Chapter 4
REGISTRATION
by William Vennard
p.56
喉頭の筋肉組織
212 幸いにも、筋肉の名前は軟骨の名前から付けられているので理解するのはたやすい。我々にとって最も関心のある筋肉は、甲状披裂筋(thyroarytenoids)、輪状甲状筋(cricothyroids)、輪状披裂筋(cricoarytenoids)です。これら3つの筋肉はすべて喉頭内筋に分類され、それらの筋肉の両端が喉頭内に付着している。
喉頭蓋(披裂喉頭蓋ヒダを含む)を操作する筋肉と舌骨と甲状軟骨を接合するものもあるが、これらはそれほど重要ではない。内因性のものに加えて、喉頭といろいろな外側の付着点(例えば頭蓋骨、あご、胸骨)の間で引き合ういくつかの外因性筋肉もある。
213 甲状披裂筋は、弁自体を形成する。それらは声唇の本体である。それらが、甲状軟骨の背面のノッチから披裂軟骨に伸びて声帯突起に結合しているので、それらがあわされれば、気管のトップを完全に閉じることができる。それらは、全ての喉頭の内壁と途切れることなく膜でおおわれている。この一組の筋肉は、たとえ関係する他の要因がなかったとしても、いろんな種類の音を生み出せるほど十分に複雑である。
214 第1には、筋肉は両側で2つの異なった声帯を形成する。上の一組は仮声帯で、下の一組は真声帯である。解剖学者は、各々の甲状披裂筋をいくつかの小束(fasciculi)、あるいは、筋線維の束に解剖した、各々の筋束はあらゆる大きな筋肉と同様にそれ自身の起始点と付着点を持っている(図28)。下方声帯または真声帯を作る筋束は、声帯筋または内側甲状披裂筋と呼ばれてきた。甲状軟骨の各々の翼に沿ったより大きい組織体は、外側甲状披裂筋と呼ばれている。また、声帯の主な方向を横切る線維が発見され、主要な線維束に編み込まれおり、これらは唇の縁を薄くするのに若干の力があるであろうと考えられている(後述する)。これらの繊維は靱帯の端に挿入されて、披裂声帯筋(aryvocalis muscles)と呼ばれている、しかし、それらは実際は甲状披裂筋の隠れた細部にすぎません。
図28 左の声帯の写真
Janwillem van denBergの提供。およそ実物大の2倍サイズ。取り除かれた弾性円錐と他の膜質カバー。St、披裂軟骨(Stellknorpel);S、甲状軟骨、切り離された(Schildknorpel);TV、内側甲状披裂筋または声帯筋(Thyrovocalis、すなわち、甲状軟骨から声帯突起へ)。いくつかのいくぶん独立した小束または筋線維の束に注意しなさい。TMは、外側甲状披裂筋(Thyromuscularis、すなわち、甲状軟骨から筋肉突起へ)の下の部分; V、喉頭室。
215 甲状披裂筋のいろいろな線維が紡ぎ合わせられる複雑さは、それらについて新しい理論を提供する進取的な考えを持つ研究者達を混乱させ、さらに、そそのかした。たとえば、Goerttlerは、1951年に、これらの筋肉を顕微鏡によって詳しく研究し、そして、声帯の全長にわたる甲状披裂筋:thyroarytenoidと呼ばれている線維は存在しないという確信に至った。披裂声帯筋:aryvocalis(披裂軟骨から声帯靭帯と弾性円錐の下部まで)と甲状声帯筋:thyrovocalis(甲状軟骨から声帯靭帯まで)だけがあると、彼は言った。これは、繊維が収縮したとき、それらがハープ奏者の指のように靭帯をはじくことを意味する。これはHussonの神経クロナキシー説:neurochronaxic theoryにうまく適合した、そして、この考えは10年の前半においておおきな関心の波を引き起こした。今日に至って、それらはほとんど信頼を失い、そして、我々は、大部分は経線状線維の一昔前の絵に戻る、それは、今だに解決されていない特定の横断繊維の謎を伴い、それぞれ異なる斜線に沿って走り、紡ぎ合わせられている。
216 われわれは内側甲状披裂筋だけについて考えるればいいでしょう。そして、それは真声帯の本体であり、vocalisまたは声帯筋とも呼ばれている。仮声帯は、大きくて、混乱させる外甲状披裂筋の一部である。仮声帯は、中に筋肉と靱帯の組織をもち、真声帯に似ている、そして、「仮声帯」と呼ばれる、しかし、それは発声にはふさわしくなく、私が言ったように(158)、通常の発声では役立たない。喉頭の両側の、真声帯と仮声帯の間に喉頭室と呼ばれいるポケットがある。それは、何人かの研究者によって共鳴器であると考えられている、そして、我々は後で考察します。それはまた、真声帯に油― 時には過剰な ―を分泌する腺を含む。
217 少年が、ただ二頭筋を緊張させたり、弛緩させるだけで腕の形を変えることができるのとまったう同じように、声唇は甲状披裂筋の線維の動きによって形を変えることができるが、明らかに、変化は披裂軟骨のどんな動きからでも生じるだろう。声帯の後端が付着するこれらの奇妙な形の小さいてこは、輪状披裂筋肉によって操作される。軟骨の筋肉突起によって、前方へ引く2本の側輪状披裂軟骨;、そして、後ろに軟骨を傾ける2本の後方輪状披裂軟骨;全部で4つの筋肉がある。そして、小さい軟骨を引き合わせることができる横披裂筋と呼ばれる単一の筋肉がある。また、一対の斜披裂筋があり、各々は1つの披裂軟骨の一番上の先端に固定され、他方の反対側の角へ交差している。それらは、常に図面の中で印象的に見え、喉頭の後ろで文字「X」を作るが、多くの実際の検体でほとんど見えない。これらの小さい筋肉は、それらが独力で何をすることができるかを推測するまでもなく、横披裂筋と比較して重要でない。私は通常単に披裂間筋に言及する。そして、それは3つのすべてを含む。
218 あなたは、甲状軟骨が輪状軟骨に対して、下角によって回転し、声帯の長さと緊張を増減させて、前後に揺り動かすのを思い出すでしょう。喉頭の先頭に、これらの2つの大きな軟骨の隙間を埋める筋肉がある。輪状甲状筋は輪状軟骨の正面中央から扇形に広がる。そして、後ろ・上へ甲状軟骨の一番下の端に向って走る。それらの動きは輪状軟骨との関係で、甲状軟骨を前に引き、そして、下に引くことでそれにより近づく。これらの動作の両方が、甲状披裂筋(輪状披裂軟骨がしっかりつかまると仮定する)を伸ばす、そして、逆に言えば、甲状披裂筋の収縮は2本の軟骨を引き離して、輪状甲状筋を伸展する(図26)。これは、筋肉拮抗作用のもう一つの実例である。
219 しかし、それは二頭筋を三頭筋に逆らって引くような単純な事ではない。その引きは披裂筋の力を含む、そして、小さい筋肉がそれらを操作する。言い換えると、発声において呼吸圧に対して弁が閉まるとき、我々には異なった3セットの筋肉 ― 輪状甲状筋、輪状披裂軟骨そして甲状披裂筋 ― の複雑な緊張バランスがあり、いずれも単純なものではない。そのバランスは固まったもの(static)か、動的なもの(dynamic)のどちらかで、議論を重ねるほど、それが重要であることがわかると思うので、この2つのバランスを区別しておきたい。どんな筋肉でもとても堅くしっかり締まるならば、あるいは、どんな軟骨でもこわばるならば、新しい調整は、音を「ブレイクする」ことなく生み出すことは不可能である、私はそれをスタティック・バランスと呼ぶ。たとえ我々の解剖学的知識が堅さを詳しく定めるのに十分正確でないとしても、そのような状態は認められる。歌唱のための理想は、ダイナミック・バランスである。
220 その人の喉頭機能がいつものようにスタティックでとても粗く、異なる調整の間のブレークをともなうとき、我々は「声区」と呼ばれるものを聞く。その用語は、すべての管楽器のなかで最も精巧なオルガンから借用された。それは音域の概念と一般に混同される、つまり、「高いレジスター」と「低いレジスター」などと云われる;、しかし、オルガンでは、いくつかの音が非常に高く、他が非常に低いのに、異なるレジスターが正確に同じ音域のためでもありえるのを思い出すことはよいことです。これは、声にとっても同様に真実である。ピッチは声区における非常に重要な要因であが、本当の違いは音の質(異なる発声の結果)である。
950 神経‐クロナキシー(neuro-chronaxic):神経のクロナキシーに関係すること。実例、声帯振動の振動数は、呼吸圧や筋肉緊張によってではなく、回帰(又は反回)神経のクロナキシーによって測定されるという理論(Husson)。 筋弾性ー空気力学説を参照。
クロナキシー:立ち上がり電圧の2倍の恒常的な電流によって、神経細胞の興奮のために必要とされる最小限の時間。