[B.M. Doscher, The Functional Unity of the Singing Voice. 1994  p. 8]
横隔膜(diaphragm)
胸部の垂直の空間は、横隔膜(最も重要な吸気筋)の下降によって、増やされる。
この胴体の中で2番目に大きい筋肉は、腹部から胸部を隔てる。全ての境界線が胸部と脊骨のいずれにも連結されるように、それは肋骨に、前方では胸骨に、そして、後ろでは脊柱に付着している。横隔膜の下降は、従って、肋骨の広がりによって、必然的に起きる。それは、右側が少し大きなドームのある筋肉の二つのドーム型の層である。そのセンターに、薄いが極めて強硬な大きくて扁平な腱がある。この腱中心の並外れた強さは、少なくとも部分的に、異なる角度で交差する筋肉線維のいくつかの層の結果である。腱中心から下への走りは、最も低い肋骨(costal,肋骨の)、胸骨(sternal,胸骨の)と脊骨(vertebral,脊椎骨)に付着する筋肉壁である。
肋骨横隔膜線維は第7から第12肋骨までのより低い辺縁から始まり、腹横筋(下記の呼気筋を見る)と連動して、それから腱中心に挿入する。これらの外横隔膜線維の脊椎骨部分は、腱中心に挿入する筋肉線維の2本の太い柱によって、上部の腰椎(胸椎のすぐ下)から始まる。胸骨線維は横隔膜の中で最も短くて、上に伸びて腱中心の前面に挿入する。この腱中心を貫いて、大動脈、心臓に血液を戻す動脈と食道または胃への管が通っている。
横隔膜のドームがリラックスしているとき、それは第5肋骨のスペースの高さに上昇することができる、しかし、それは通常静かな呼吸でのやや低い位置である。
横隔膜の筋肉線維の収縮と短縮は、下に、前方に腱中心を引き寄せる。そして、それを平らにして、胸部の垂直の径線を増やす。その結果は、容積の増加と胸部内の圧力の減少が起きる。同時に、下行する横隔膜は内臓を圧縮し、そして、腹部内の容積を減少し圧力を増加させる。上部の腹壁または上腹部の膨らみは、腹壁筋肉組織の収縮に起因するもので、横隔膜自体によるものではない。(4)
横隔膜の下降または収縮は、その(腹部の)縦の径線を短くする、そして、その下降がより大きいほど、休止位置へ戻るための潜在的な力はより大きいものになる。静かな呼吸の間、横隔膜がおよそ1.5センチメートル下降することが分かっているが、歌唱のための呼吸の間は、それは6から7センチメートルまで下降する。(5) しかしながら、この種の横隔膜の動きは、最大量の空気を吸われなければならないということではない。比較的小さな空気容積でも、最も長い音楽的なフレーズを維持するのに十分である。吸気中の腹部筋肉組織の過度の収縮は、横隔膜が正しく機能することを妨げる過度の拮抗的な動きで、回避されなければならない。横隔膜の最大の下への動きができるように、これらの筋肉はわずかにリラックスするように訓練されなければならない。(6) (太線強調:山本)

(4) Johan SundbergとRolf Leanderson、「発声の呼吸-発声教育学の後の生理学:チュートリアル」Journal of Reserch in Singing、10:1の(1986)、3- 21
(5) D. Ralph Appelmanで引用、発声教育の科学(Bloomington IN:Indiana大学出版局(1967))、33(O.L. Wade(「呼吸に於ける横隔膜と胸部のケージの動き」Journal of PHysiology, Vol. 124, 1954; 193-212)から)
(6) M. Bunch, Dynamics fo the Singing Voice. New York: Springer-Verlag, 1982, 47.