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歌唱には呼吸法は存在しない!

Breathing

「声を出しているとき、声帯は開いているでしょうか、それとも閉じているでしょうか、どっちでしょうか?」 これは、私が歌を教えているあるミュージカル劇団で、10年以上にわたり、最初のレッスンのときに生徒さん達に必ずする質問です。生徒さん達は私とのレッスンを受ける前にすでに何年かにわたって声楽のレッスンを受けている人たちです。 この質問の答は、常識的に考えてすぐに回答できるもので、「何を当たり前のことを聞くのか?」と反論されてもおかしくないほどのものですが、驚くべき事はその正解率の低さです。正解率はおよそ30~40%(少し甘く見て!)、つまり70%近い人たちが、即座に「開いて」と確信を持って答えるの…

テトラツィーニを読む

Breathing

テトラツィーニのThe Art of Singing (カルーソーとの共著)に於ける記述の中から選ばれた文章に、山本のコメントや他の著者の記述などを加えて読み解いていく試みです。(基本的に、「カル―ゾとテトラツィーニの歌唱法」川口豊訳、シンフォニア出版によりますが、部分的に翻訳を変えている部分は明記します。) テトラツィーニ(1871-1940)は、数多くのレコード録音を残していますが、歌唱中の映像は、引退後の61才の時に撮られた Luisa Tetrazzini Sings Again With Caruso (1932 Movietone Newsreel Footage : You-Tu…

PAOLA NOVIKOVA の教え

未分類

オペラ史上、最も偉大なバリトン歌手の1人である、Mattia Battistini は、後継者を育ててバティスティーニ楽派を作らないのかと言う質問に、「私のメトードはすべて、レコードの中にある。」と答えたそうですが、唯一の例外としてパオラ・ノヴィコヴァというソプラノの弟子がいました。そのノヴィコバの弟子であるBarton Coffin によって、Novikova – Battistini – Wenceslao Persichini (Battistiniの師匠)の発声法の系譜をさかのぼることが出来ます。 これを読むことによって、バティスティーニの[ア]母音の明るさや、…

カルーソーの顔

resonance

エンリコ・カル-ゾー(1873年2月26日~1921年8月2日)は膨大な録音といくつかの映画を含む映像を残しましたが、残念なことに当時はサイレント時代であり、歌唱と映像の同時録音はありません。写真は、すばらしい衣装をまとった、プロマイド的な物はたくさん残っていますが、歌っているときのものは案外少ないのです。 右の写真は、マラフィオッティの「カルーソー発声の秘密」の中から引いた、5つの母音を歌っているときの顔です。 (E母音は、おそらく歌の内容のためのものと思われます) E母音以外の母音に共通する顔の特徴は、眉の角度です。4つの写真の鼻から下を手で覆うと、すべて泣き顔にみえますが、反対に、目から…

「あくび」について

resonance

声楽発声を勉強した人たちの中には、「喉をよーく開けて、あくびをするように声を出しなさーい!」とあくびをするような声で先生に言われた人が結構たくさんいるのではないでしょうか? 私は以前から、発声中にあくびをするようにして喉を開けようとすることに関して反対してきました。その最も大きな理由は、なんといっても嘘っぽい作った音質になってしまうからです。舞台上でセリフをしゃべったり、歌を歌ったりするものにとって、決して使用してはならない声があるとすれば、それは嘘っぽい、作られた声です、偽善的な役柄、或いは、日本人の声楽家の役なら別ですが。 また、純粋に発声技術の面から言っても「あくび」の使用には注意しなけ…

コラム:それダメ!3 喉をリラックスさせてはいけない!

Phonation

歌唱教育の世界には、洋の東西を問わずリラックス信仰というものがあって、やたらと力を抜いてリラックスすることは良いことだと信じている人たちがいます。 「喉を使ってはいけません!」と生徒に指示する教師がたくさんいます。その類いの教師はその他にも「喉をよく開いて」、「軟口蓋を上げて、舌根を下げて」、「息を頭の後ろから回して響かせなさい!」、「マスケラ(顔面)に当てて!」等の指示とセットにされることが多いようです。まるで、肺にある息が直接頭に共鳴すると信じているようかのようですが、息はそのままでは決して共鳴しません。息をまず音に変換することによって、初めて共鳴するのです。もちろん、ウィスパーで「あいう…

歌のためのバーレッスンのすすめ!

exercise

バーレッスンなしで踊るダンサーはいません。しかし、歌はバーレッスンなしでも歌えます。 もちろん歌の訓練にも音階練習があったりヴォーカリーズなどがありますが、ここでのバーレッスンとは、踊り、うたなどの総合的な身体運動を、、練習の初期段階で、いったん個々の筋肉に分解し、それらを単独で鍛えることを意味します。 踊りの場合は、普通の人間が日常で行う動きからかなりかけ離れた複雑な動きを要求されるので一つ一つの筋肉を特別に鍛えておかないとあのような動きをすることは不可能です。 ではなぜ、歌手は、踊りに相当するバーレッスンなしで、結構上手く歌えるのでしょうか?踊りだと、例えばプリエのような単純な動きを正確に…

Garcia’s Theory of the Main Register in James Stark “Bel Canto”

register

以下の見解は、James Stark,”Bel Canto” の中のRegister の章に記載されたGarcia’s Theory of Main Registers からガルシアの引用を中心にまとめたものです。 【ガルシアの声区の定義】 「声区(レジスター)という語によって、我々は、同じメカニカル原理によって生成され、低音から高音まで連続する同種の音声の連なりを意味する。そして、それらの性質は、別のメカニカル原理によって生成されて、基本的に等しく連続する同種の音声の別の連なりと異なる。 人が音声に対して決めた音質、または、力にどのような変更があったとして…

コラム:それダメ!2 舌根を下げてはならない!

resonance

舌根を下げて軟口蓋を上げる、とはよく言われることで、また不幸にもそれを信じている生徒が多くいます。 これは、生徒に喉をよく開けさせるために言われるのですが、これは大変危険な大間違いです。 第一、声帯の振動が悪くなります。また、舌根を下げると口の奥および首に局部的な緊張が入って疲れます。 舌がやらなければならない仕事は、調音、つまり母音をつくるために、声帯から口先まで(声道)の形を作ること、いくつかの子音をつくることで、そのためには自由に動ける柔軟性が無くてはなりません。 例えば、「い」の母音は、舌の前方を硬口蓋の前方に接近させなければ「い」母音を発することは出来ません。「え」母音は舌がそのまま…

コラム:それダメ!1.声を出すために大量の息を使ってはダメ!

Breathing

もし、発声に対して最も常識的なことは何か?と聞かれたら、迷わずこう答えるでしょう。「出来るだけ少ない息で声を出すこと。」 発声教育の中でも、呼吸法に関しての意見の相違は、他の分野以上に意見の一致がなく、いまだにこれが正しい呼吸法であるというものはありません。それにもかかわらず、この「大量の息を使わないこと」に関しては、わざわざ言う必要も無いほどの常識として認識されています。 音声のもと(喉頭音源)は、声帯の振動によってつくられます。声帯の振動とは、のど仏(喉頭)の中にある襞が、くっついたり離れたりすることで、管楽器では唇がその代わりをします。この襞がくっつく瞬間に息が多いと、息の流れに邪魔され…

©Takanori Yamamoto