[Lilli Lehmann, HOW TO SING 1902/1993 Dover edition] p. 8
Of the Breath
呼吸について
息は、意志の操作と発声器官の手段によって声になる。
呼吸を制御し、適切な形の通路を用意し、そこを呼吸が流れ、循環し、発達し、必要な共鳴室に到達するようにすることが、私たちの最大の課題です。
私はどのように呼吸したか?
もともと息切れがひどかったので、母は幼い私をほとんど背を持たれた格好でベッドに寝かせていました。それが終わって、大きくなって走り回って遊べるようになってからも、歌のレッスンの最初の頃は息切れに悩まされていました。私は何年もの間、毎日歌わずに呼吸法の練習をしてきましたし今でもそうしていますが、当時とは別の方法で息を減らして音節を継続的に表現することで、息と声に関するすべてのことが私には明らかになりました。やがて私は、15秒から20秒の間、クレッシェンド・ディクレッシェンドを静かにキープすることができるまでになりました。
私はこう習っていました。 腹部と横隔膜を引き締め、胸を張り、肋骨を使って息を止め、徐々に息を吐き出して腹部をリラックスさせる。
何事も徹底的に、もっぱらそれだけを細心の注意を払って行うことで自然と器用になり、腹筋や胸筋、横隔膜が驚くほど鍛えられました。それでも、私は満足していませんでした。
ベルリンのホルン奏者で、非常に長く息を保つことができる人がいたのですが、ある質問に答えて、演奏を始めるとすぐにあらためて腹部を引くと言っていました。私も同じことをやってみたところ、最高の結果が得られました。以前、アメリカでドイツのオーケストラのホルン奏者3人から聞いた答えは、とても素朴なものでした。彼らは、私が「どうやって息をしているのか」と質問したことを全く理解していないようで、困惑した表情をしていました。そのうちの2人は、「何も考えないのが一番」と宣言した。しかし、私が「先生から呼吸の仕方を教えてもらったことはないのか」と尋ねると、3人目は少し考えてから「ああ、そうだ」と答え、大雑把にお腹を指さした。それによって多くの空気が吸い込まれるので、激しく息を吸うことが本当に望ましくないという点では最初の2人は正しかった。しかし、このような無知さは、演奏者が訓練を受けた音楽院の評判を落とすことになり、当然、彼らの演奏に暗いイメージを与えることになります。
確かに私は呼吸において空気を吸いすぎ、いろいろな筋肉が痙攣して呼吸器官や筋肉の弾力性が失われていたのでしょう。どんなに気をつけて息を吸っても息が少なすぎることもあれば、特に意識しなくても十分すぎることもありました。私はまた、過度の吸気を取った後は歌い始める前にある程度の空気を放出しなければならないように感じました。最終的には、腹部や横隔膜の過剰な吸引を一切やめ、息を吸う量も少なくして、できるだけ少ない息を吐くことに特別な注意を払うようになりましたが、これは非常に有効な方法であることがわかりました。
私は横隔膜と腹部をほんの少しだけ引き寄せ、すぐにリラックスさせるだけです。私は胸部を上げて、上の肋骨を膨張させて、下の肋骨を柱のようにしてその下で支えます。このようにして、私は母から習った通りに、歌の形、息の供給室を整えます。同時に、口蓋を鼻に向かって高く上げ、鼻から息が抜けるのを防ぎます。その下にある横隔膜が弾性的に反応し、腹部から圧力を与えます。胸部、横隔膜、そして閉じた喉頭蓋が息の供給室を作ります。
歌い始めてeを明確にしてから、息を胸に押し当てて、胸の筋肉を働かせます。これらが、弾性的に引き伸ばされた横隔膜と腹筋(歌唱時には腹筋は常に自然な位置に戻される)と相まって、フォームに圧力をかける。 これは、すでに学んだように、呼吸の供給室でありベッドです。この圧力により、歌いながら息をコントロールすることができます。
この供給室からの息は、非常に控えめに、そして優しく、声帯の間を通って、声帯を調整しながら、喉頭蓋を通ってはるか後方に行かなければなりません。母音eは喉頭蓋を持ち上げるので、他の母音を発声する場合でも、常に念頭に置いて、新たに配置して発音しなければなりません。そうすると、歌い手は供給室が膨らんでよく閉じた状態の感覚だけを味わうことになり、特に子音を慎重に発声する際には、それを損なわないように注意しなければなりません。フォームが損なわれていない状態が長ければ長いほど、息は逃げずにフォームから流れていくでしょう。
腹部、横隔膜、胸部の筋肉を含む、このフォームまたは供給室、息の圧力は、しばしば「Atemstauen」(息の抑制)や「Stauprinzip」(せき止め原理)と呼ばれます。これらの言葉は、横隔膜を硬くし、息を抑制し、声帯全体を硬くするように生徒に誤解を招く危険性をはらんでいますが、代わりに、弾力的な筋肉の動きを伴う常に活動的なフォームからのみ、息が流れ、音が響くことを理解させます。
息の圧力をしなやかに胸にかけるほど、音を胸に向かって歌っているような感覚になり、そこから優しくしなやかに押し出していかなければなりません。その分、声帯を流れる息の量は少なくなり、声帯に直接かかる負担も少なくなります。胸の筋肉と横隔膜の圧力の強い協力により、直接参加しているすべての発声器官に過剰な負担がかかることはありません。
このようにして、コントロールされた息は、舌によって準備された音のフォームに到達し、軟口蓋の上げ下げや頭部の空洞によって準備された共鳴室に到達します。ここで音の渦が形成され、音の完成に必要なすべての共鳴空洞を満たすことができます。フレーズの最後の音が、口と唇のカップ状の空洞である「ベル」を通過するまでは、息の流れを妨げず、フォームや供給室をリラックスさせることはできませんが、それでも次のフレーズに向けて素早く準備をしなければなりません。
このような多くの機能を単独で、あるいは組み合わせて観察し、コントロールすることが、歌の研究の尽きることのない喜びとなっています。
息の流れ(音の流れ)のためのフォームを準備するには、腹部、横隔膜、上肋骨、喉頭、舌、口蓋、鼻、肺、気管支、腹腔、胸腔、そしてそれらの筋肉など、すべての器官が参加します。これらの器官は、ある程度、比較的自由に配置することができ、私たち歌手は、どんな課題も可能な限り完璧に演奏するために必要な技術力を身につける義務があります。声帯は内側の唇のようなイメージですが、私たちは感じることができません。私たちはまず、息のコントロール装置(controlling apparatus of the breath)を通して声帯を意識するようになります。息の制御装置は、可能な限り少量で均一な圧力の息を吐くことによって、安定した音を生み出すことで、息を節約することを教えてくれます。私は、これらを直接、呼吸調整装置(breath regulators)とみなし、胸筋の緊張のコントロール装置(controlling apparatus of the chest-muscle tension)を使って、すべての過労を解消すれば、すべてが解決するとさえ考えています。舌の後ろが息と音程の舵になっているので、あらゆる音の高さに必要な共鳴面(resonance surfaces)に息を向けることができます。この規則は、すべての声に共通しています。
呼吸のために、口の中に弾力性のある形が作られ、その後ろで流れが、圧力や過度の収縮・膨張に妨げられることなく渦巻く(circulate)ならば、それ(呼吸)は実質的に無限になります。これこそが、深い呼吸をしなくても十分になブレスがあったり、入念な準備をしても全く息がなくなったりというパラドックスの簡単なな解決法なのです。一般的には、息と最小の呼気のための器官の弾性的な形成と敏捷性ではなく、吸気に主な注意が向けられています。
歌手が音楽のフレーズやスピーチのフレーズに含まれるすべてのものを一息で歌うことができないのは、原因を知らないこと、フォームの欠如で、圧力や筋肉の痙攣的な締め付けによるものでしかありません。
息が喉頭を離れるとすぐに分割されます。息の分割は、最も深いバスから最も高いテノールやソプラノまで、性別や個性に関係なく、音程ごとに、振動ごとに、規則的に行われます。息が流れる声帯の大きさや強さ、呼吸器の大きさや使い方の巧拙が個人によって異なるだけです。息の座、分割の法則、共鳴面は常に同じであり、せいぜい習慣の違いによって区別されるだけです。
2021/04/26 訳:山本隆則