Lodvico Zacconi (1515年6月11日 – 1627年3月23日)は、歌手、ヴェニスの教会合唱団の指揮者、作曲家、著作家、司祭、そして発明家ー真のルネッサンス的人物であった。彼は、音楽史に於いて、多声声楽曲:polyphonic song からソロの歌へ変換期に位置しており、合唱団や無伴奏合唱:part-songs からソロシンガーの名手が現れれてきた時代に生きていた。
彼の著書、Prattica di musica (1592): 音楽の練習の中には、声質に於ける所見があり、「よき音楽を創るために選ばれなければならない声のタイプ」の章では、「dull: 鈍い」(obtuse: 〈音が〉かすかな、mute :閉鎖音)音と、「biting: かむ、鋭い」或は「stinging: 刺すような」(mordente: かむ)音とを区別しています。
当時の色々な種類の歌唱を説明する際に、ザッコーニは、voce di petto(胸声)とvoce di testa(頭声)の用語を使っています。彼はファルセットよりもむしろ胸声を推奨しました。彼は『dull(鈍い)』声が好きではなかった、と同時に『金切り声でかん高い声質で発する』混じりけの無い頭声も否定しました。彼は、胸声は頭声より多くの歓喜を与えてくれる、頭声は『退屈でいらいらさせるだけではなく、すぐに嫌悪し拒絶するようになる』、また、鈍い声は決して聞えないし、その上『声に存在感がなくなるであろう』と言いました。彼は、何人かの歌手達は声区間を、後ろと前に切り返すが、より多く胸声を保つほど良くなることに、また、胸声はより多くのパワーと良いイントネーションを持つことに気づきました。(Zacconi 1592, fol. 77)
[J. Stark, Bel Canto 35, 59]
1592年にヴェネツィアで出版された『Prattica di musica utile et necessaria si al conpositore per comporre i canti suoi regolatamente, si anco al cantore』の中で、ルドヴィコ・ザッコーニはビブラートの連続使用を推奨しており、これをtremoloyto呼びました(2)。
(2) Harris E. The Baroque era voices. In: Brown HM, Sadie S, eds. Performance Practice: Music After 1600. New York, NY: WW Norton; 1989.
このトレモロは、わずかで心地よいものでなければなりません。大げさで強引なトレモロは、疲れてしまい、人を悩ませます。 その性質は次のようなものです。 その性質上、使用する場合は習慣化され、パサージュ(装飾)の作業がしやすくなるまで、常に使わなければならない[イタリックで強調]。 この動きは、もしそれがただ迅速に、力強く、激しくできないのであれば、行うべきではない。
[Historical Overview of Voice Pedagogy by Richard Miller]
訳:山本隆則