[William Shakespeare:The Art of Singing]

Jaw

下あごの自由な動きは、下向きと後ろ向きである。
歌っている間は、無拘束で、舌の動きとは全く関係なく、バランスのとれた、浮遊感のある状態でなければならない。
顎の自由度は、舌(1)が母音に必要なさまざまな位置、ah,a(t),a,air,e(t),i(t),ee,oo,(h)oo(d),o,aw,o(t),er,u(t),oo, (h)oo(d), o, aw, o(t), er, u(t), (44ページ参照)、を無意識のうちに取ることができるかどうかで判断できるだけではなく、(2)舌の子音であるl, d, t, n, r, 硬いg, k, thの動きも、あごを少しも動かさずに行うことができる。

母音の oo(who のように)や子音の b、m、p を発音するときには、顎を少し上げる必要があるかもしれない。 f, g (Georgeのように), j ( justのように), s, sh, (shallのように), v, ch (churchのように), z (zealのように)は確実に上げなければならない。 これらはすべて歯を合わせる必要があるからだ。とはいえ、顎を固定するのは一瞬だけである。

顎の自由度は、喉頭の自由度にかかっている。顎を完全に緩めて、無意識に声を出すだけで歌えるようになる。

歯を閉じて歌ったり、口を大きく開けているが硬くなったり、怒りを表すように顎を引いたり、顎を突き出したり、口を片方に寄せて歌ったりするのは間違いである。

硬い歌い方では、音が変わるたびに顎が動き、生徒たちは無意識のうちに発声器官だけでなく顎でもトリルをしようとしているのが見受けられる。

ランペルティは、「口を動かす者は決して歌手にはなれない。素晴らしい天賦の才能を持つ者であっても、この習慣に溺れると凡庸さを脱することができない」と述べている。これは、同じ母音での母音唱法か、上述の舌の子音のアーティキュレーションを指しているとしか考えられない。

歌うときには、口は常に親指1本分以上開いていなければならず、大仰なフレーズではさらに大きく開きます。

 

Soft Palate
軟口蓋

指を口蓋に沿って後方に移動させると、軟口蓋がわかる。声のトーンへの影響については、様々な議論がなされてきた。ここでは、その行動の自由度は、喉と舌の自由度に依存することが示唆されている。誤った鼻音の原因は、軟口蓋と鼻の一部の筋肉が同様に硬直しているためである。舌を緩めると、この不快な性質は消える。

Lips and Face
唇と顔

唇の自由度は、私たちが正しく歌っていることの証として非常に重要である。笑うときのように上唇を上げられないと、顔の表情が全くなくなってしまう。声区の章では、上中下の声区で上唇の独立性を保つことがいかに必要であるかを見ていく。

昔のイタリアの歌手は、完璧な発声に伴う微笑みの表情を表現するために、「Fior di labbra」(唇の繊細な表情)という言葉を使っていた。

唇を取り囲む大きな筋肉が硬直してしまうのは、発声上の不備によるものである。顎の位置が固定され上唇が引っ張られるため、母音のoo(cooのように)、hood、wouldの自然な発音がほとんどできなくなり、唇の子音であるb、m、pが著しく損なわれることになる。

Eyes

詩人は「目は、魂の鏡である」と言う。ランペルティは、「声の鏡」と云っている。それは確かに、私たちの心の奥底にある考えを明らかにし、その固定性によってあらゆる困惑をあらわす一方で、その自由さは私たちの満足感や幸福感を表現する。

4つの筋肉は、眼球を上向き、下向き、内向き、外向きにする役割を果たしている。また、まぶたやその周辺部の表情豊かな動きを無限に変化させる機能もある。発声器官が少しでも硬くなると、これらの筋肉が硬く固定され、目の動きが妨げられ、目の前のものをはっきりと見ることができなくなる。このように目の表情や動きはその非常に繊細な性質から声の使い方に左右されると言える。 目の柔らかな表現は声の硬い表現を決して伴わないからである。フレーズを開始し、目の動きを自由に表現しながら音から音へと進めていく能力は、学生にとって重要なサインであり、これに成功することは、微笑みや喜び、共感、そしてコメディーに求められるすべての遊び心のある効果の表現を習得していることを証明している。

下まぶたのひだが気持ちよく見えるのは、頬が上がっているからであり、上唇の角が上がっていることで、笑顔に喜びが加わります。音を出したり変えたりするときの発声器官の硬直は、しばしばまぶたのまばたきとして現れる。これは、昔の人が練習の際に鏡を使うことを推奨していたことでわかる。

 

2022/02/03  訳:山本隆則