マンチーニの声区に関する記述

マンチーニも,トージと同じくカストラートであった。彼もトージと同様に声を2つの声区、胸声と頭声に 分けて:『声は自然の状態で通常2つの声区に分けられる、その1つは胸声と呼ばれ、他方は頭声またはファルセットと呼ばれる。私は今通常と言いました、何故なら、胸声のまま全ての音域に達することができる決して尋常ではない贈り物を自然から授かるという珍しい例があるからだ』(Mancini, 1967, 20)。

Edward Foreman は、この最後のセンテンスを、『18世紀の唯一、最も名高い発言』であると考えました(Foreman 1969, 53)。確かにその発言は、その意味に於いては曖昧です。それは歌手が上の声区を胸声区と同じように出しているか、或いは、歌手が明記されていない何らかの方法によって胸声を上手く上に向かって伸ばしているか、或いは、全く別の何かかを示しています。どの場合に於いても、マンチーニはこの問題に戻り、同じ曖昧さで言いました、『2つの声区が、1人の人間に於いて2つとも胸声区の中で結合されるのは、大変まれなケースである。この統一された結びつきは、普通、訓練による熟練によってのみ作り上げられる』(Mancini 1967, 39)

マンチーニは、声区を結びつけることがいかに難しいかを繰返し強調した。『歌唱技巧で出合う全ての困難さの中でずば抜けて大きなものは、2つの声区を結合させることであるのは疑いの余地がないが:しかし、それがどのようにすればよいのかを真剣に学ぼうとするものにとって、それを克服するのは不可能ではない』(20)。彼は、このことについて後に詳しく述べています:

歌手の卓越した技巧は、彼が胸と頭の2つの異なる声区を合わせる多少の困難さを、聴衆や批評家に気づかれないようにすることである。これは限りない改良によってのみ獲得することができる:しかし、これは単純で自然なやり方では容易に習得することはできない。器官の強さの大小によって生まれる欠陥を修正するための研究と努力が必要である。そして声をむらなく一様に響かせ、喜びに満ちたものにする操作能力と効率的使用を手に入れる。これはほんのわずかな生徒だけが達成し、ほんのわずかな教師だけが、実際的な規則、或いは、実行の仕方を理解しているにすぎない。(101-2)

マンチーニは、頭声は胸声よりも弱いので声区を結合することを助言しています;「頭声は胸から分かたれているゆえに助けを必要とする。生徒が時間を無駄にすることなく、それらを結合する助けになる確実なる方法は、最も可能なやり方で頭声を胸声と同じくらい強くするために、胸声を抑制して出しにくい頭声をより強くしていくことを定着させることを理解することである。」頭声が胸声よりも強いというありそうもない事象に於いては、そのプロセスは逆にされなければならない。いずれにせよ、マンチーニは疑いをものともせず楽観的な姿勢を崩さなかった、『2つの声区の結合が望み通りのポイントに到着しないこともあるだろう;それにもかかわらず、私は師匠と生徒にそれによって勇気を失わないように嘆願する;何故ならば、同じやり方を続けることで、幸運な成功を得るにちがいないと私は確信するからだ(40)。彼は弱い声区を強くするやり方を具体的に挙げてません。

[Stark, Bel Canto 62]