図3-47

図3-47

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図3-46

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図3-48

甲状披裂筋<喉頭内筋<喉頭筋

振動している声帯の主要なかたまりは、甲状披裂筋からなる。それは複雑で、理解するのが難しい。これは論文でみられる記述の部分的な違いを説明する。
甲状披裂筋は、よく2つの筋肉のかたまりから構成されていると記述される。声帯靭帯の側面に位置している筋肉の部分は、声帯筋(vocalis)または甲状声帯筋(thyrovocalis)と呼ばれる。それは、振動している声帯の主要な部分を占めると想定される。それの側面は、外甲状披裂筋(external thyroarytenoid)または甲状筋層(thyromuscularis)である。
この見解に反対して、声帯が実際に単一筋肉のかたまりであり、内側の声帯筋部分と外側または甲状筋部分の分割は、少なくとも解剖学的分野に於いて正当ではないと主張する著者達がいる。論文と論拠の総合的な論評はこのテキストの領域を超えているので、関心がある読者はSonesson(1960)の並外れた調査レポートを参照することを勧める。
我々が最終的に受け入れる記述に関係なく、遭遇する記述の相違点が部分的に形態的な変わりやすさに起因することを心に留めておかなければならない。次の記述は、主として数年間にわたる解剖の個人的な観察に基づく。使用される技術は、重要で、得られた結果と何らかの関係があるだろう。
1枚の薄片の大きさで摘出できるように喉頭の甲状軟骨が矢状面と平行に切断されるならば、声帯靭帯と甲状披裂筋は検体の半分が無傷で残されるであろう。その場合、片方の声帯の内側表面に接近することができ、そして、また、上方からと、側面から調べられることができる。低倍率拡大鏡が使用されなければならない。図3-45で見られるように、粘膜と弾性円錐は下にある声帯靭帯と甲状披裂筋を露わにするために簡単な解剖によって開放される。
声帯靭帯は、垂直に誘導された帯(およそ4mmの高さ)として現れ、甲状軟骨の角から始まって、披裂軟骨の声帯突起で終わる。実際、声帯突起は靭帯の中に埋め込まれているようである。声帯靭帯は、長く薄い靱帯の線に、はぎ取ることができる。
最も側面の線維に達するとき、靭帯を続けてはぎ取ることは必然的に、その下にある甲状披裂筋の組織のいくらかの最小量を引き離す結果となる。甲状披裂筋(声帯靭帯の真横)の線維の進路は、縦方向で、それと平行である。これらの平行した筋肉線維は、縦方向に誘導された線維が声帯靭帯の上と下の両縁辺に沿って走るように配置されている。
甲状披裂筋は、甲状軟骨の角の内面で、狭い垂直に誘導された部から、前方に起こる。この部分は、Sonesson(1960)によってfacies muscularis interna(内筋側面?)と呼ばれた。上部の線維(それは声帯靭帯の側面に位置する)は、披裂軟骨の声帯突起の側面と下側面に付着するために、水平に進む。下方の筋束はよじられるので、それらはかなり平行コースから外れる。それらは側方後方上部の方向に「はずれる」、そして披裂軟骨の楕円窩と下縁辺に挿入される。
全体として見るとき、筋肉は前方に縦に正しく置かれた長方形のかたまりとして始まる。それが披裂軟骨の方へ後ろに進むに従って、この垂直の向きはより水平になる、そして、その結果、図3-46で示すように、筋肉はねじれた外観をとる。これは、声帯が内転させられた、又は、部分的に内転させられた(死体)位置にあるとき、了解できる。しかしながら、披裂軟骨が外転させるとき、声帯突起は上げられて、横に回転するので、水平の向きが弱められる。言い換えると、声帯が外転させられるとき、3-46で図の中で示されるように、ねじれた筋肉はいくらか「ほどける」。
上述したように、甲状披裂筋の甲状声帯筋(thyrovocalis)と甲状筋層(thyromuscularis)が、図3- 47で示されるように、確認されることもある。Wustrow(1952)は、声帯突起に沿って付着する部分を甲状声帯筋として、筋肉突起に付着する部分を甲状筋層として識別した。また、Wustrowは、甲状筋層は披裂軟骨の筋肉突起を前へ引くことによって声帯を接近させると主張する。一方、甲状声帯筋は、声帯の緊張をコントロールするために機能する。
Van den BergとMoll(1955)はこれらの見解を支持する、一方で、私の解剖とSonessonのそれらは,甲状声帯筋と甲状筋層の分割を正当化する甲状披裂筋内の筋膜鞘のようなあらゆる解剖学的目印を明らかにすることができなかった。他方では、Pernkopf(1963)のイラストは、2つの別の筋肉塊がはっきりあると信じさせるだろう。
人間の喉頭の前部分は3-48図に示される、そして、解剖学的分割の証拠は一切見いだすことができない。
しかしながら、我々はこの筋肉が部分収縮でできるという可能性を除外してはならない、それゆえ、機能的な見地から、まるでそれが二つ以上の筋束で構成されているようにふるまう可能性がある。
喉頭の筋肉組織は、特に豊かな神経の供給がある。しかし、さらに難しいことに、声帯靭帯の部から始まって、甲状軟骨の方へ横に働く、平行する線維をはぎ取ることによって、甲状披裂筋が注意深く摘出されるとき、声帯の筋肉組織と側輪状披裂筋の間の真の境界は見いだされることができない。
解剖学的に、声帯筋は輪状-甲状-披裂筋肉のかたまりに属している、筋肉がただ部分的に切り離されるだけである(Cruveihier、1865; Ruhlmann(1974); Cunningham(1917); Elze(1925))。筋肉のかたまりに属している甲状披裂筋と声帯筋は、それらの全長の主要な部分と融合され、そして、筋膜または結合組織はそれらの間で実際に示すことができない。(Elze、1925;、そして、Mayet、1955)披裂軟骨のその付着点で、筋肉塊(側輪状披裂筋)の三分の一の筋肉は、他の2つの筋肉(後輪状披裂筋と斜披裂間筋)たちと融合される。しかしながら、声帯の前部と中央部に於いて、結合組織層は、一般に側輪状披裂筋と他の2つの筋肉の間で見いだされる(Mayet、1955)。
声帯の他の内転筋たちと共に、側輪状披裂筋は後に記述されるだろう。
甲状披裂筋の線維のコースが縦で声帯靭帯と平行であると言う調査結果は、強調されなければならない、と言うのは少数の筋肉線維束(声帯の一番中央部分で位置づけられる)が発声の間、声帯靭帯の微妙な調整を実行するために声帯靭帯に入り機能すると、何人かの研究者は報告した。
実際、Göerttler(1950)は、甲状披裂筋の斜めに向けられた線維が声帯靭帯に挿入され、それらが発声の間、声門の開きに寄与すると主張した。これらの斜め線維は、Göerttlerによると、前後に分割されて構成される。前方分割は、甲状軟骨から前方に起こり、声帯靭帯に挿入するために後内側の方向に進むと想定される。それは、甲状声帯筋(thyrovocalis muscle)として別途に確認された。後ろの分割は、Göerttlerによって、披裂軟骨の筋肉突起から起こって、声帯靭帯に挿入するため前内側の方向に進む。この筋肉(それを彼は披裂声帯筋(aryvocalis)として確認した)は、3-49で図に甲状声帯筋と共に、図によって示される。
図3-29図3-49  Göerttle(1950)によって記述された甲状声帯筋と披裂声帯筋の概略図。甲状声帯筋が左で示される間、披裂声帯筋は右と左の両側で示される。標本は、水平の項(横軸)である。また、イラストは、上方から見て、声帯と声門裂を表わす。

 

顕微鏡による解剖を用いた我々の所見で、声帯靭帯のすぐ横の筋肉線維の進路が靭帯と平行であることが分かる。Sonesson(1960)(低出力倍率と他と異なる染色技術を用いた)は、筋肉線維が声帯靭帯に挿入しているのを発見出来なかった。しかしながら、彼は、弾性円錐に挿入していると思われるいくつかの線維を見つけた。これは、甲状筋性線維が声区の変化の間、声帯の大きさと緊張を調整すると言うNegus(1929)の主張を裏付けるだろう。
Sonessonと我々の調査結果は、Von LedenとKonig(1961)、Wustrow(1952)、Mayet(1955)、Van den BergとMoll(1955)(SchlosshauerとVosteen(1955と1958)とManjome(1959))のものとほとんど一致する。
甲状披裂筋の一部の線維は、前後方向の進路から外れて、甲状軟骨の角から、上へほとんど垂直に導かれる。それらの一部は披裂喉頭蓋ヒダでなくなるが、他のものは喉頭蓋の側面の縁辺へと延びる。この筋肉の滑面(甲状喉頭蓋筋として確認される)は、時には甲状披裂筋の滑面というよりもむしろ明確に別の筋肉として記述される。そのうえ、一部の線維は仮声帯の側面の縁辺に沿ってめぐって、喉頭蓋の縁辺の側面に挿入する。それらは、仮声帯筋となる。[Zemlin, p.159-163]

[R. Luchsinger & E. Arnold,  Voice-Speech-Language]
c. 声帯筋
解剖学
声帯筋は、披裂軟骨の前部分、主にその声帯突起から始まる。筋肉の主要なかたまりは、斜方向で外側から中央まで下に伸びる。線維の多くは、声帯縁に挿入されるようである。他の線維たちは、弾性円錐で終わる内側の筋肉線維のこの斜の進路と対照的に、それらの外側は披裂軟骨の筋肉突起の底辺で始まる。そして、声帯とほとんど平行した方向に従う。それらが甲状軟骨の内側の表面に達するまで、これらの線維は前方へ広がる。Berendes(1956)は、解剖学的準備と組織学的分析を通してこれらの筋肉線維の正確な進路を実証することが極めて難しいと強調した。線維は、付着、方向とこれらの部分の強さに基づくさまざまな筋肉部分の機能の入り組んだ方法で、互いに縦横に横切る。
組織学
Göerttlerは、声帯筋システムの主な線維複合体を実証しようとした。声帯表面とさらなる矢状断面と平行して慣習的な水平の切開面の代わりに、彼は、斜進路を持つ切開面を選択した。彼の調査結果のデモンストレーションに於いて、この著者は斜め方向で配置される線維システムを記述した。1952年に、WustrowはGöerttlerの主張を調査した。顕微鏡的標本とその後の組織学的分析を通して、WustrowはGöerttlerの斜めの声帯筋の説明は、披裂軟骨の位置によって決まるという結論に至った。披裂軟骨が外転させられた位置にあるとき、ロープで見られるように、声帯線維はねじれ作用を受ける。その結果として、筋肉線維は、切開面のさまざまな面でみられる。
Van den BergとMoll(1955)は、筋間結合組織の分析を通して声帯筋の中の筋肉線維の進路を実証しようとした。一部の筋肉線維が声帯縁のところで終わるという可能性は、無視することはできなかった。これらの分離された線維が機能的な重要性を持つだろうことは、ありそうにはなかった。しかしながら、声帯筋組織が弾力的な線維(確認されたWustrowの以前の観察の成果)を通して弾力的な声帯靭帯につながれているのを見ることができる。
もう一つの研究において、Motta(1952)は、声帯靭帯の前方と後方の両部分がさまざまな筋肉線維の付着のための真の腱であることを見いだした。彼らの観察の細かい差にもかかわらず、大部分の観察者は、声帯筋が2つの主要な部分から成ることに同意する:甲状声帯筋(甲状軟骨から声帯に続く);そして、披裂声帯筋(披裂軟骨と声帯の間に位置する)。これらの2つの筋肉がどのように発声に関与するかは、まだはっきり理解されていない。
機能
これらの新しい調査結果に基づいて、声帯筋の機能は、次のように要約されるだろう。声帯の緻密な等尺性の緊張に主に役に立つのは、内部の声帯緊張筋である。さらに、それは声帯の上昇、低下と側面の緊張を助ける。披裂軟骨が大雑把に声帯を発声のために中央の位置へ移動させたあと、声帯筋は正確な形と幅、そして声門の長さを決定する。声帯筋線維の複雑な進路のために、声門の縁はかなり変更されるようにおもえる。これらの細かい内部の、等尺性の声帯緊張の機能は、外の輪状甲状筋の機能とは全く異なる。後者は、声帯の粗い等張力性緊張とそのさまざまな音程の高さによって延ばすことに役立つ。