[Fields: Training the Singing Voice, p. 190]

ディクションを定義する際、言語は、意味に関して標準化できる、より大きな音節や語のグループにまとめられた、分節化された音声と非音声の音響パターンの合成であることを念頭に置く必要がある。このように、言語は考えの象徴化とコミュニケーションの手段になる、そして、ディクションは声の素材からこれらの象徴を製造するプロセスである。(W) したがって、歌唱におけるディクションとは、言語の基本的な音を明瞭かつ正確に形成、生成、投射すること、そしてこれらの音を、歌の言葉や音楽の音調表現に適した流暢な連続パターンに組み合わせることと定義することができる。[Haywood 、II、P. 31; Hok 278、p. 31]

ディクションは、歌唱指導者にとって重要な3つの基本的プロセスからなる。これらは調音(articulation)、発声(enunciation)、発音(pronunciation)と呼ばれ、一般的な用法では、しばしば互いに微妙に入れ替わる用語である。辞書の定義とアメリカン・アカデミー・オブ・ティーチャーズ・オブ・シンギングが発行した「理論の概要」に基づいて、より厳密に用語を区別すると、以下のようになる。[10]

1.アーティキュレーション(articulation)は、言語の音声パターンを初期的に形成する声道の器質的メカニズムが関与する、形を与えるまたは形を作るプロセスである。これは、流暢な口頭発声のために有利な伝達経路を提供するように、発声器官の位置、形態、動きを変化させることによって達成される。こうして、基本的な息と発声物質が、理解しやすい母音と子音のシンボルに分化される。[Drew 148; Scott 501, p. 99]
2. 発声(enunciation)とは、聞き手に伝えることを目的として、発声された母音や子音に、声の鳴り響き(ソナンシー)や可聴性を加える、投射的、動的、またはエネルギーを与えるプロセスである。
3. 発音(pronunciation)とは、母音と子音が統合され、音節、単語、フレーズと呼ばれる大きなリズムのグループへと組み合わされるプロセスである。


W) Webster’s New  International Dictionaly

Haywood, Frederic H. — Universal Song(総合歌曲集)。Schirmer, New York, 1933-1942, 3 volumes.
コンパクトながら充実したボーカルメソッド。このシリーズの3巻には、基礎練習から敏捷性を高める上級エクササイズまで、段階的に構成された20のレッスンが収録されている。各母音は個別に扱われている。

Hok, Anton. The Art of Voice Production. New York, 1941.
よく知られた伝統的な発声法を再提示し、それにいくつかの音節唱法を加えている。著者は全体を通して教師として自らを向上させようとしている。

American Academy of Teachers of Singing. “Care and Development of the Human Voice.”(「人間の声の保護と育成」) Music Education Journal, December, 1938, Vol. 25, p. 26

Drew, William Sydney. “Some Principles of Voice Training.”(「ボイストレーニングのいくつかの原則」) Musical Times, London, 1937 Vol. 78, p. 406.

Scott, Charles Kennedy. word and Tone – I  J. M. Dent and  Sons, London, 1933, Vol. I.
意見は分かれるが、理論に関する本は、歌うことに関わる多くの技術的な問題を明らかにするのに役立つ。これらの問題の解決策は、第2巻で扱う。事実に基づく証拠がないため、これらの仮定はすべて興味深いものとはいえ、純粋に仮説にすぎない。

2025/01/02 訳:山本隆則