母音)な母音知覚
・邪魔がない表現の豊かさ
・スピーチのような、本物の自然さ(うその「色付け」のない)。

2018/07/27 訳:山本隆則