Der wissende Senger  Gesanglexikon in Skizzen の、荘智世恵、中澤英雄:訳によって、1994年に音楽之友社から出版された。

著者のフランチェスカ・マルティーンセン=ローマン教授は、様々な本に引用される重要な声楽教師であるが、この本の内容からして音楽分野だけではなく非常に広い分野において、高い教養を持った人物であることが分かる。特に、序文にあるように、「声楽学の分野は現在、科学と技芸と妄想の間の奇妙な浮遊状態におかれている。その原因となっているのは、学問的、理論的基本概念の統一的名称も、この分野の芸術的諸法則(これらの法則は声楽においても、発声器官それ自体の性質からして、決して破棄することができない自然法則と結びついている) に対する明瞭な概念規定も、ほとんど存在していない、という事実である。」という現状を改善しようとする高い志のもとに書かれている。

ドイツ語からの翻訳であることもあり、ドイツ楽派で一般的な用語なども、荘、中澤両氏の優れた翻訳によって正確に規定されている点からも、日本における発声教育学における重要な一冊と言える。