2015 4月

コラム:それダメ!2 舌根を下げてはならない!

resonance

舌根を下げて軟口蓋を上げる、とはよく言われることで、また不幸にもそれを信じている生徒が多くいます。これは日本の発声教育における怪しげな指導法の中でも最も不都合なものです。 これは母音についての無知からくる大間違いです。そのように指導する先生等は、母音がどの様に作られるかを知らないのです。母音生成時の声道の断面積と母音のスペクトルとの関係を初めて解明した、この母音研究のパイオニアとして今も世界の音声学界で記憶されている2人の音声学者が『THE VOWEL – Its Nature and Structure』を出版したのが1942年です。不運にもこの貴重な研究は戦争のため欧米に伝わる…

コラム:それダメ!1.声を出すために大量の息を使ってはダメ!

Breathing

もし、発声に対して最も常識的なことは何か?と聞かれたら、迷わずこう答えるでしょう。「出来るだけ少ない息で声を出すこと。」 発声教育の中でも、呼吸法に関しての意見の相違は、他の分野以上に意見の一致がなく、いまだにこれが正しい呼吸法であるというものはありません。それにもかかわらず、この「大量の息を使わないこと」に関しては、わざわざ言う必要も無いほどの常識として認識されています。 音声のもと(喉頭音源)は、声帯の振動によってつくられます。声帯の振動とは、のど仏(喉頭)の中にある襞が、くっついたり離れたりすることで、管楽器では唇がその代わりをします。この襞がくっつく瞬間に息が多いと、息の流れに邪魔され…

©Takanori Yamamoto